壁紙の汚れ防止はどこまで落ちる?規格の試験は4つの汚れだけ、油汚れ・ヤニ・手垢は対象外

壁に貼る透明な保護シートと、張り替えで選ぶ汚れ防止壁紙のサンプル

掃除しても、同じ場所がまた汚れてくる。キッチンのコンロまわり、スイッチの周り、玄関から廊下にかけての壁。落としてもしばらくすると元に戻るので、いっそ最初から汚れないようにできないか、と考えることがあります。

売り場に行けば「汚れ防止」と書かれたシートが並んでいますし、張り替えを考えているなら「汚れ防止壁紙」という選択肢もあります。ただ、その「汚れ防止」が何をどこまで防いでくれるのかは、商品を手に取っても、カタログを見てもはっきりしません。

先に結論をお伝えします。汚れ防止には「後から貼る」と「張り替えのときに選ぶ」の2つがあり、向く場面と使える条件が違います。そして張り替えで選ぶ「汚れ防止壁紙」について、規格が性能を確かめている汚れは、コーヒー・醤油・クレヨン・水性サインペンの4つだけです。

キッチンの油汚れ、タバコのヤニ、手垢。期待されやすいこれらは、試験の項目に入っていません。効かないと決まったわけではありませんが、「汚れ防止」という表示は、そこまでを確かめた結果ではない、ということです。

もうひとつ先にお伝えします。実際のところ、張り替えのときに汚れ防止壁紙を選ぶ方はそれほど多くありません。見積もりでは標準的な壁紙が前提になりやすいので、気になる場所があるなら、こちらから聞かないと候補に挙がらないままになります。

この記事を読むと、次のことが分かります。

  • 汚れ防止が「後から貼る」と「張り替えで選ぶ」の2つに分かれること
  • 汚れ防止壁紙の規格が性能を確かめているのは4つの汚れだけだということ
  • どこまで落ちるかについて、メーカーの書きぶりが割れていること
  • 「汚れに強い」と書かれていても、その根拠の強さに差があること
  • 後から貼るシートは、貼れる面と持ちが限られること
  • 費用の考え方と、見積もりのときに何を聞けばよいか

読み終えるころには、自分の家のどの場所に何が向いているのか、そして業者に何を聞けばよいのかが分かるようになります。

自分の家の場合はどうなのか、気になる場所があればお電話でそのままお聞きいただけます。無料の現地調査とお見積もりも承っています。

電話が難しい方はでもご相談いただけます。


汚れ防止には、後から貼るものと、張り替えで選ぶものがある

壁の上から重ねる保護シートと、壁一面が機能を持つ汚れ防止壁紙の対比

まず、ひとくちに「壁紙の汚れ防止」といっても、性質の違う2つが同じ言葉で呼ばれています。ここを分けないと、売り場で迷い続けることになります。

後から貼る:今ある壁紙の上に重ねるシート

ひとつは、今貼ってある壁紙の上から重ねるシートです。100円ショップやホームセンターで売られている「壁保護シート」「汚れ防止シート」がこれにあたります。

重ねるシートは工事が要りません。汚れやすい場所だけを狙って貼れますし、やめたければ剥がせます。手軽さがそのまま利点です。

ただし、貼れる面と持ちには条件があります。この点は後ろの章でまとめて扱います。

張り替えで選ぶ:壁紙そのものを機能のあるものにする

もうひとつは、張り替えのときに壁紙そのものを機能のあるものにする方法です。カタログでは「汚れ防止」「防汚」といった名前で分類されています。

壁紙工業会は、汚れ防止壁紙を「表面に汚れ防止性能を目的とするフィルムを貼り合わせた壁紙の汚れ落ち性能」と定義しています(出典:壁紙工業会「機能性壁紙の概要」)。表面にフィルムが貼ってある、というのがこの機能の中身です。

この「フィルムを貼り合わせた」という定義は、カタログの分類とも合っています。サンゲツは汚れ防止について「表面にフィルムをラミネート」と書いており、表面をコーティングするウレタンコートや撥水は、別の機能として立てています(出典:サンゲツ「機能性壁紙ガイド」)。

売り場やカタログで「汚れに強い」とまとめられているものの中に、フィルムを貼ったものとコートを塗ったものが混ざっている、ということです。「汚れ防止」という名前が付いているのは前者だと覚えておくと、見分けやすくなります。

