
いま住んでいる家を売って、住み替えようと考えている。不動産会社に査定を頼んでみたものの、リビングの壁紙の黄ばみや、長く暮らすうちについた傷が改めて目に入る。このまま内覧に出して大丈夫なのか、先に張り替えておいたほうが高く、早く売れるのか。気になってはいるけれど、大きな費用はかけたくない、という方は多いのではないでしょうか。
先に結論をお伝えします。売る前に壁紙を張り替える必要は、基本的にはありません。家を買った人が、自分の好みで壁紙を張り替えることもあるので、売る前の張り替えがかえって余計な手間と費用になることがあるからです。また、張り替えが売却価格にどの程度反映されるかは分からず、かけた費用が戻ってこないこともあります。ただし、壁紙が大きくめくれている、広い範囲で剥がれているといった、見た目の好みでは済まない傷みがあるなら、その部分を直すことを考える余地はあります。
ですから、まず考えたいのは「どの壁紙を張り替えるか」より先に、「売る前に費用をかけるかどうか」です。そのうえで手を入れるなら、傷んでいる部分に絞り、費用を抑えやすい直し方から考えます。
この記事を読むと、次のことが分かります。
- 売る前の張り替えを急がなくてよい理由(買った人が張り替えることもある、価格への反映は分からない、住みながらの工事の手間)
- それでも直すことを考えたい傷み(めくれ・剥がれ、カビ)
- 張り替えずに済ませる方法も含めた、手の入れ方の3つの段階と費用の目安
- 住んだまま内覧に出すときの、壁紙の見え方の考え方
- 不動産会社への相談と、必要なら見積もりを取って相談し直すまでの進め方と、張り替えるならどのタイミングが段取りしやすいか
読み終えるころには、自分の家の壁紙に手を入れるかどうかを決めるために、誰に何を確かめればよいかが見えてくるはずです。
売る前に壁紙に手を入れるかどうかは、まず売却を任せる不動産会社に考え方を聞いてみてください。そのうえで、張り替えるならどこまでで、いくらくらいかかるのかを知っておきたい方は、電話でご相談ください。壁紙の状態やご希望をうかがったうえで、現地調査と見積もりの進め方をご案内します。見積もり・現地調査は無料です。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。
売る前に壁紙を張り替える必要は、基本的にはない

家を売る前に壁紙をどうするかを考えるとき、最初に押さえておきたいのは、張り替えた壁紙を使うのは、売った自分ではなく、家を買った人だということです。この点から考えると、売る前の張り替えを急がなくてよい理由が3つ見えてきます。
買った人が、自分の好みで張り替えることもある
中古の家を買う人の中には、買ったあとに自分の好みで内装を整えたいと考えている人もいます。入居の前に、家じゅうの壁紙をまとめて新しくする人もいます。そうした人にとっては、売る前に張り替えた壁紙も、張り替える前の壁紙と同じように、自分で選び直す対象になります。
その場合、売る前に色や柄を選んで張り替えても、買った人の好みに合わなければ、また張り替えられてしまいます。かけた手間と費用が、買った人の役に立たないことになるわけです。誰がどんな好みで買うかは、売り出す時点では分かりません。なお、相続した空き家のように、売るか貸すかをまだ決めていない家の場合の考え方は、空き家の壁紙は張り替えるべき?売るなら急がず、貸すなら家賃帯で決める判断と費用の目安で扱っています。
張り替えが売却価格にどの程度反映されるかは分からない
「きれいにすれば、そのぶん高く売れるのでは」と考えたくなるところです。けれども、家の売却価格は、立地や広さ、築年数、建物の状態、その地域で家を探している人がどのくらいいるかなど、さまざまな条件で決まります。壁紙はその中の一部で、張り替えたことが価格にどの程度反映されるかは、物件ごとに違い、前もっては分かりません。
張り替えに数十万円をかけても、その分だけ売却価格が上がるとは限らず、反映される額が費用に届かないこともあります。前の項で見たとおり、買った人が自分で張り替えることもあるので、張り替えがまったく生かされないこともあります。張り替えは、かけた費用が必ず戻ってくるものではない、と考えておいたほうが安全です。
住みながら張り替えると、工事の段取りも負担になる
いま住んでいる家の壁紙を張り替える場合は、費用のほかに、工事の段取りも考えることになります。部屋に家具が置かれていれば、工事の前に家具を動かす必要があり、複数の部屋を張り替えるなら、作業が2〜3日にまたがることもあります。住み替えの準備や荷造り、不動産会社とのやり取りと並行して、業者を探して見積もりを取り、工事の日程を組むのは、思った以上に手間がかかります。
