
壁紙の張り替えを業者に頼みたいけれど、あとから高い追加料金を請求されたらどうしよう。工事が予定どおりに終わらなかったら、仕上がりに納得できなかったら、数か月後に剥がれてきたら……。一生に何度も頼む工事ではないだけに、契約の前にこうした不安がふくらむのは自然なことです。
業者に壁紙の張り替えを頼んだときに起きるトラブルは、この記事では「追加請求」「工期の遅れ」「仕上がり」「保証」の4つに分けて整理します。4つのトラブルの多くに共通するのは、契約の前に「どこまでが見積もりの金額に含まれるのか」「いつ終わるのか」「施工後に不具合が出たらどうなるのか」を、はっきり決めないまま進めてしまうことです。施工や壁そのものに原因がある不具合もありますが、費用の範囲・日程の見通し・保証の内容の3点を契約の前に確かめ、答えを書面やメールで残しておけば、行き違いは起きにくく、不具合が出たときも話がこじれにくくなります。
「口約束でも、きちんとした業者なら大丈夫だろう」と考える方もいるかもしれません。たしかに、契約は口約束でも成立します。ただ、あいまいな部分を残したまま工事を進めると、あとで双方の考え方に食い違いが生じ、思わぬトラブルに発展することがある、と公的な相談窓口も注意を促しています。
取り上げる事例は、国土交通大臣の指定を受けた住宅専門の相談窓口「住まいるダイヤル」に実際に寄せられた相談です。
この記事を読むと、次のことが分かります。
- 業者に頼んだときのトラブルを4つ(追加請求・工期の遅れ・仕上がり・保証)に分けると、それぞれどんな形で起きるのか
- 追加請求:口約束のまま工事が進み、高額な追加費用を請求された事例と、見積もりの段階で確かめておきたいこと
- 工期の遅れ:予定から大幅に工事が遅れた事例と、遅れたときの話し合い方
- 仕上がりと保証:壁紙のひび割れで張り替えを断られた事例、浮きや継ぎ目の開きに気づいた時期による対応の違い、契約に保証の定めがない場合の民法上の扱い(2020年4月の民法改正の前と後の違い)
- 契約前に確かめておきたいことと、話し合いがまとまらないときの相談先
読み終えるころには、自分の場合に業者へ何から聞けばよいかが見えてくるはずです。
見積もりの金額に何が含まれるのか、追加費用がかかるとしたらどんな場合かを先に知っておきたい方は、電話でお尋ねください。張り替えたい場所と壁の状態を伺い、見積もりの前に確認しておきたい点をご案内します。見積もり・現地調査は無料です。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。
壁紙張り替えで業者と起きるトラブルを4つに分けると

まずは、業者に壁紙の張り替えを頼んだときに起きるトラブルを、この記事の4つの分け方に沿って整理します。壁紙の張り替えは、大がかりなリフォームに比べると工期も短く、金額も小さい工事です。それでも、お金・日程・仕上がり・施工後の対応のどこかで、依頼した側と業者の受け止め方がずれると、トラブルにつながります。
なお、壁紙の色や柄を選んで「思っていたのと違った」という後悔や、自分で張り替えて失敗したという話は、業者とのトラブルとは性質が違うため、この記事では扱いません。
追加請求:見積もりの金額では終わらなかった
いちばん多く心配されるのが、見積もりの金額に追加の費用が上乗せされるケースです。壁紙の張り替えで追加の費用が生じるケースとしては、古い壁紙を剥がしてみたら、その下の石膏ボードが水漏れや結露でふやけていた、というように、下地そのものが傷んでいた場合が挙げられます。下地の傷みは、多くの場合、現地調査のときに業者が見当をつけられます。通常の下地処理を超える補修が要る場合も、現地調査で把握できれば、その費用は施工の前に見積もりで伝えられ、原則として見積もりのとおりになります。ただ、特殊な場合には剥がしてみないと分からない部分が残り、見積もりに「下地の補修は含みません」と書かれることがあります。その場合でも、良心的な業者であれば、剥がす前に「傷んでいた場合、追加でどのくらいかかりそうか」という見込みを伝えてくれます。見込みの説明がないまま、剥がしたあとでその場で金額を伝えられる形では、依頼した側は落ち着いて判断できません。石膏ボードの傷みがどの程度までなら壁紙の職人がその場で直せて、どこから大工の手配が要り、費用と日数が大きく変わるのかは、石膏ボードと壁紙は何が違う?傷みは30cmが分かれ目、ボード交換は大工が必要で別途費用で扱っています。