後から貼るシートと違って、汚れ防止壁紙なら壁一面が丸ごと汚れ防止の性能になります。継ぎ目やめくれの心配もありません。その代わり、張り替えの機会でなければ選べません。

向く場面と使える条件が違うので、同じ土俵で比べない

この2つは、どちらかがあればもう一方が要らない、という関係ではありません。後から貼るシートは「いま困っている一箇所」への対処に向いています。汚れ防止壁紙は「次の張り替えまでをどう過ごすか」の選択になります。

今ある汚れを落としたい段階であれば、まずはそちらが先です。汚れの種類ごとの落とし方は、別の記事で個別に扱っています。何から手をつけるか迷う場合は、次の2本が入口になります。

汚れ防止壁紙の規格が性能を確かめているのは、4つの汚れだけ

汚れ防止壁紙の試験に使われるコーヒー・醤油・クレヨン・水性サインペンの4つ

ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。「汚れ防止壁紙」という表示は、何を根拠に付いているのでしょうか。

試験に使うのは、コーヒー・醤油・クレヨン・水性サインペン

壁紙工業会は、汚れ防止壁紙の性能試験をこう定めています。

「汚染物(コーヒー、醤油、クレヨン、水性サインペン)をそれぞれ付着させ、24時間後、拭き取ったものを目視で判定する。拭き取りについては、コーヒーと醤油は水、クレヨンと水性サインペンは中性洗剤で拭き取ることになっています」(出典:壁紙工業会「機能性壁紙の概要」)

試験に使う汚れは、この4つだけです。しかも、規格が定める拭き取りは、コーヒーと醤油は水、クレヨンと水性サインペンは中性洗剤と決まっています。

この規格は1996年に制定され、2004年9月1日から現在の形で実施されています。各メーカーが「汚れ防止」と表示するときに拠っているのが、この試験です。

合格は「4級以上」。4級は「ほとんど汚れが残らない」

判定は5段階の等級で行われます。合格の基準は「汚れを拭き取った部分を原片と比較し『4級以上』を有すること」です。

等級の意味も同じページに書かれています。5級が「汚れが残らない」、4級が「ほとんど汚れが残らない」、3級が「やや汚れが残る」、2級が「かなり汚れが残る」、1級が「汚れが濃く残る」です。

つまり合格ラインの4級は「汚れが残らない」ではなく「ほとんど残らない」です。完全に元通りになるところまでを確かめた基準ではありません。

機能マークが並んでいても、同じ物差しではない

壁紙工業会がこのページで定めているのは、汚れ防止だけではありません。防かび、表面強化、抗菌とあわせて4つの機能に基準が置かれています(出典:壁紙工業会「機能性壁紙の概要」)。

ただし、試験のやり方も、合格をどう表すかも、機能ごとに別々です。カタログで機能マークが横に並んでいると同じ物差しで測ったように見えますが、そうではありません。機能マークの数が多いほど優れている、という読み方はできないということです。

油汚れ・ヤニ・手垢は、試験の項目に入っていない

ここまでを読み返すと、気づくことがあります。試験に使われるのはコーヒー、醤油、クレヨン、水性サインペンの4つで、キッチンの油汚れもタバコのヤニも手垢も油性ペンも、試験の項目に入っていません。

汚れ防止壁紙がそれらに効果を発揮しない、という意味ではありません。ただ、「汚れ防止」という表示の裏づけになっているのは、あくまで試験に使われた4つについての結果です。

なお、ここに挙げた汚れについては、それぞれ落とし方をまとめた記事があります。いま現に困っているのがこれらであれば、先にそちらを見てください。

壁紙メーカー各社の書きぶりが一見ばらばらに見えるのも、この規格の範囲を知ると筋が通ります。次の章で見ていきます。

どこまで落ちるかは、メーカーの書きぶりが割れている

同じ「汚れ防止壁紙」について、メーカーの説明の仕方は一枚岩ではありません。限界を文章で明記している会社と、文章では触れずに試験表で示している会社があります。どちらも情報は出ているので、どこを見るかを知っておけば済む話です。

シンコールは「突発的な汚れに適した壁紙」と限界を明記している

シンコールは、汚れ防止壁紙のお手入れの注意事項として、こう書いています。

「汚れ防止壁紙は、突発的な汚れに適した壁紙です。タバコのヤニや、時間が経ったしつこい汚れなどを完全に拭き取ることは困難です」(出典:シンコール「壁紙のお手入れについて」)