売り出したあとに工事をする場合は、内覧の予定と工事の日が重ならないように調整する必要も出てきます。こうした手間をかけても、前の2つの理由から、張り替えが報われるとは限りません。汚れや古さが気になるという理由だけなら、張り替えずにそのまま売りに出すという選択も十分に考えられます。
それでも直すことを考えたい傷み

一方で、売る前に手を入れることを考えてよい場合もあります。目安になるのは、その傷みが「見た目の好み」で済むものかどうかです。汚れや黄ばみ、日焼けによる色の差は、買った人が自分の好みで張り替えるときに一緒に解消されることがあります。それに対して、次のような傷みは、家そのものの傷みとして目に入りやすいものです。
大きなめくれや剥がれ
壁紙が大きくめくれて垂れ下がっている、広い範囲で剥がれている、といった状態です。汚れや古さは「買ったあとに自分で選び直せばいい」と思われても、めくれや剥がれは、家そのものの傷みと受け止められやすいものです。
めくれや剥がれには、湿気や結露、下地の傷みが関わっていることもあります。その場合、壁紙だけを貼り直しても、同じ場所がまた剥がれてくることがあります。大きなめくれや剥がれがあるなら、まずその場所を不動産会社に伝えて、直してから売るべきかを聞いてみます。そのうえで直すことを考えるなら、業者に見てもらい、原因がどこにあるか、直すならどの範囲で、いくらくらいかかるのかを確かめます。角のめくれを例にした直し方と費用の分かれ方は、壁紙の角が剥がれてきたら?自分で貼り戻せる条件と、業者に頼む場合の費用の考え方で扱っています。
カビ
北側の部屋や窓まわり、押入れの中などで、壁紙にカビが出ていることもあります。カビは、壁紙の表面だけに生えていることもあれば、壁紙の裏側の下地(石膏ボード)まで届いていることもあり、見た目だけでは区別がつきません。下地の状態を確かめずに壁紙だけを新しくすると、同じ場所にカビが戻ることがあります。
カビがあるなら、めくれや剥がれと同じく、まずその場所を不動産会社に伝えておきます。そのうえで手を入れるなら、現地調査で下地の状態を確かめてもらい、防カビの処理を含めて施工するのが基本になります。カビがある壁を張り替えるときの下地の処置と費用の考え方は、壁紙のカビは張り替えだけで直る?下地の防カビ処置と費用の目安を解説で解説しています。
手を入れるなら、費用を抑えやすい方法から考える
直すことを考えたい傷みがあったとき、あるいは、どうしても気になる汚れがあるときも、いきなり家全体の張り替えを考える必要はありません。手の入れ方には、張り替えより小さな手当てで済ませる方法もあります。傷みや汚れの種類に合わせて、小さな手当てから順に考えると整理しやすくなります。
汚れが気になるなら、まずクリーニングという方法もある
手垢のような汚れが気になるだけなら、張り替えの前に、壁紙のクリーニングを扱う業者に頼むという選択肢もあります。ハウスクリーニングの会社でも、壁紙を洗うメニューがあるかどうかは会社によって違います。どこまで落ちるかは、汚れの種類や、汚れが壁紙の内側まで染み込んでいるかなど、壁紙の状態によって違うので、見立てはクリーニングの業者に頼むことになります。壁紙クリーニングの料金の考え方と、張り替えとの比べ方は、壁紙クリーニングの料金は20㎡以下で11,000円|6畳が枠に収まらない理由と張り替えとの比べ方で整理しています。
ただし、壁紙の黄ばみは、汚れだけが原因とは限りません。日焼けによる黄ばみや色あせは、汚れではなく壁紙の色そのものの変化なので、掃除では元に戻りません。長い年月をかけて少しずつ進んだ黄ばみも、掃除で元の白さに戻すのは難しいことがあります。黄ばみの原因の見分け方と、掃除で落ちなかったときの選択肢は、壁紙の黄ばみの原因は?手垢・日焼け・ヤニの見分け方と、掃除で落ちなかったときの選択肢で解説しています。
傷みが1〜数箇所なら、張り替えずに直す方法もある
めくれや破れ、穴のような傷みが1〜数箇所に限られ、周りの壁紙がまだきれいなら、張り替えずに傷んだ箇所だけを直す方法もあります。
張り替えの業者でも、めくれた壁紙がちぎれずに残っていて、まだやわらかければ、貼り戻す程度の簡単な補修で済むことがあり、そうした補修には壁1面を張り替えるより安い料金を設けている業者もあります。一方、穴埋めや一部の張り替えを伴う補修は、壁紙を継ぎ目で区切って最低1枚分を貼ることになり、段取りも1面と変わらないので、費用は1面の張り替えと同じくらい(次の項で触れる最低料金の水準)になりやすいものです。また、張り替えずに傷んだ箇所だけを直すことを専門にしたリペア業者という頼み先もあり、目安は下地に傷みが無い場合で1万〜3万円程度、石膏ボードの補修が要る場合で1万5,000〜5万円程度です。どこまで目立たなくできるかは状態によって違い、条件によっては近くで見ると直した跡が分かることもあります。周りの壁紙も古くなっている場合は、張り替えのほうが向いています。破れを例にした、自分で直すか業者に頼むかの目安と費用の考え方は、壁紙の破れは自分で補修できる?業者に相談したほうがよい5つの目安と費用の考え方で扱っています。
