
壁紙の手垢を拭いてみたけれど、うっすらと残ったまま消えない。もっと強い洗剤を使えば落ちるのだろうかと、次の方法を探しているところではないでしょうか。
先に結論をお伝えします。一般的なビニール壁紙の手垢は、固く絞った布での水拭き、それで落ちなければ薄めた中性洗剤、ここまでが壁紙メーカーの案内している範囲です。その先の方法には、壁紙にとって安全かどうかをメーカーの資料では確かめられないものと、壁紙のほうを確実に傷めるものがあります。
一度拭いて落ちなかったのは、掃除の仕方が悪かったからではありません。手垢は一度についた汚れではなく、毎日少しずつ手が触れて積み重なった層です。壁紙メーカーのシンコールも、汚れ全般について「種類や放置時間によっては除去できなくなる場合もあります」としています。
この記事を読むと、次のことが分かります。
- 壁紙の手垢を落とす手順と、壁紙メーカーが案内している洗剤の範囲
- 一度拭いて落ちなかったものが、それ以上はきれいにならない理由
- セスキ・重曹水・アルカリ電解水など安全かどうかを確かめられない方法と、強くこする・メラミンスポンジなど壁紙を傷める方法
- どこで掃除をやめて、張り替えに切り替えるかの判断
- 手垢があっても、張り替えの費用が上乗せされることはないということ
- 張り替えるときの範囲と、手が触れる場所の壁紙の選び方
読み終えるころには、壁紙を傷めずにどこまで試せるのか、その線引きが見えているはずです。
ご自宅の壁が張り替えの必要な状態なのか、張り替えるとしたらどのくらいの範囲になるのか。気になる点は、まずはお電話でもご相談いただけます。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。
壁紙についた手垢は、何で落とすのが基本か

手垢の掃除は、洗剤の強さを上げれば落ちるというものではありません。まずは手垢がどういう汚れなのかと、壁紙メーカーがどこまでを案内しているのかを確認しておきます。
手垢は一度についた汚れではなく、毎日少しずつ積み重なった層
手垢は、こぼした飲み物や子どもの落書きのように「いつついたか」がはっきりしている汚れとは、性質が違います。スイッチの周り、ドアの脇、階段の上り口。いつも同じところに手が触れて、そのたびにわずかな手の脂が壁紙へ移る。それが繰り返し重なって、ようやく目に見えるようになったものが手垢です。
つまり、気づいた時点ですでに長い時間が経っています。ここが、このあと説明する落ちにくさに直結します。
シンコールは日常のお手入れについて「湿気や油分を吸うと、汚れとなり取れにくくなります。はたきをかける・掃除機で吸い取るなど日常的なお手入れで汚れが軽減します」としています(出典:シンコール「壁紙のお手入れについて」)。手垢も同じで、薄いうちに拭くのが最も落ちる状態です。
一般的なビニール壁紙で壁紙メーカーが案内しているのは「水拭き、落ちにくければ中性洗剤」まで
では何を使うのか。壁紙メーカー各社の案内は、驚くほど共通しています。
リリカラは「きれいな水にひたして固く絞った布などで、汚れを吸い取るように拭き取ってください。落ちにくいときは家庭用中性洗剤を使うと効果的です」としています(出典:リリカラ「ビニル壁紙|お手入れ便利帳」)。サンゲツも一般ビニル壁紙について「直ちにかたく絞ったスポンジやタオルで汚れを吸い取るように拭き取ってください。落ちにくい場合は中性洗剤をご使用ください」と案内しています(出典:サンゲツ「壁紙のお手入れ方法」)。シンコールも「落ちにくい場合は水か中性洗剤を薄めて拭き取り、仕上げは乾布で拭き取りましょう」としています(出典:シンコール「壁紙のお手入れについて」)。
3社とも、まず水拭き、それで落ちなければ中性洗剤、という同じ順番です。ここでいう中性洗剤は、台所用の食器洗い洗剤がこれにあたります。リリカラは「中性洗剤(食器食品用)を洗剤の表示に従って必ず水でうすめてご使用ください」としており、原液のまま使うものではありません。濃くすれば落ちるというものでもありません。
なお、ここまでの方法は、表面がビニールでできた壁紙(ビニールクロス)を前提としたものです。織物や和紙の壁紙は水拭き自体が向きません。自宅の壁紙がどれにあたるかは、壁紙は水拭きしていい?ビニールクロスはOK、織物・和紙はNGな理由で確認できます。
拭く方向にも案内があります。リリカラは「壁紙のつなぎ目に逆らわない様に、ていねいに汚れを拭き取ってください。またつなぎ目に水が入ると剥がれの原因になるので注意してください」としています。壁紙のつなぎ目は縦に入っていることが多いので、実際には縦方向に拭くことになります。
凹凸に入り込んだ汚れに歯ブラシを挙げているのは、汚れ防止壁紙の案内