同じ箇所には「汚れの原因や放置時間によっては汚れが完全に落ちない場合があります」ともあります。突発的な汚れに向いている、という位置づけです。なお、先ほどの試験も「付着させて24時間後」に拭き取る形でした。

一方で同社は、一般のビニル壁紙について「クレヨンやマジックのような頑固な汚れは落とせません。お子様がいるご家庭には、汚れ防止壁紙がおすすめです」とも書いています。向く場面はきちんとある、ということです。

サンゲツは試験表で示している

サンゲツの「フィルム汚れ防止壁紙 バリアタイプ」のページは、示し方が違います。落ちない汚れについての文章はありませんが、試験結果の表が載っていて、そこに数字で出ています。

各種汚染物質を付着させて24時間後の結果を、同社の凡例に沿って読むと次のようになります。コーヒー・醤油・ソースは水拭きでも◎(5級・汚れが残らない)。クレヨンと口紅は水では△(3級・やや汚れが残る)ですが、中性洗剤で◎になります。

そして油性ペンは、水拭きで××(1級・汚れが濃く残る)、中性洗剤でも×(2級・かなり汚れが残る)、アルコールでようやく◎です(出典:サンゲツ「フィルム汚れ防止壁紙 バリアタイプ」)。

汚れ防止壁紙でも、油性ペンは水拭きでは濃く残る。それが、メーカー自身が公開しているデータです。同ページには「上記の試験結果は測定値であり、保証値ではありません」という注記も添えられています。

防かび壁紙にも、同じことが書かれている

この「機能があっても、それだけでは足りない」という書き方は、汚れ防止に限りません。

シンコールは防かび壁紙についても「防かび壁紙だけで、家の構造や生活環境によっては、かびの発生を防げません。常にお部屋の換気を心掛けることが大切です」としています(出典:シンコール「壁紙のお手入れについて」)。

機能性壁紙は、条件の合う場面で手入れを楽にしてくれるものであって、その場所の使い方そのものを変えてくれるものではない。メーカーが書いているのはそういうことです。

カビについては、張り替えのときに下地をどう処置するかという別の論点があります。壁紙のカビは張り替えだけで直る?下地の防カビ処置と費用の目安を解説で詳しく扱っています。

「汚れに強い」と書かれていても、根拠の強さが違う

カタログで「汚れに強い」とまとめられている中にも、実は段差があります。ここを見分けられると、選ぶときの精度が上がります。

適合・準拠・自社試験という3段階がある

サンゲツは「汚れに強い壁紙は?」という同じ括りで3つを並べていますが、それぞれ拠っている試験が違います。

汚れ防止は「壁紙工業会規定」の「汚れ防止壁紙性能試験」に適合し、「試験結果が5段階中4級以上」と書かれています。ウレタンコートは同じ試験に準拠。そして撥水は「自社オリジナル試験」の「撥水性能評価試験」に適合、という書き方です(出典:サンゲツ「機能性壁紙ガイド」)。

業界の統一基準に照らしているのか、それに準じているのか、自社で決めた試験なのか。同じ棚に並んでいても、言葉が違います。

リリカラは自社で等級差を書いている

リリカラは、キズに強い自社の機能が業界規格の表面強化には届かないことを、自ら明記しています。

「表面強度アップは一般ビニル壁紙に比べ、キズに強い特長がありますが、壁紙業界規格の『表面強化(4〜5級)』の性能には至りません。表面強度アップ品は概ね3〜4級レベルに該当します」(出典:リリカラ「壁紙機能性ガイド」)

これはキズについての記述ですが、構造は汚れ防止と同じです。工業会の表面強化の基準は「タテ方向及びヨコ方向とも全ての結果で『4級以上』」なので、3〜4級はその基準には届きません。名前は似ていても、別のものだと自社で書いているわけです。

工業会は「壁紙」以外への引用を認めていない

もうひとつ、後から貼るシートを考えるときに役立つ一文があります。壁紙工業会は、自らの規定についてこう断っています。

「当工業会で規定しております『防かび壁紙性能』『汚れ防止壁紙性能』『表面強化壁紙性能』『抗菌壁紙性能』につきましては、機能性壁紙管理規定に基づき、各性能規定基準を遵守し試験した『壁紙』に対してのみに有効であり、『壁紙』以外への当規定(表示)の引用及び当規定の準拠につきましては、当工業会が承認したものでは、ありません」(出典:壁紙工業会「機能性壁紙の概要」)