張り替えるなら、傷んでいる面や部屋に絞る
張り替えると決めた場合も、家全体をきれいにする必要はありません。「めくれや剥がれが目立つ面だけ」「カビが出た部屋だけ」のように、傷んでいる範囲に絞って考えるのが基本です。壁紙の張り替えは、壁を面で区切った1面単位が基本になります。面より小さく一部だけを張り替える場合に最低1枚分になる理由と、色の注意点は、壁紙の部分張り替えはできる?最低1枚分になる理由と、1面張り替えと比べた費用・色の注意点で詳しく扱っています。
費用は、基本的に「張り替える面積×1㎡あたりの単価」で考え、一般的な量産品の壁紙なら、材料と工事を合わせて1㎡あたり1,500〜2,500円程度が目安です。ただ、壁1面だけのように範囲が小さい工事では、多くの業者が4万〜6万円程度に設定している最低料金がかかり、面積×単価で計算した金額より高くなることがあります。張り替える箇所がいくつかあるなら、何回にも分けて頼むより、まとめて頼んだほうが、1箇所あたりの負担は小さくなりやすいものです。
また、売る前の張り替えでは、色や柄やグレードにこだわる理由はあまりありません。誰が買うか分からず、買った人が自分で選び直すこともあるからです。壁紙には一般的な量産品と、色や柄の選択肢が多い1000番台の壁紙があり、費用を抑えるなら量産品を基本に考えます。2つのグレードの違いは、量産クロスと1000番クロスの違い|価格差は6畳で約1万円、部屋ごとの選び分け方で詳しく扱っています。
住んだまま内覧に出すときの、壁紙の見え方
いま住んでいる家を売る場合は、家具や生活用品が置かれたままの状態で、内覧に来た人に家を見てもらうことが多くなります。その場合の壁紙の見え方についても、考えておきたいことがあります。
壁紙の状態がどの程度気にされるかは、買う人によって違う
壁紙の汚れや古さが内覧の印象にどの程度影響するかは、一概には言えません。物件や、内覧に来る人によって違うからです。買ったあとに内装を整えるつもりの人なら、壁紙の汚れはあまり気にしないかもしれませんし、そのまま住みたい人なら、気になる点の1つになるかもしれません。どちらの人が買うかは、売り出す時点では分かりません。
ですから、内覧を気にして壁紙を張り替える前に、その地域でどんな人がこの家を探しそうかを、不動産会社に聞いてみると確かめやすくなります。売れる家の傾向や、内覧で気にされやすい点は、壁紙の業者よりも、その地域の取引をよく知る不動産会社のほうが詳しく知っています。
引っ越しで家具を出すと、日焼けによる色の差が見えてくることがある
住んだまま売る場合、家具に隠れている壁は、内覧の時点では見えません。引っ越しで家具を運び出すと、家具があった部分だけ壁紙の色が違う、と気づくことがあります。家具の跡のほうが周りより白く見えるなら、家具に隠れていた部分は日が当たらず元の色のまま残り、周りは長い年月の間に少しずつ日焼けしていた、ということが考えられます。
この色の差も、買った人が自分の好みで張り替えるときに一緒に解消されることがあり、売る前に必ず直さなければならないものではありません。日焼けした壁の一部だけを新しい壁紙にすると、周りと色が合わないことがあります。気になる場合は、面や部屋の単位で考えることになります。日焼けの見分け方と、部分的に張り替えても色が合わない理由は、壁紙の日焼けは掃除・漂白で戻る?ヤニとの見分け方と部分張替えで色が合わない理由で詳しく扱っています。
判断の進め方:不動産会社への相談と、必要なら見積もり
ここまでの内容を踏まえると、売る前の壁紙の判断は、次の順番で進めると迷いにくくなります。
まず不動産会社に、このまま売ってよいかを聞く
最初に相談したいのは、売却を任せる不動産会社です。張り替えで売却価格がいくら変わるかは、壁紙の業者が答えられることではありません。壁紙の業者が答えられるのは、張り替えるならどの範囲で、いくらくらいかかるのかというところまでです。
査定を頼むときや、売り出しの相談をするときに、「壁紙が古くなっているが、このまま売ってよいか」「張り替えると見込みが変わりそうか」を尋ねてみてください。めくれや剥がれ、カビのような傷みがあるなら、その場所も伝えておきます。不動産会社が「このままでよい」と言うなら、壁紙に費用をかけずに売りに出すという判断ができます。