「下地の補修は含みません」という但し書き自体は、隠し事ではありません。トラブルになるのは、どんな場合に、どのくらいの追加が出るのかを、依頼した側が知らないまま工事が始まり、当日になって金額だけを告げられたときです。家具の移動や、エアコンを外す必要がある場合の取り外しなど、誰が・いくらで行うのかを決めていなかった作業が、あとから追加の費用として出てくることもあります。
工期の遅れ:工事の日程が決まらない、予定どおりに終わらない
壁紙の張り替えそのものは、6〜8畳の洋室1部屋なら4〜6時間ほど、複数の部屋をまとめても2〜3日ほどで終わることが多い工事です。そのため、壁紙の工事で日程の問題が出るとすれば、工事が何か月も続くというより、「工事の日がなかなか決まらない」「予定の日に来てもらえない」「作業が途中で止まった」といった形が中心になります。
業者によっては、現地調査から施工までの予定が1〜2か月先まで埋まっていることもあります。年度末の2〜3月は職人の予定が埋まりやすい時期でもあります。引っ越しや来客など、仕上がっていてほしい日が決まっている場合は、日程の見通しを最初に確かめておかないと、トラブルの種になります。工事の日数がどう決まるかは壁紙張り替えの時間はどれくらい?1部屋4〜6時間の目安と日数の決まり方を解説で、引っ越しの日から逆算した日程の組み方は引っ越し前の壁紙張り替えは間に合う?施工まで1〜2か月先になる業者も、日程の逆算と費用の考え方で扱っています。
仕上がり:継ぎ目、浮き、ひび割れが気になる
仕上がりのトラブルは、継ぎ目が目立つ、壁紙が浮いてくる、ひび割れが出てきた、といった形で表れます。ただし、仕上がりに関する気になる点には、施工に原因があるものと、そうでないものが混ざっています。
たとえば、張った直後の小さなふくらみのように時間がたてば落ち着くものもあれば、下地の処理など施工に原因があるものもあります。壁紙の下にある壁そのもの(コンクリートやボード)が動いたり割れたりして、壁紙の表面にひびが出ることもあります。原因によって、誰がどう直すのかが変わってきます。浮きの原因ごとの見分け方は、壁紙の浮きは自分で直せる?補修できる3条件と、業者に見てもらうべき浮きの見分け方で詳しく扱っています。
保証:不具合を直してもらえるかで話がこじれる
仕上がりのトラブルとセットで起きやすいのが、保証をめぐる行き違いです。施工後に不具合が出たとき、無償で直してもらえるかどうかを考えるには、まず契約で決めた保証の期間と範囲を確かめることになります。保証の期間や範囲は業者によって違うため、契約の前に確かめていないと、「直してもらえると思っていた」「それは保証の対象外です」という食い違いが起きやすくなります。
ここまでの4つの型を見ると、施工や壁そのものに原因がある不具合を除けば、多くは「契約の前に決めておくべきことが、あいまいなまま進んだ」ことが根っこにあります。原因が施工や壁にある場合でも、保証の内容を先に確かめておけば、話はこじれにくくなります。ここからは、住まいるダイヤルに寄せられた実際の相談事例をもとに、それぞれのトラブルの防ぎ方と、起きてしまったときの対応を見ていきます。
追加請求のトラブル|実際にあった相談事例と確認ポイント

追加の費用をめぐるトラブルは、壁紙の張り替えに限らず、リフォーム工事全般でよく相談されているものです。住まいるダイヤルの電話相談の案内にも、相談の例として「リフォーム工事を始めた後に、追加の工事費用が必要だといわれた」が挙げられています(出典:住まいるダイヤル「電話相談サービスのご案内」)。
口約束のまま工事が進み、高額な追加費用を請求された事例
2013年12月に住まいるダイヤルに寄せられた相談に、次のようなものがあります。築40年の木造2階建て住宅で、間取りの変更や内装・水回りの設備の入れ替えまで含む大規模なリフォームを、「費用は1,300万円」と口頭で約束しただけで、契約書を交わさずに進めていた。着工から8か月たっても工事が終わる見通しが立たないなか、業者から追加の費用としてさらに1,000万円を求められ、内容もはっきりしない、という相談です(出典:住まいるダイヤル 電話相談事例「口頭による約束のみでリフォーム工事中だが、工事の進行が遅い上、高額な追加費用を請求された。」相談ID:611)。
