壁紙とアレルギーは別々の2つの話|F☆☆☆☆の確かめ方と、抗アレル壁紙が効く範囲

居間の机で壁紙の見本帳を開いて眺める、白髪の女性

家族に花粉症の人がいる。子どもがダニのアレルギーだと言われた。壁紙を張り替えるなら、この機会に「アレルギーに強い壁紙」にできないか。そう考えて調べ始めると、「抗アレル壁紙」「アレルゲンを抑える壁紙」という言葉が出てきます。一方で、「新しい壁紙は化学物質が心配」「張り替えたら体調を崩さないか」という不安を持つ方もいます。

この2つは、どちらも「壁紙とアレルギー」の話ですが、中身はまったく別のものです。前者はダニや花粉といったアレルゲンの話で、後者はホルムアルデヒドという化学物質の話です。

先に結論をお伝えします。ホルムアルデヒドについては、2003年の建築基準法の改正で壁紙が規制の対象になり、内装の仕上げに制限なく使えるのは「F☆☆☆☆」という最も発散の少ない等級だけになっています。いま内装用として流通している壁紙は、この等級を前提に作られています。「新しい壁紙は化学物質だらけ」という心配は、少なくとも現行の基準に照らすかぎり、当てはまりにくくなっています。

一方のダニ・花粉については、「抗アレル」「アレルゲンの働きを抑制」といった機能を持つ壁紙が、サンゲツ・リリカラといったメーカーから出ています。ただし、メーカー自身が「病気の治療や予防を目的としたものではありません」「空気中のアレル物質を減らす効果はありません」と明記しています。効くのは、壁紙の表面に付いたアレル物質の働きを抑えるところまでです。

この記事を読むと、次のことが分かります。

  • 「壁紙とアレルギー」で語られている2つの話が、ホルムアルデヒドとアレルゲンでどう違うか
  • F☆☆☆☆とは何か。建築基準法の4つの区分と、いま流通している壁紙の位置づけ
  • 「抗アレル壁紙」が壁紙の表面で何をしているか、メーカーが自分で書いている限界
  • 壁紙を替えるだけで症状が変わるのか、という問いにどこまで答えられるか
  • 張り替えを相談するときに、業者に何を聞けばよいか

読み終えるころには、「抗アレル壁紙にすれば大丈夫か」ではなく、「自分の心配はどちらの話で、壁紙で対応できるのはどこまでか」が分かるようになります。

医師にご家族のアレルゲンを確認していて、壁紙を張り替えるときに何を選べるのか知りたい方は、電話でお尋ねください。抗アレルゲン加工の壁紙を選べるかどうかを確認してご案内します。見積もり・現地調査は無料です。

電話が難しい方はでもご相談いただけます。


「壁紙とアレルギー」には2つの別の話が混ざっている

壁紙から立ちのぼる化学物質の粒と、壁紙の表面に付いた花粉・ダニを左右に分けた図

最初に、話を2つに分けます。ここを分けないまま調べると、化学物質の不安に対して抗アレル壁紙を探したり、花粉の心配に対してF☆☆☆☆を確かめたりと、噛み合わない答えにたどり着きます。

ホルムアルデヒドの話は「壁紙そのものが出す化学物質」

1つめは、壁紙や接着剤に含まれる化学物質が空気中に出てきて、目や喉の刺激、頭痛といった症状を引き起こす、いわゆるシックハウス症候群の話です。代表的な物質がホルムアルデヒドで、建築基準法は「クロルピリホス及びホルムアルデヒド」の2つを規制の対象にしています(出典:国土交通省「建築基準法に基づくシックハウス対策について」)。

ホルムアルデヒドの話で問われているのは、壁紙という製品がどれだけ発散するか、です。ダニや花粉は関係ありません。「新しい壁紙でアレルギーになることはあるか」「壁紙の接着剤でアレルギーになるか」という疑問は、こちらの話に入ります。