つまりこの「4級以上」という基準は、壁紙そのものに対するものです。壁紙の上から貼るシートに「汚れ防止」と書かれていても、それがこの規格に照らした表示だとは限りません。「汚れ防止」という同じ表示でも、後ろにある基準が違うことがあります。

見るべきなのは名前ではなく、何の試験に適合しているか

売り文句の「汚れに強い」「キズに強い」は、それぞれ一定の試験や基準にもとづいた表現です。ただ、その基準は同じではありません。

見積もりの場で商品名を見て判断するのは難しいので、聞き方を変えるのが現実的です。「これは工業会規定の汚れ防止に適合した品番ですか」と聞けば、業者はカタログで確認できます。

もうひとつ知っておくと話が早いのは、「汚れ防止」の中がさらに分かれていることです。サンゲツは汚れ防止を「特長に合わせて選べる5タイプ」として、油汚れに強いタイプ、水汚れと貼り上がりのきれいさを取るタイプ、表面強度が高くキズにも強いタイプ、消臭機能も兼ね備えたタイプ、優れた防汚性能のタイプ、という形で並べています(出典:サンゲツ「機能性壁紙ガイド」)。

リリカラも、キズ・油汚れに強いエバールフィルム加工のものと、臭い・水汚れに強いPPフィルム加工のものを別の機能として立てています(出典:リリカラ「壁紙機能性ガイド」)。同じ「汚れ防止」でも、油に寄せたものと水に寄せたものがある、ということです。

後から貼るシートは、貼れる面と持ちが限られる

張り替えの予定がない場合に選ばれるのが、後から貼るシートです。こちらにも条件があります。

静電気で吸着するタイプは、貼れる面が決まっている

壁紙の上に貼るシートには、粘着剤を使わず静電気で吸着するタイプがあります。たとえばダイソーの「壁保護シート(透明)」は、材質がポリプロピレンで、60cm×45cmの透明タイプです。

商品説明には「壁を傷つけない静電気吸着」とあり、注意事項に「布や紙の壁、土壁、レンガ壁、セメント壁などには使用しないでください」と書かれています(出典:ダイソー「壁保護シート(透明)」)。

紙や布の壁紙、和室の砂壁や繊維壁は、静電気吸着タイプが名指しで外している面です。逆に、自宅の壁紙で使えるかどうかがここから読み取れるわけではないので、商品表示を確かめたうえで、目立たない場所で試してから判断してください。

自宅の壁紙がビニールなのか、紙や織物なのかは、見た目や手触りだけでは決めつけにくいものです。確かめる方法は、施工した業者や購入した店舗への問い合わせ、当時の見積書や仕様書による品番の確認などです。詳しくは、壁紙の種類は代表的な4つ|住宅用の約9割はビニールクロス、分からないときの確かめ方で説明しています。

2〜3回まで、そして時間が経つと弱くなる

同じ商品の注意事項には、持ちについての記述もあります。「2ー3回まで剥がして貼れますが、回数が多くなると静電気はなくなります」「時間の経過につれて静電気が弱くなります」(出典:ダイソー「壁保護シート(透明)」)。

静電気吸着タイプは貼り直しの回数に上限があり、貼ったまま置いておいても吸着力は落ちていきます。また「たわし、又はクレンザーは使用しないでください」ともあるので、シート自体の掃除の仕方にも制限があります。

消耗品として、傷んだら貼り替えるものだと考えておくのが実際的です。

壁紙メーカーは、粘着テープによる変色や破損に注意を促している

では粘着剤で貼るタイプならよいかというと、判断の材料になる記述が壁紙側にあります。

リリカラは取扱上の注意として「セロハンテープやガムテープなどの粘着テープ類は、粘着材が壁紙に移行して変色や汚れの原因になる上、剥がすときに壁紙を破損させることもあるので使用しないでください」と書いています(出典:リリカラ「取扱上の注意」)。

シンコールも「粘着テープを貼らない」として「粘着剤が変色や汚れの原因になったり、剥がす際に壁紙を破損させることもあります」としています(出典:シンコール「壁紙のお手入れについて」)。