壁紙の張り替えとは規模がまったく違う事例ですが、トラブルの起き方には共通するところがあります。住まいるダイヤルの回答は、契約は口約束でも成立するとしたうえで、あいまいな部分を残したまま進めると、やがて双方の考え方に食い違いが生じ、思わぬトラブルに発展することがあるため、契約の内容をしっかり書面に残しておく必要がある、というものでした。建設業法にも、請負契約の当事者は契約書面を交付することが定められていると紹介されています。
追加の費用については、追加費用の内訳明細を出してもらい、項目をひとつひとつ確認しながら、分からない点は説明を求めて話し合うこと、お互いが納得できたことを記録に残していくことが勧められています。どうしても話がつかない場合は、経緯をまとめた資料を持って弁護士の法律相談を受けることもすすめられていました。
追加請求を防ぐために、見積もりの段階で確かめておきたいこと
壁紙の張り替えは、この事例のような大規模な工事に比べれば金額も小さく、「わざわざ書面にするほどでもない」と感じるかもしれません。それでも、見積もりの段階で次の点を確かめ、答えを見積書や書面、メールなどの形で残しておくと、追加請求のトラブルは防ぎやすくなります。
- 見積もりの金額に、古い壁紙の剥がし、養生、廃材の処分が含まれているか
- 下地の補修が見積もりに含まれているか。剥がしてみないと分からないと言われた場合は、傷んでいたときにどんな補修が加わり、追加でどのくらいかかりそうか
- 家具の移動は、業者がするのか自分でするのか。業者がする場合、費用は含まれているか
- エアコンを外す必要がある場合など、別の業者の手配が必要になる作業はあるか
- 見積書が「一式」だけの場合、張り替える面積と内訳はどうなっているか
- 金額は税込みか税抜きか
剥がしや養生、廃材の処分は、見積もりに含まれているのが一般的ですが、業者によっては別途(見積もりの合計に含まれない)としていることもあります。張り替えの費用に何が含まれ、何が別の項目になるかは、壁紙張り替え費用の内訳とは?㎡単価1,500〜2,500円に含まれるもの・別途になるもの、見積書の言葉を整理で整理しています。家具の移動を業者に頼む場合の費用の目安は、壁紙張り替えの家具移動は業者に頼める?費用相場と自分では動かせない家具の対処法で扱っています。特殊な場合には下地の傷みが剥がしてみないと分からないこともありますが、そう説明されたときでも、「もし傷んでいたら」という条件つきの説明であれば、現地調査の時点で聞くことができます。あらかじめ条件と金額の幅を聞いておけば、工事の当日に追加の相談を受けても、その場で落ち着いて判断できます。
工事の途中で追加の費用が必要だと言われたときも、慌てて了承する前に、どこがどう傷んでいて、何をするのにいくらかかるのかを聞きましょう。実際の壁を見せてもらったり、写真を撮ってもらったりしておくと、あとから確かめられます。了承した内容は、金額とあわせてメールや書面で残しておくと安心です。
工期の遅れのトラブル|実際にあった相談事例と対応の考え方
壁紙の張り替えは工期が短いぶん、工事の遅れが大きな問題になる場面は多くありません。それでも、仕上がっていてほしい日が決まっている場合や、何日にもまたがる工事の場合は、日程の行き違いがトラブルにつながります。
工期10日の予定が、年末になっても終わらなかった事例
2011年12月に住まいるダイヤルに寄せられた相談に、次のようなものがあります。築20年の木造2階建て住宅で、外装と日本瓦の屋根の葺き替えを依頼した。6月に契約し、8月中に着工、工期は10日間の予定だったが、年末が近づいても完成していない。瓦の隙間を指摘しているのに直しに来ず、補修の約束の日にも連絡なしに来なかった。消費生活者センターに間に入ってもらって話し合う予定で、どんなことに気をつければよいか、という相談です(出典:住まいるダイヤル 電話相談事例「完成予定日から大幅に遅れたリフォーム業者との話し合いの注意点。」相談ID:512)。
こちらも壁紙ではなく屋根と外装の工事ですが、遅れたときの話し合い方には、壁紙の張り替えでも参考になる点があります。
遅れが出たときは「続けてもらうか」を見極め、完成の条件を決める
住まいるダイヤルの回答は、まず、その業者が遅れた工事を再開して完成させられるのかを見極める必要がある、というものでした。難しいのであれば、工事が遅れたことを理由に契約を解除し、精算したうえで他社に依頼することも選択肢として挙げられています。