アレルゲンの話は「壁紙の表面に付く、外から来たもの」

2つめは、ダニの死骸やフン、スギ花粉といったアレルゲンが部屋の中にあり、それが鼻炎や皮膚の症状を引き起こす話です。ダニや花粉のアレルゲンは壁紙が出すものではなく、外から入ってきたり、部屋の中で発生したりして、床や家具、そして壁の表面に付きます。

「抗アレル壁紙」「アレルゲンの働きを抑制する壁紙」が扱っているのは、この2つめの話です。壁紙の表面に付いたアレルゲンに対して何かをする機能であって、壁紙が出す化学物質を減らす機能ではありません。

自分がどちらの話を調べたいのかは、心配のきっかけを思い出すと分けやすくなります。「新しい建材や家具の化学物質が気になる」なら1つめのホルムアルデヒドの話、「医師にダニや花粉のアレルギーだと言われている」「花粉の季節や寝室で気になる」なら2つめのアレルゲンの話です。これは原因を自分で判断するための目安ではなく、どちらの壁紙の機能を調べればよいかを決めるための整理です。症状そのものについては医師に相談してください。両方が気になる場合もありますが、対応する壁紙の機能が別なので、分けて考えたほうが選びやすくなります。

この2つを分けたうえで、それぞれを順番に見ていきます。なお、当店に「抗アレルゲン加工の壁紙にしたい」という相談が寄せられることは多くありません。汚れ防止と同じで、こちらから聞かないと候補に挙がらない機能です。だからこそ、選択肢としてあることを知っておく価値があります。

F☆☆☆☆とは何か。内装の仕上げに制限なく使えるのはこの等級だけ

壁紙のサンプルに貼られたラベルに並ぶ、4つの星の表示

まずホルムアルデヒドの話です。壁紙の見本帳や商品ラベルに「F☆☆☆☆」(エフ・フォースター)という表示があります。これが何を意味するのかを、法律の区分から確認します。

建築基準法は発散量で4つに分けている

2003年(平成15年)7月の建築基準法の改正で、ホルムアルデヒドを発散する建築材料は、その量に応じて区分され、内装の仕上げへの使用に制限がかかるようになりました。日本壁装協会は、この区分と壁紙の関係を次のように整理しています(出典:一般社団法人日本壁装協会「シックハウス対策」)。

  • 規制対象外:表示は「F☆☆☆☆」。ホルムアルデヒドの放散速度は5μg/㎡h以下。壁紙は大臣認定またはJIS認証。内装仕上げの使用制限なし
  • 第3種:表示は「F☆☆☆」。5μg/㎡hを超えて20μg/㎡h以下。使用面積の制限あり
  • 第2種:表示は「F☆☆」。20μg/㎡hを超えて120μg/㎡h以下。使用禁止
  • 第1種:表示不可。120μg/㎡h以上。使用禁止

星の数が多いほど発散が少なく、4つ星が最も少ない区分です。そして、内装の仕上げに制限なく使えるのは、この4つ星だけです。3つ星は使える面積に制限があり、2つ星以下は内装の仕上げには使えません。

国土交通省も、「告示対象建築材料で、F☆☆☆☆等級のものは『規制対象外建築材料』ですので、居室の内装の仕上げや天井裏等に、本規制を受けることなく用いることができます」と説明しています(出典:国土交通省「建築基準法に基づくシックハウス対策について」)。

壁紙は「第一種」の製品として告示され、表示が前提になった

ここで注意しておきたいのは、壁紙という製品分類の位置づけです。日本壁装協会は「2003年(H15)7月に建築基準法で、壁紙は第一種ホルムアルデヒド発散建築材料の製品として告示された」と書いています(出典:同上)。

これは「壁紙は全部、発散量の多い第一種だ」という意味ではありません。壁紙という製品が告示の対象に入ったため、個々の壁紙は、自分がどの等級かを大臣認定かJIS認証で示さなければ、制限なく使える材料として扱われない、という仕組みになった、ということです。

その結果、内装用の壁紙は、F☆☆☆☆の表示を取ることが前提になりました。上の区分表で、第2種と第1種は内装の仕上げに使用禁止、第3種は面積制限つきです。内装の仕上げ材として普通に流通している壁紙が、使用禁止や面積制限のある等級で作られているとは考えにくく、見本帳に並ぶ商品はF☆☆☆☆の表示を持っていると考えるのが自然です。