サンゲツも、メンテナンスの資料の壁紙の一般注意事項で「粘着テープ(セロハンテープ、ガムテープ、シールなど)を壁紙に貼ると、テープの粘着剤が壁紙に移行し変色や汚れの原因となります。」「粘着テープを剥がすときに壁紙を破損する恐れがあります。」と書いています(出典:サンゲツ「壁紙のメンテナンス(一般ビニル壁紙)」)。

例として挙がっているのはセロハンテープやガムテープ、シールなどで、市販の保護シートの粘着剤について述べたものではありません。ただ、粘着剤が壁紙に移って変色させたり、剥がすときに表面を傷めたりする、という理屈はそのまま重なります。

粘着剤で貼るタイプを選ぶなら、商品表示でどんな面に使えるかを確かめて、目立たない場所で試してから広げてください。この点だけを見れば、粘着剤を使わない静電気吸着タイプのほうが、壁紙への影響は避けられます。

キッチン用として売られているものは、性格が違う

同じ「汚れ防止のシート」でも、キッチン向けの商品は少し立ち位置が違います。

ダイソーの「2層式透明クリーンシート」は、材質がポリエステルで40cm×90cm。商品説明は「ガスレンジや流し台の周りの壁に貼って壁の汚れを防ぎ清潔に保ちます。汚れても洗剤などで簡単に拭き取れます。スペースに合わせて必要な大きさに切って使えます」というものです(出典:ダイソー「2層式透明クリーンシート」)。

ここで注意しておきたいのは、2層式透明クリーンシートのページには、注意事項も貼り方の手順も書かれていないことです。どうやって貼り付くのかの説明もありません。分類も「レンジ周り消耗」になっています。長く壁材を保護する建材と同じものとは考えず、レンジまわりで使う消耗品として、使える面や貼り方を商品表示で確かめてから使ってください。

なお、換気口や通気口のまわりの黒い汚れについても専用の防止シートが売られていますが、あれは空気の流れでつく汚れという別のテーマなので、この記事では扱いません。

また、これから防ぐのではなく、すでに付いてしまった汚れを覆いたいという場合は、壁紙の汚れ隠しは貼るか塗るか|商品が限定する3つの条件と、壁紙メーカー3社が粘着テープを避ける理由のほうが近い話になります。

費用と、見積もりのときに聞くこと

ここまでが、汚れ防止という言葉の中身です。最後に、実際に張り替えを考える場合の話をします。

費用の考え方は、1000番台との差

汚れ防止壁紙の多くは、柄や色の選択肢が豊富なグレード、いわゆる1000番台のカタログに収録されています。

そのため、1000番台に収録された汚れ防止壁紙を選ぶ場合、費用は量産品と1000番台との材料グレードの差が基準になります。量産品というのは、標準的なグレードのことです。汚れ防止だから特別に高くなる、という性質のものではありません。ただし実際にいくら変わるかは、施工する範囲や下地の状態も含めた話になるので、見積もりで確認してください。

すでに1000番台から選ぶつもりであれば、その中で機能のある品番を選ぶかどうか、という話になります。

住宅の一般的な張り替えでは、標準品と同様に施工できる

カタログを見ていると、メーカーによっては「耐汚れ優先なら」「施工性も重視したいなら」と分けて案内していることがあります。

ただ、当社が扱う一般的な住宅の張り替えでは、汚れ防止壁紙が特に扱いにくいことはありません。実際に工事をする側の感覚として、標準的な壁紙と同じように施工できます。施工性だけを理由に機能を諦める、という場面もほとんどありません。

選ぶ方は多くない。だから、こちらから聞く

正直にお伝えすると、張り替えのご依頼をいただく中で、汚れ防止壁紙を選ばれる方はそれほど多くありません。

理由はさまざまですが、見積もりの段階では標準的な壁紙を前提に話が進むことが多く、機能のある品番が最初から候補に並んでいるとは限らない、という事情があります。汚れ防止という選択肢があること自体を知らないまま決まってしまう、ということも起こります。

裏を返せば、気になる場所があるなら、こちらから言えばよいだけです。「ここは汚れやすいので、汚れ防止のものにできますか」と伝えれば、その場所に合う品番を探すところから始められます。