その業者に続けてもらう場合は、話し合いの場で、契約書の内容と現場の状況を確かめながら、「完成といえる条件」を双方ではっきりさせることを、住まいるダイヤルは勧めています。回答では、その条件の例として、依頼した側と業者が立ち会って完成を確かめること、保証の内容を明確にすること、定期的な点検を行うことなどが挙げられ、話し合いの結果は打合せの記録に残し、双方で確認してサインしておく必要がある、とされていました。それでも解決しないときは、文書でのやり取りを重ねることになります。
壁紙の張り替えに置きかえると、日程のトラブルを防ぐためには、契約の前に次の点を確かめておくのが基本になります。
- 工事の日はいつか。何日かかる見込みか
- 下地の処理で、パテを乾かす待ち時間のために作業が翌日にまたがる可能性はあるか
- 予定が変わる場合は、いつ、どうやって連絡してもらえるか
- 仕上がっていてほしい日(引っ越しや来客など)に間に合うか
- 下地の傷みで大工の手配が要る場合、日数がどのくらい延びるか
- マンションの場合、管理組合への届け出が要るか(手続きは依頼した側で行うことが多い。承認が必要なマンションでは、工事の日程に余裕を見ておく)
住まいるダイヤルの別の事例の回答では、完成時期に不安があるときは、工事の見通しについて説明を求め、進み具合を書いた工程表を出してもらうのも一つの方法とされています(出典:前述の住まいるダイヤル 電話相談事例 相談ID:611)。何日にもまたがる工事や、複数の部屋をまとめて頼む場合は、どの日にどの部屋を作業するのかを聞いておくと、日程のずれに早く気づけます。
仕上がり・保証のトラブル|実際にあった相談事例と確認ポイント
仕上がりと保証のトラブルは、「施工後に不具合が出たのに、直してもらえない」という形でひとつながりに起きることが多いものです。ここでは、壁紙そのものについての相談事例を見ていきます。
壁紙のひび割れで、張り替えを断られた事例
2009年9月に住まいるダイヤルに寄せられた相談に、次のようなものがあります。築16年の鉄筋コンクリート造のマンションの住戸を購入し、購入と同時に内装のリフォームをしたところ、壁クロスにひび割れが生じた。ひび割れは天井から床まで直線で入っていて目立つ。リフォーム会社に張り替えてほしいと連絡したが、断られた、という相談です(出典:住まいるダイヤル 電話相談事例「中古マンションを購入して、すぐ壁クロスを張り替えたが、壁クロスにひび割れを生じている。」相談ID:376)。
住まいるダイヤルの回答は、リフォーム会社に無償で補修を求められるかどうかは、保証期間内かどうかによる、というものでした。あわせて、ひび割れの入り方から、壁クロスがコンクリートの壁に直接張ってあるとみられること、張り替える場合は下地のコンクリートのひび割れをパテで埋めて、仕上げに響かないようにするのが一般的な工事方法であることが説明されています。そのうえで、念のため写真を撮り、ひび割れの幅を確認しておくことがすすめられていました。
この事例から分かるのは、壁紙の表面に出た不具合でも、原因が壁紙の下にある壁そのものにあることがある、という点です。仕上がりに気になる点が出たら、まずは写真を撮り、いつ気づいたのか、どこにどんな状態で出ているのかを記録しておきましょう。業者に相談するときも、原因を確かめてもらうときも、その記録が手がかりになります。
浮きや継ぎ目の開きは、気づいた時期で対応が変わる
壁紙の仕上がりで気になる点は、いつ気づいたかによって、対応のしかたが変わります。
作業が終わったときに依頼した側と職人が一緒に仕上がりを見ておくと、その場で見て分かる継ぎ目の開きや、明らかな傷・しわを、その日のうちに伝えて手直しを相談できることが多いものです。仕上がりの確かめ方や、立ち会えない場合の進め方は、壁紙張り替えの立ち会いは必要?役立つ3つの場面と、留守中に鍵を預けるときの確認事項で扱っています。
一方、張った直後に見える、糊の水分による小さなふくらみは、すぐに手直しを求めるより、数日〜1週間ほど様子を見てから判断したほうがよいでしょう。施工から数か月〜1年ほどの間に複数の箇所で浮きが出てきたら、早めに業者へ伝えます。下地の処理など施工に原因があることも考えられるためです。何年もたってから出てくる浮きや剥がれ、継ぎ目の隙間は、経年による変化として扱われることが多くなります。下地の処理の差が数か月後の浮きとして出てくる理由は、壁紙の下地処理とは?数か月後に浮きが出る理由と、見積書で確認する一言で扱っています。