壁紙のJIS規格と、表示の確かめ方

数値の側面も押さえておきます。壁紙のJIS規格であるJIS A 6921(2014年版)では、ホルムアルデヒドの放散量を「0.2mg/L以下(デシケーター法)」と定めています(出典:一般社団法人日本壁装協会「シックハウス対策」)。区分表の「5μg/㎡h以下」とは測り方が違う数値ですが、どちらも壁紙のホルムアルデヒドを低く抑えるための基準です。

糊(接着剤)にも、壁紙とは別の規定があります。東リの案内によれば、2003年7月の建築基準法改正で規制対象の建材として「壁紙」と「壁紙施工用でん粉系接着剤」が指定され、接着剤のJIS規格(JIS A 6922)はホルムアルデヒド放散量を「0.1mg/リットル以下」と定めています(出典:東リ「壁紙と接着剤の安全性に関するデータとは?」)。「壁紙の接着剤でアレルギーになるか」が気になる場合、糊のほうにも基準があり、それに沿った製品かどうかを聞ける、ということです。

自分の家に使われる壁紙がこの等級かどうかは、表示で確かめられます。同協会によれば、「JIS製品仕様はJIS表示マーク及びJIS認証番号、大臣認定仕様の場合はホルムアルデヒド発散建築材料認定番号が記載されています」(出典:同上)。見本帳の品番の欄や商品の説明に、JISマークか認定番号が載っている、ということです。

見積もりの場で見本帳を見せてもらうときに、「この壁紙にF☆☆☆☆の表示はありますか」と聞いてみてください。見本帳を開いて指し示してもらえるはずです。その場で分からなければ、品番からメーカーの表示を確認してもらえば足ります。

表示の見方は難しくありません。星の数だけ見れば足ります。4つ並んでいれば、内装の仕上げに制限なく使える等級です。μg/㎡hやmg/Lといった数値を自分で読み解く必要はなく、その数値を満たしたものに4つ星が付いている、と理解しておけば十分です。

壁紙がF☆☆☆☆でも、部屋の空気は壁紙だけで決まらない

もう一つ、国土交通省の説明で押さえておきたい記述があります。「内装の仕上げ等にホルムアルデヒド発散建築材料を使用しない場合であっても、家具等からもホルムアルデヒドが発散されるため、居室を有する全ての建築物に機械換気設備の設置が原則義務付けられています」(出典:国土交通省「建築基準法に基づくシックハウス対策について」)。

つまり法律は、壁紙や床材の等級を上げるだけでは足りない、と考えています。持ち込む家具や日用品からも出るので、換気で外へ出す仕組みを建物側に持たせる、という二段構えです。

住む側に引き寄せると、こうなります。張り替えで壁紙をF☆☆☆☆にしたとしても、部屋の空気がそれだけで決まるわけではない。逆に、壁紙の化学物質を気にするなら、換気の給気口をふさいでいないか、フィルターが詰まっていないか、といった換気の側にも同じくらい意味があります。壁紙の等級は、表示を確かめれば済む話です。確かめたうえで、換気のほうに目を向けるのが、順番として自然だと思います。

2003年より前に貼られた壁紙はどうなのか

この規制は、平成15年7月1日以降に着工された建築物に適用され、それより前に着工されたものには適用されていません(出典:国土交通省「建築基準法に基づくシックハウス対策について」)。

つまり、築20年を超える家で、建築時のままの壁紙が貼られている場合、その壁紙が当時どの等級だったかは、いまの基準では判断できません。ただ、これから張り替えるのであれば、貼るのは現行の見本帳にある壁紙です。張り替えという行為そのものが、いまの基準で作られた壁紙に替えることを意味します。

「新しい壁紙は化学物質が心配」という不安に対しては、こう整理できます。少なくともホルムアルデヒドについては、いま選べる壁紙は最も発散の少ない等級で作られていて、それを表示で確かめることができる。一方、いま貼られている壁紙の等級は、現行の表示だけでは判断できない。分かるのはそこまでで、古い壁紙からどれだけ発散しているかは、この記事の出典からは言えません。