布で拭いても、表面がざらついた壁紙では汚れが残ることがあります。型押しの模様の谷になった部分に入り込んだ汚れには、平らな布が届かないためです。
これについては、メーカーが歯ブラシを挙げています。シンコールは「壁紙に凹凸がある場合は歯ブラシを使いましょう」とし(出典:シンコール「壁紙のお手入れについて」)、リリカラも「歯ブラシでこするとより効果的です」としています(出典:リリカラ「ビニル壁紙|お手入れ便利帳」)。
ただし、どちらも汚れ防止壁紙のお手入れとして書かれているものです。表面にフィルムが貼られていない一般的なビニル壁紙について、歯ブラシを使ってよいとは書かれていません。一般の壁紙で試すのであれば、力を入れず、家具の裏など目立たない場所で先に確かめてからにしてください。後述するとおり、強くこすると壁紙の表面を傷めることがあります。毛先を谷まで届かせるための道具であって、削り取るための道具ではありません。
洗剤を使ったら真水で拭き取り、最後は乾拭き
見落とされやすいのが、洗剤を使ったあとの処理です。
リリカラは「洗剤を使用したときは、必ずきれいな水で壁紙の表面に残った洗剤を拭き取ってください。洗剤が付着したままだと変色の原因になります」としています(出典:リリカラ「ビニル壁紙|お手入れ便利帳」)。サンゲツも「壁紙表面に残った洗剤は変色の原因になりますので、真水かぬるま湯できれいに拭き取ってください」と案内しており(出典:サンゲツ「壁紙のお手入れ方法」)、シンコールも「洗剤の拭き残しは変色の原因になります」としています(出典:シンコール「壁紙のお手入れについて」)。
3社が揃って注意しているということは、それだけ気をつけるべき点だということです。手垢を落としたつもりが、拭いた範囲だけ色が変わってしまっては元も子もありません。洗剤を使ったら真水で拭き取り、最後に乾いた布で仕上げる。ここまでが一連の手順です。
それでも落ちないのは、手垢が「ためた汚れ」だから

ここまでの手順を丁寧にやっても、スイッチ周りの黒ずみや、壁全体のうっすらとした黄ばみが消えないことがあります。ここから先はどうすればいいのか。壁紙メーカーの資料を読むと、そもそもの前提が見えてきます。
なお、壁全体に広がった黄ばみは、手垢ではなく日射しやタバコのヤニが原因のこともあります。原因ごとの見分け方は、壁紙の日焼けは掃除・漂白で戻る?ヤニとの見分け方と部分張替えで色が合わない理由で解説しています。
壁紙メーカーのお手入れの案内に、「手垢」という項目はない
サンゲツ、リリカラ、シンコールの3社のお手入れのページには、汚れへの対処法が一通り書かれています。飲食物や調味料をこぼした場合、鉛筆やクレヨンによる子どもの落書き、カビ、剥がれ。
そのどこにも、「手垢」という項目は出てきません。皮脂という語も使われていません。
これは書き漏らしというより、手垢が「日常の汚れ」の側に分類されているということだと考えられます。つまり、手垢専用の落とし方というものは、壁紙メーカーの案内には用意されていません。水拭きと中性洗剤という日常のお手入れの延長にあり、そこで落ちなければ、その先の手順は書かれていないという位置づけです。
インターネットで検索すると「手垢はこれで落ちる」という情報が数多く出てきますが、そのほとんどは壁紙をつくっている側が案内しているものではない、ということになります。
メーカーが名指ししているのは、洗剤ではなく放置していた時間
では、落ちるか落ちないかを分けるものは何か。メーカーの案内が挙げているのは、洗剤の種類ではなく時間です。
シンコールはお手入れのページの冒頭で「お部屋のお掃除と同様に、壁紙も日頃のメンテナンスが大切です。汚れは多種多様で、種類や放置時間によっては除去できなくなる場合もありますので、できるだけ早くに対処することが大切です」としています(出典:シンコール「壁紙のお手入れについて」)。
「除去できなくなる場合もあります」と、壁紙をつくっている側が書いている点が重要です。落ちないのは力の入れ方が足りないからでも、洗剤の選び方を間違えたからでもありません。手垢は気づいた時点ですでに長い間積み重なっているので、この「放置時間」という条件に当てはまりやすい汚れだということになります。
同社は「湿気や油分を吸うと、汚れとなり取れにくくなります」とも書いています。壁紙の表面に乗っているだけの状態を過ぎて、吸い込まれてしまったものは、表面を拭く掃除では届きません。
範囲が広いので、気になるところだけ拭くと境目が出る
手垢には、落書きやこぼした汚れにはないもう一つの厄介さがあります。範囲が広いことです。