場所を伝えると、提案の精度が上がる

聞くときは、機能の名前ではなく、場所と困りごとを業者に伝えるほうが話が早く進みます。

「コンロの横が油で黄ばんでくる」「廊下の壁が、手をつく場所だけ黒くなる」「洗面所だけ湿気が気になる」。このように伝えれば、業者はその汚れの種類に合った機能を探せます。メーカーのカタログでは、油汚れ向け・水汚れ向けの汚れ防止壁紙に加えて、ホコリ対策のような別の機能も用意されているためです。

実際、メーカーのカタログには場所の目安が書かれています。たとえばリリカラは、ホコリがつきにくい機能について「掃除がしにくい天井や吹き抜け・トイレなどの狭い空間」、撥水の機能について「飲食物や水汚れがつきやすいキッチン・トイレ・水廻り」を挙げています(出典:リリカラ「壁紙機能性ガイド」)。

ただし、このカタログは設計事務所や工務店向けに作られているもので、挙がっている場所にはホテルの共用部や医療・福祉施設も混じります。住宅のどこに当てはめるかは、結局その家を見ないと決まりません。だからこそ、場所と困りごとを先に伝えておくほうが早いわけです。

このとき、いま何で困っていて、どう対処してきたかも一緒に伝えてください。掃除で落ちなかった、シートを貼ってみた、といった経緯があると、どこまで機能で解決できてどこからは別の話なのかを切り分けやすくなります。

まとめ

壁紙の汚れ防止について、業界規格とメーカーの資料から分かったことを整理します。

  • 汚れ防止には「後から貼るシート」と「張り替えで選ぶ壁紙」の2つがあり、向く場面と使える条件が違う
  • 汚れ防止壁紙の試験に使われる汚れは、コーヒー・醤油・クレヨン・水性サインペンの4つだけ。合格は5段階の「4級以上」で、4級は「ほとんど汚れが残らない」
  • キッチンの油汚れ、タバコのヤニ、手垢は試験の項目に入っていない
  • シンコールは「突発的な汚れに適した壁紙」「ヤニや時間が経ったしつこい汚れを完全に拭き取ることは困難」と限界を明記している
  • サンゲツは試験表で示していて、油性ペンは水拭きで1級、中性洗剤で2級という結果が載っている
  • 「汚れに強い」の中にも、工業会規定に適合・準拠・自社試験という段差がある。リリカラは自社の機能について「業界規格の表面強化(4〜5級)の性能には至らず、概ね3〜4級」と書いている
  • 後から貼るシートは、静電気吸着タイプなら布や紙の壁・土壁・レンガ壁・セメント壁に使えず、貼り直しは2〜3回まで。粘着テープについては壁紙メーカー3社とも変色や破損のおそれを書いており、粘着式のシートを使うなら商品表示を確かめて目立たない場所で試す

汚れ防止という機能は、規格で確かめられている範囲では、汚れを落としやすくするものです。汚れ防止壁紙は、試験に使われる4つの汚れを付着させ、24時間後に拭き取ったときに4級以上であることが合格の基準です。シンコール自身、クレヨンやマジックが落とせない一般のビニル壁紙と対比して、お子さんのいるご家庭には汚れ防止壁紙をすすめています。

一方で、名前から受ける印象ほど万能ではありません。長い時間をかけて蓄積するヤニのような汚れには、メーカー自身が限界を書いています。汚れ防止にしたから掃除が要らなくなる、というものではないということです。

張り替えを考えているなら、汚れが気になる場所を伝えて、その場所と汚れの種類に向く品番があるかどうかを見積もりのときに確かめてください。1000番台の品番を選ぶ場合、費用は、まず標準的な量産品と1000番台との材料グレードの差を基準に考えてください。実際の金額は施工範囲や下地の状態も含めた話になるので、見積もりで確認してください。当社が扱う一般的な住宅であれば、施工のしやすさは標準品と変わりません。聞かなければ候補に挙がらないことのほうが多いので、そこだけはこちらから切り出していただければと思います。

そもそも張り替えの時期なのかどうかから迷っている場合は、壁紙の替えどきはいつ?築年数より見るべき「今の壁の状態」と見逃せない5つのサインが判断の材料になります。

気になる場所が決まっているなら、その場所を伝えていただくだけで話が早く進みます。無料の現地調査とお見積もりで、汚れ防止のグレードにできるか、費用がどれくらい変わるかをお伝えします。

電話が難しい方はでもご相談いただけます。

この記事の執筆者

執筆者写真

氏名:松田郁幾
実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。

上部へスクロール