「抗アレル壁紙」は壁紙の表面で何をしているのか

次に、ダニ・花粉のアレルゲンの話です。壁紙メーカーは、アレルゲンに対する機能を持つ壁紙を出しています。サンゲツは「抗アレル」、リリカラは「アレルゲンの働きを抑制」という名前です。何をする機能なのかを、メーカーの説明から確認します。

表面に付いたアレル物質を包み込んで、働きを低減する

サンゲツは、抗アレル壁紙の仕組みをこう説明しています。「壁紙表面のアレル物質低減剤が壁紙表面に付着したアレル物質を包みこみ、その働きを低減します」(出典:サンゲツ「抗アレル壁紙」)。試験の対象として挙げられているのは、ダニアレル物質とスギ花粉アレル物質の2つで、試験方法は「ダニならびにスギ花粉アレル物質溶液を壁紙表面に接触させ、2時間後のアレル物質残存量」を測る、というものです(出典:同上)。

ポイントは「壁紙表面に付着した」という部分です。アレルゲンを部屋から取り除く機能でも、空気中のアレルゲンを吸い寄せる機能でもありません。壁の表面にたどり着いたアレルゲンに対して、その働きを抑える薬剤が壁紙の表面に付いている、という機能です。

なぜ壁にこの機能を持たせるのか、と考えると位置づけがはっきりします。床や寝具は掃除機をかけたり洗ったりできますが、壁は毎日拭く場所ではなく、面積も広く、手の届かない高さもあります。壁の表面に付いたものを拭き取ること自体はできますが、頻度は低くなりがちです。掃除の手が回りにくい壁に、付いたアレル物質を抑える働きを持たせておく。そう見ると、この機能に期待する大きさがちょうどよくなります。

同じページには「上記の試験結果は測定値であり、保証値ではありません」という注記もあります。試験でどれだけ低減したかのグラフはページに載っていますが、この記事ではその数値を引用しません。数値の読み方は試験の条件に左右されるうえ、メーカー自身が保証値ではないと書いているためです。

メーカー自身が書いている3つの限界

サンゲツは、抗アレルの説明に注意書きを添えています。3つとも、この機能に何を期待してよいかを決める大事な記述なので、そのまま引きます(出典:サンゲツ「抗アレル壁紙」)。

「抗アレル加工は、病気の治療や予防を目的としたものではありません。」

「壁紙表面に付着したアレル物質に効果を発揮します。」

「空気中のアレル物質の吸着を促進したり、減少させる効果はありません。」

1つめは、抗アレル加工はアレルギーそのものを治したり、発症を防いだりする機能ではない、ということです。2つめと3つめは、効く範囲が壁紙の表面に限られ、部屋の空気には作用しない、ということです。

抗アレル壁紙という名前から受ける印象は、部屋のアレルゲンが減る、というものかもしれません。しかしメーカーが書いているのは、壁の表面に付いたぶんについてだけです。壁紙を選ぶときには、この範囲を前提に考える必要があります。

売る側が商品の説明に「治療や予防を目的としたものではない」と書くのは、書かないと誤解される、と分かっているからだと読めます。防カビ壁紙について、壁紙だけでカビを防ぐことはできないとメーカーが注記しているのと同じ構図で、機能の名前が実際の性能より広く受け取られやすいことを、メーカー側が一番よく知っているということでもあります。

リリカラは「どの部屋に使うか」を示している

もう1社も見ておきます。リリカラは、壁紙の機能を7つに分けたガイドを公開していて、その1つが「アレルゲンの働きを抑制」です。並んでいる分類は、キズがつきにくい、汚れに強い、耐薬品性がある、消臭効果がある、下地のひび割れをカバー、アレルゲンの働きを抑制、ウイルス数を減少・菌の繁殖を抑制、の7つです(出典:リリカラ「壁紙機能性ガイド」)。