【相談事例】施工から8〜9ヶ月の壁紙が大雨のたびに浮く、保証期間内の相談を勧めた江戸川区のご相談でも、施工から8〜9か月ほどで、雨のたびに壁紙が複数の箇所で浮くようになったという相談に対し、まず施工した業者に保証の範囲で対応してもらえるかを確かめることをおすすめしています。業者と連絡が取れない場合の選択肢としては、消費者センター(局番なし188)への相談も案内しています。
契約に保証の定めがなければ、民法のルールが基準になる
施工後の不具合を無償で直してもらえるかどうかは、まず契約で決めた保証の内容によります。業者が独自に保証期間を定め、保証書などで範囲を示している場合は、その内容が基準になります。1年より長い保証を付けている業者もあります。
では、契約で保証期間を特に定めていなかった場合はどうなるのか。先ほどの壁紙のひび割れの事例(相談ID:376)への住まいるダイヤルの回答では、次のように説明されています。
- 2020年3月以前に結んだ請負契約:民法の「瑕疵担保責任」が基準になり、その期間は、壁クロスを張り替えた工事が完成して引き渡したときから1年以内と考えられる
- 2020年4月以降に結んだ請負契約:民法の改正で「契約不適合責任」に代わり、契約の内容に適合しないことを知った時から1年以内に、その旨を業者に通知しなければならない。通知で足り、その時点で権利を行使するところまでは必要ない
つまり、いま新しく壁紙の張り替えを頼む場合、契約に保証の定めがなければ、民法の決まりに沿って、不具合に気づいてから1年以内に業者へ伝えることが大切になります(出典:前述の住まいるダイヤル 電話相談事例 相談ID:376)。気づいた時点で、いつ、どのように伝えたのかが残るよう、電話だけで済ませず、メールや書面でも伝えておくと安心です。
ただし、これは契約で何も決めていなかった場合の、法律上の基本の扱いです。「壁紙の保証は1年しかない」という意味ではありません。保証の期間や範囲は業者によって違い、施工後の剥がれや浮きに保証期間内なら対応している業者も少なくありません。その一方で、塗り壁の上にそのまま貼るなど、費用を抑えるために下地の処理を省く方法を選んだ箇所や、依頼した側が用意した壁紙を使った箇所は、保証の対象外とされることが一般的です。
保証について、契約の前に確かめておきたいこと
保証をめぐる行き違いを防ぐには、契約の前に次の点を確かめておきましょう。
- 保証はあるか。ある場合、期間は何年か
- どんな不具合が対象になるか(剥がれ・浮き・継ぎ目の開きなど)。対象外になるのはどんな場合か
- 保証の内容は、保証書や契約書など書面でもらえるか
- 不具合が出たときの連絡先はどこか
- 作業中に家の中の物を傷つけてしまった場合に備えて、賠償責任保険に入っているか
賠償責任保険は、一般的な業者であれば加入していることがほとんどですが、加入していない業者も一定数あります。保証とは別の話ですが、あわせて確かめておくと安心です。施工の前と後の写真を残してもらえるかも聞いておくと、あとで不具合が出たときに、施工した時点の状態と見比べる手がかりになります。
トラブルを防ぐために、契約前に確かめておきたいこと
ここまで見てきた4つのトラブルは、施工や壁そのものに原因がある不具合を除けば、契約前の確認によって行き違いが起きにくくなり、問題が起きたときも話がこじれにくくなります。最後に、契約前に何を確かめればよいかと、それでも話し合いがまとまらないときの相談先を整理します。
確かめたいのは「費用の範囲」「日程の見通し」「保証の内容」の3つ
業者に頼んだときのトラブルを4つに分けて見てきましたが、契約前に確かめておきたいことは、次の3つにまとめられます。
- 費用の範囲:見積もりの金額に何が含まれ、どんな場合に追加の費用が出るのか
- 日程の見通し:工事の日はいつで、何日かかり、予定が変わるときはどう連絡が来るのか
- 保証の内容:施工後に不具合が出たら、どんな場合に、いつまで直してもらえるのか
この3つを、見積もりや現地調査のときに業者へ聞き、答えを見積書や書面、メールで残しておく。そうしておくと、「言った・言わない」の行き違いを防ぎやすくなります。契約書を交わさずに、見積書やメール・SMSのやり取りで進めるときに何を文字で残しておくかは、壁紙張り替えに契約書は必要?法律の原則と、数十万円の工事で実際に多い書面の残し方で詳しく解説しています。
聞いたときの答え方も、業者を見る材料になります。「現地を見ないと分からないが、こういう状態ならこのくらいの費用が加わる」のように、追加の費用を条件つきで具体的に説明してくれる業者であれば、話を進めやすくなります。答えがあいまいなまま話が進むようなら、ほかの業者の話も聞いてみるきっかけになります。