手を入れるなら、範囲を分けて見積もりを取り、不動産会社に相談する
不動産会社と話してみて、直したほうがよさそうな傷みがある、あるいは自分でも気になる箇所がある、という場合は、壁紙の業者に見積もりを取ります。このとき、「売る予定がある」ことをそのまま業者に伝えてかまいません。事情が分かれば、業者も「傷んでいる面だけ直す場合」「部屋全体を張り替える場合」のように、範囲を分けて見積もりを出しやすくなります。
範囲ごとの金額が分かったら、その金額を不動産会社に伝えて、その費用をかけて直す意味がありそうかを聞いてみます。そのうえで、何もしないという選択も含めて検討できます。見積もりを取ったからといって、工事を決めなければならないわけではありません。
張り替えるなら、引っ越しの前か後かで段取りが変わる
住み替えの予定がある場合、張り替えのタイミングも考えておきます。住んでいる間に張り替えるなら、生活しながら、家具を動かしての工事を受けることになります。家具の移動は、部屋が空室に近い状態でない限り発生します。その費用は、見積書に項目が無くても施工費に含まれていることが多いものです。家具の移動を業者に頼むときの費用の目安と、自分では動かせない家具の扱いは、壁紙張り替えの家具移動は業者に頼める?費用相場と自分では動かせない家具の対処法で解説しています。
一方、引っ越しを済ませて家が空いてから張り替えるなら、家具の移動が無いぶん、工事そのものは進めやすくなります。ただし、新しい住まいに移ったあとで、現地調査や工事の日に元の家まで足を運んだり、鍵の受け渡しを業者と決めたりする必要が出てきます。留守の間の工事での鍵の預け方や、立ち会えない場合の仕上がりの確かめ方は、壁紙張り替えの立ち会いは必要?役立つ3つの場面と、留守中に鍵を預けるときの確認事項で詳しく扱っています。
どちらが段取りしやすいかは、住み替えの日程や、売り出しの時期によって変わります。業者によっては、現地調査から施工まで1〜2か月先まで埋まっていることもあり、2〜3月は予約が取りにくくなりやすい時期です。手を入れるかもしれないなら、不動産会社とも相談しながら、売り出しの予定から逆算して早めに見積もりを取っておくとよいでしょう。
なお、引っ越しの前か後かにかかわらず、分譲マンションの場合は、内装工事に管理組合への届け出が要るかどうかはマンションによって違うので、管理規約を確かめるか、管理会社に問い合わせておきます。
まとめ
売る前に壁紙を張り替えるかどうかについて、ポイントを整理します。
- 売る前に壁紙を張り替える必要は、基本的にはない。買った人が自分の好みで張り替えることもあり、売る前の張り替えが余計な手間と費用になることがある
- 張り替えが売却価格にどの程度反映されるかは分からず、かけた費用が戻ってこないこともある
- 住みながら張り替えると、家具の移動や工事の日程の調整も負担になる
- 大きなめくれや剥がれ、カビのように、見た目の好みでは済まない傷みがあるなら、原因と直す範囲を確かめる
- 手を入れるなら、クリーニング、傷んだ箇所だけの補修、傷んだ面や部屋に絞った張り替えのように、小さな手当てから考える。黄ばみは汚れとは限らず、日焼けなら掃除では戻らない
- 壁紙の状態が内覧でどの程度気にされるかは、買う人によって違う。地域の事情は不動産会社に聞く
- 引っ越しで家具を出すと日焼けによる色の差が見えてくることもあるが、売る前に必ず直さなければならないものではない
- 判断は、まず不動産会社に「このまま売ってよいか」を聞き、手を入れるなら範囲を分けて見積もりを取り、その金額を不動産会社に伝えて相談する。手を入れるかもしれないなら、売り出しの予定から逆算して早めに見積もりを取っておく
売る前の壁紙は、きれいにすればするほどよい、というものではありません。大切なのは、まず売る前に費用をかけるかどうかを考え、かけるなら必要な範囲だけにすることです。まずは不動産会社に今の状態のまま売ってよいかを聞き、直したい傷みがあるなら、範囲ごとの見積もりを取り、その金額をもとに不動産会社と相談してみてください。
不動産会社と相談したうえで、壁紙のめくれなどの傷みを直す範囲と費用を確かめたい方は、電話でご相談ください。売るご予定や壁紙の状態をうかがったうえで、範囲ごとの見積もりの取り方をご案内します。見積もり・現地調査は無料です。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。
この記事の執筆者

氏名:松田郁幾
実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。