このガイドで参考になるのは、おすすめの使用場所が書かれていることです。アレルゲンの働きを抑制する壁紙については、「ドアや窓の開閉で花粉が入りやすい玄関・廊下・LDK」と「ダニアレルゲンが心配な寝室・子供部屋」が挙げられています(出典:同上)。

花粉は外から入ってくるので、出入りの多い玄関や廊下、リビング。ダニは寝具のある寝室や子供部屋。メーカーの想定は、アレルゲンの種類ごとに、それが多く付きそうな場所に使う、というものです。家じゅうを抗アレル壁紙にするのではなく、医師に確認したアレルゲンと、メーカーが示す推奨場所を手がかりに部屋を選ぶ、という考え方です。

費用と選び方の位置づけ

抗アレルの壁紙は、汚れ防止や消臭と同じく、機能を持たせた壁紙のグループに入ります。量産品と呼ばれる標準的なグレードと比べれば材料の単価は上がりますが、「抗アレルだから特別に高い」という性質のものではなく、機能性のあるグレードの中の一つとして選びます。金額は面積と選ぶグレードで決まるので、見積もりの場で量産品との差を聞いてみるのが確実です。量産品と機能性のあるグレードの違いと、部屋ごとの選び分けの考え方は、量産クロスと1000番クロスの違い|価格差は6畳で約1万円、部屋ごとの選び分け方で扱っています。

選ぶときに考えたいのは、家じゅうに使うかどうかです。リリカラの推奨場所が示しているように、この機能は「アレルゲンが付きやすい場所」で意味を持ちます。寝室や子供部屋だけ抗アレルにして、他の部屋は量産品にする、という組み合わせも相談できます。面ごと、部屋ごとに壁紙を変えること自体は、ふつうの張り替えでよく行われています。部屋の途中で品番を変えると継ぎ目で差が見えることがありますが、部屋単位、または壁の角(入隅)で区切れば目立ちにくく、職人は普段からそのように貼り分けています。

もう一つ、期待の持ち方の話があります。サンゲツは試験結果について「測定値であり、保証値ではありません」と書いています。つまり、貼ったあとの部屋でどれだけ効くか、何年その状態が続くかを、メーカーが約束しているわけではありません。張り替えの周期の中で、その部屋に必要かどうかを考える、という程度の位置づけがよいと思います。

壁紙を変えるだけで症状は治まるのか

ここまでを踏まえて、いちばん聞かれやすい問いに向き合います。壁紙を抗アレルにすれば、家族の症状は軽くなるのか。

メーカーの記述の範囲で答えられること

正直に言えば、この記事で断定できることはありません。根拠にできるのはメーカーの記述だけで、そこに書いてあるのは「壁紙表面に付着したアレル物質の働きを低減する」という機能の説明と、「病気の治療や予防を目的としたものではない」という注意書きです。症状が軽くなるかどうかは、メーカーも約束していません。

言えるのは、次のことまでです。壁紙の表面に付いたダニや花粉のアレルゲンについては、その働きを抑える壁紙が存在する。ただしそれは、部屋にあるアレルゲンの一部に対する、壁紙の表面での働きにとどまる。空気中のアレルゲンや、寝具・カーペット・ぬいぐるみに付いたアレルゲンには作用しない。

ですから、「壁紙を替えたのに症状が変わらない」ということは、十分にあり得ます。壁紙の守備範囲の外に原因がある可能性も含めて、壁紙だけで判断できる話ではない、ということです。

壁紙の外にある要因のほうが大きいことが多い

アレルゲンの発生源は壁紙ではありません。ダニは寝具やカーペット、布製のソファに多く、花粉は衣服や窓から入ってきます。壁紙の表面に付くのは、そのうち壁まで届いた一部です。

ですから、壁紙の機能だけで部屋全体のアレルゲンをどうにかできるわけではありません。寝具や床、換気といった発生源側で何をすべきかは、医師に確認したうえで進める話です。壁紙の抗アレル機能は、そうした対策に足す補助的な選択肢、と位置づけるのが、メーカーの記述の範囲に合っています。