契約前の確認をもう一歩詳しく知りたい場合は、次の記事で扱っています。
- 見積書のどこを見ればよいか:クロス張り替えの見積書チェックポイント7選|追加費用で後悔しないための確認事項
- 頼み先の種類による違いと、見積もりのときに聞いておきたい一言:壁紙張り替えはどこに頼む?4種類の業者の違いと失敗しない選び方
- 色選びも含めた、張り替えでよくある後悔:壁紙張り替えで後悔する人の共通点とは?失敗事例と業者選びのポイントを解説
話し合いがまとまらないときの相談先
確認をしていても、施工後の不具合や費用の行き違いで、業者との話し合いがまとまらないことはありえます。そんなときは、一人で抱え込まず、第三者の相談窓口を頼ることができます。
この記事で事例を紹介してきた住まいるダイヤル(公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター)は、国土交通大臣から指定を受けた住宅専門の相談窓口で、経験のある建築士が電話で相談を受けています(相談員は必要に応じて弁護士の助言を受けています)。電話番号は03-3556-5147、受付は平日の10時〜17時(土日・祝休日・年末年始を除く)で、相談時間は30分程度が目安とされています(出典:住まいるダイヤル「電話相談サービスのご案内」)。また、建築士と弁護士によるリフォームの専門家相談も行っていると、相談事例の回答の中で紹介されています。
相談するときは、見積書や契約書、業者とのメールのやり取り、不具合の写真など、経緯が分かる資料を手元にそろえておくと、話が伝わりやすくなります。
まとめ
業者に壁紙の張り替えを頼んだときのトラブルについて、ポイントを整理します。
- 業者に頼んだときに起きるトラブルは、この記事では「追加請求」「工期の遅れ」「仕上がり」「保証」の4つに分けて整理した。施工や壁そのものに原因がある不具合を除けば、多くは契約の前に決めておくべきことがあいまいなまま進むことが根っこにある
- 契約は口約束でも成立するが、あいまいな部分を残すと食い違いが生じやすい。聞いた内容は見積書や書面、メールで残す
- 追加請求を防ぐには、見積もりに含まれる作業(下地の補修を含むか)を、現地調査の段階で聞いておく。費用は原則として見積もりのとおりで、剥がしてみないと分からないと言われたときは、下地が傷んでいた場合に追加でどのくらいかかりそうかも聞いておく。工事中に追加を言われたら、内訳を聞き、了承した内容を記録に残す
- 壁紙の工事は短期間で終わることが多いが、工事の日がなかなか決まらない、予定どおりに来ないといった日程のずれは起きうる。遅れたときは、続けてもらうかを見極め、完成といえる条件を話し合って記録に残す
- 仕上がりの不具合は、施工が原因のものと、壁紙の下の壁が原因のものがあり、気づいた時期でも対応が変わる。張った直後の小さなふくらみは数日〜1週間ほど様子を見て、数か月〜1年ほどで複数の箇所に浮きが出たら早めに業者へ伝える。状態は写真で記録しておく
- 保証は契約で決めた内容が基準になる。契約に定めがない場合、2020年4月以降の契約では、不具合を知った時から1年以内に業者へ通知する必要がある。ただし、これは「保証は1年しかない」という意味ではない
- 話し合いがまとまらないときは、住まいるダイヤルのような第三者の相談窓口に、資料をそろえて相談できる
トラブルを防ぐために、まずできるのは、契約の前に「費用の範囲」「日程の見通し」「保証の内容」の3つを聞いておくことです。見積もりや現地調査の相談のときに、「追加の費用がかかるとしたら、どんな場合ですか」「保証はどうなっていますか」と尋ねてみるところから始めてみてください。当店へのご相談でも、電話か問い合わせフォームで、気になっている点をそのままお伝えください。
追加の費用がかかるのはどんな場合か、工事の日程や施工後の保証はどうなるのか、気になる点があれば電話でお尋ねください。張り替えたい場所と壁の状態を伺い、見積もりの前に確認しておきたい点をご案内します。見積もり・現地調査は無料です。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。
この記事の執筆者

氏名:松田郁幾
実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。