もう一つ、カビの話があります。カビもアレルギーの原因になり得るものですが、これは抗アレル壁紙の対象ではなく、防カビの話です。そして防カビについても、壁紙だけでカビを防ぐことはできない、とメーカー自身が書いています。壁にカビが出ている状態でアレルギーが気になっているなら、抗アレルの前に、カビが出る原因のほうを見てもらう必要があります。防カビの機能が何を確かめたもので、それでもカビが出る要因がどこにあるかは、防カビ壁紙は選んで買うもの?サンゲツの量産品は掲載品全点が防カビ、メーカーは「壁紙だけでは防げない」と明記で詳しく扱っています。

症状が続いている場合、原因の切り分けは壁紙の話では済みません。医師に相談したうえで、住まいの側で何ができるかを考える、という順番になります。壁紙の張り替えは、その中の一つの手段です。

順番を逆にしないほうがよい理由

「壁紙を変えて様子を見る」という進め方は、お勧めしにくいところがあります。順番としては、まず何のアレルゲンが原因かを医師に確認し、その指示に沿って発生源側の対策を進める。壁紙はその次です。

壁紙から入ると、効いたのかどうかが分からないまま費用だけがかかる、ということが起きます。張り替えは部屋全体に手を入れる工事で、あとから「やっぱり寝具だった」と分かっても戻せません。逆に、発生源側の対策をしたうえで、それでも気になる部屋に抗アレルの壁紙を足すのであれば、張り替えのついでに機能を選ぶだけなので、無駄になりにくい判断です。

張り替え自体は、経年の汚れや傷みを理由に、いずれ行うものです。そのときに抗アレルという選択肢を知っていれば、必要な部屋にだけ足せばよい。アレルギー対策として張り替えを前倒しする話ではなく、張り替えるときに何を選ぶかの話として考えるのが、実態に合っています。

張り替えを相談するときに確認できること

最後に、実際に張り替えを相談するときの話です。ここまでの内容を、見積もりの場で使える形にします。

業者に聞く3つのこと

抗アレルゲン加工の壁紙を候補に入れたいなら、次の3つを聞いてみてください。

  • 抗アレル(アレルゲン抑制)の機能がある壁紙を、見本帳から選べますか
  • その壁紙に、F☆☆☆☆の表示(JISマークか認定番号)はありますか
  • 糊はどんなものを使いますか。においはどのくらいで抜けますか

1つめは、この記事の主題そのものです。汚れ防止と同じで、こちらから言わないと候補に出てこないことが多い機能なので、最初に伝えておきます。見積もりの段階では標準的な壁紙を前提に話が進みやすく、機能のある品番が最初から候補に並んでいるとは限らない、という同じ事情を汚れ防止について書いたのが、壁紙の汚れ防止はどこまで落ちる?規格の試験は4つの汚れだけ、油汚れ・ヤニ・手垢は対象外です。

2つめは、ホルムアルデヒドの話の確認です。答えは見本帳の表示で示してもらえます。

3つめは、使う糊と、張り替え直後のにおいについてです。壁紙と糊は別の製品で、糊には糊のJIS規格(JIS A 6922)があります。基準に沿った糊かどうかは、聞けば答えてもらえるはずです。また、施工後は、においが残ることがあります。サンゲツは、施工時の臭いが残る場合があるとして、入居後(施設利用開始後)1週間程度は十分に換気するよう案内しています(出典:サンゲツ「壁紙のメンテナンス(一般ビニル壁紙)」)。においに敏感な家族がいるなら、施工の日は窓を開けておける季節を選ぶ、その日は別の部屋で過ごす、といった段取りを事前に相談しておくと安心です。施工後1時間ほどは壁に触れない、家具を押し付けない、というのも一緒に伝えられます。施工当日の流れと、においへの備え方は、壁紙の張り替えは住みながらでもできる?1〜2日で完了する当日の流れと3つのポイントを解説で解説しています。

見積書では品番が書かれているかを見る

見積書が出てきたら、壁紙の品番が書かれているかを見てください。品番があれば、メーカーのサイトや見本帳で、その品番にどの機能表示が付いているかを自分で確かめられます。「機能性クロス一式」のような書き方だと、抗アレルなのか汚れ防止なのか分かりません。

口頭で「抗アレルにします」と聞いていても、見積書と食い違っていないかを見る、という程度の確認で十分です。細かく精査する必要はなく、説明された内容と書かれている内容が合っているか、を見るだけです。合っていなければ、その場で聞き直せば済みます。

どの部屋に使うかを先に決めておく

見積もりの前に、どの部屋に抗アレルの壁紙を使いたいかを考えておくと話が早くなります。

リリカラの推奨場所を手がかりにするなら、花粉が気になるなら玄関・廊下・リビング、ダニが気になるなら寝室・子供部屋です。全部の部屋を抗アレルにする必要はなく、医師に確認したアレルゲンとメーカーの推奨場所を手がかりに選んだ部屋だけ機能性の壁紙にして、他は量産品で済ませる、という組み合わせで見積もりを取ると、金額の差も分かりやすくなります。

症状の原因が壁紙以外にあるなら、そちらも一緒に見てもらう

壁にカビが出ている、結露で壁が湿っている、といった状態があるなら、抗アレル壁紙を選ぶ前に、その状態を現地調査で見てもらってください。カビが出る原因が下地や湿気にある場合、壁紙の機能だけでは同じことが繰り返されます。

現地調査では、どの部屋で、どんな症状が、いつ頃から気になっているかを伝えれば十分です。専門的な言葉は要りません。「子ども部屋に、ダニアレルゲンの働きを抑える機能の壁紙を選べますか」という聞き方で、業者側は何を提案すべきか分かります。

まとめ

壁紙とアレルギーについて、法律の区分とメーカーの記述から分かったことを整理します。

  • 「壁紙とアレルギー」には、壁紙が出すホルムアルデヒドの話と、壁紙の表面に付くダニ・花粉のアレルゲンの話が混ざっている。対応する機能も別
  • ホルムアルデヒドは、2003年の建築基準法改正で壁紙が規制の対象になり、内装の仕上げに制限なく使えるのはF☆☆☆☆だけ。いま流通している内装用の壁紙はこの表示が前提で、JISマークか認定番号で確かめられる
  • 抗アレル壁紙は、壁紙の表面に付いたダニ・花粉のアレル物質を包み込んで働きを低減する。メーカーは「治療や予防を目的としたものではない」「空気中のアレル物質を減らす効果はない」と明記している
  • リリカラは使用場所として、花粉なら玄関・廊下・LDK、ダニなら寝室・子供部屋を挙げている。家じゅうではなく、医師に確認したアレルゲンとメーカーの推奨場所を手がかりに部屋を選ぶ考え方
  • 壁紙を替えるだけで症状が治まるとは、メーカーも書いていない。壁紙の表面に付くのは部屋のアレルゲンの一部で、壁紙は補助的な選択肢。原因の確認と発生源側の対策は医師に相談し、カビが関わるなら、まず原因を見てもらう
  • 見積もりでは、抗アレルの壁紙を選べるか、F☆☆☆☆の表示があるか、糊とにおいはどうか、の3つを聞く

抗アレル壁紙は、名前から受ける印象ほど万能なものではありません。ただ、壁の表面に付いたアレルゲンに対して何かをしてくれる壁紙が、機能性壁紙の一つとして選べることも事実です。張り替えを考えているなら、選択肢として知っておいて損はありません。

心配していることがホルムアルデヒドなのか、ダニや花粉なのか。それを分けたうえで、どの部屋にどの壁紙を使うかを相談すれば、見積もりの話は具体的になります。

医師にアレルゲンを確認したうえで、抗アレルゲン加工の壁紙を候補に入れて見積もりを取りたい方は、電話でご相談ください。現地調査でお部屋の状態を見たうえで、どの部屋に機能性の壁紙を使うか、量産品との差はどのくらいかをお伝えします。見積もり・現地調査は無料です。

電話が難しい方はでもご相談いただけます。

この記事の執筆者

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氏名:松田郁幾
実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。

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