スイッチ周りの黒ずみが気になってそこだけ念入りに拭くと、拭いた範囲だけが明るくなって、かえって目立つことがあります。実際には周囲の壁にも薄く汚れが乗っていて、そのなかで一箇所だけを元の色に戻した形になるためです。
拭くのであれば、気になる箇所だけをこすり込むのではなく、その壁一面を同じ手順で通して拭くほうが、仕上がりの差が出にくくなります。逆に言えば、一面まるごと拭いてもまだ気になるのであれば、それは掃除で変えられる範囲を超えているという合図でもあります。
中性洗剤より先の方法には、安全性を確かめられないものと、壁紙を傷めるものがある
中性洗剤で薄くならないと、次はもっと強いものを試したくなります。ただ、ここから挙げるものは、壁紙メーカーの資料では安全かどうかを確かめられないものか、壁紙のほうを確実に傷めるものかのどちらかです。
セスキ・重曹・アルカリ電解水は、壁紙メーカーの案内には出てこない
手垢の掃除を調べると、セスキ炭酸ソーダ、重曹、アルカリ電解水といったアルカリ性のものを勧める情報がよく出てきます。手の脂にはアルカリ性が効く、という説明とセットになっていることが多いはずです。
ところが、壁紙メーカーのお手入れの案内では、これらを使う方法は案内されていません。一般的なビニール壁紙について案内されているのは、先に見たとおり水拭きと薄めた中性洗剤までです(壁紙の種類や汚れによっては消毒用アルコールも挙げられています)。
ここは正確に受け取ってください。メーカーは「アルカリ性の洗剤を使ってはいけない」と書いているわけではなく、書かれていないというだけです。ですから、手垢に効くのかどうかも、壁紙が変わってしまうのかどうかも、メーカーの資料からは判断できません。
一方で、はっきり書かれていることもあります。リリカラは「強い洗剤やシンナーなどの有機溶剤は、変色や表面破損の原因になるので使用しないでください」とし(出典:リリカラ「ビニル壁紙|お手入れ便利帳」)、サンゲツも「強い洗剤やシンナーなどの有機溶剤は、変色や表面破損の原因になりますので使用しないでください」としています(出典:サンゲツ「壁紙のお手入れ方法」)。ただし、セスキや重曹がこの「強い洗剤」に当たるのかどうかまでは書かれていません。
一方、洗剤の側から見ると、例外がひとつあります。重曹製品を出しているレックは、重曹を染み込ませたシートについて「壁紙の手アカ・皮脂の汚れもふき取ってきれいに」と書いており、壁紙の手垢をはっきり名指ししています(出典:レック「壁紙・ドアノブまわり」)。ただし壁紙用として挙げられているのはこのシートだけで、同じブランドの重曹スプレーや粉末には壁紙が出てきません。重曹が壁紙に使えるかどうかは、製品の形によって答えが変わります。形ごとの用途表示の違いは、壁紙に重曹は使える?メーカーが壁紙用に挙げているのはシートだけ、研磨作用にも注意で詳しく解説しています。
つまり、アルカリ電解水も含めて、セスキや自分で作る重曹水が手垢に効くのかも、壁紙にとって安全なのかも確かめられません。どちらも確かめられないまま壁一面に試すのは、割に合わない賭けになります。どうしても試したい場合は、家具の裏など目立たない場所で先に確かめてからにしてください。
強くこすると、型押しの凹凸が潰れてテカる
道具や洗剤を変えなくても、力を入れるだけで壁紙は変わります。
リリカラは壁紙のお手入れの注意として「強く力を入れて拭くと表面の凹凸が潰れたり、キズが付くことがあるので注意してください」としています(出典:リリカラ「ビニル壁紙|お手入れ便利帳」)。シンコールも「強くこすると、汚れが広がったり染み込んだり、表面が破損する場合があります」としています(出典:シンコール「壁紙のお手入れについて」)。
手垢の場合、この「汚れが広がったり染み込んだり」が実際に起きることがあります。浮いた汚れをこすり回すと、点だった黒ずみが面のくすみに変わります。そして凹凸が潰れた部分はそこだけ光を反射するようになり、乾いてから「拭いた範囲が四角くテカっている」という形で現れます。
一度潰れた凹凸は、あとから方法を変えても戻りません。手垢は「汚れ」ですが、潰れた型押しは「壁紙そのものの損傷」で、直すには、張り替えるか、リペア業者に目立たなくしてもらうかになります。リペアは、傷んだ箇所だけを小さく貼り直したり塗装したりして目立たなくする方法で、どこまでできるかは状態によります。直しても近くで見ると分かることがあるので、そのままにするか直すかは、気になる程度で決めることになります。
メラミンスポンジは、汚れと一緒に壁紙の表面も削っている
手垢の落とし方として、メラミンスポンジを挙げる情報もよく見かけます。
メラミンスポンジは細かい網目で表面を削り取る道具で、洗剤のように汚れを浮かせるわけではありません。削られるのは汚れだけではなく、壁紙の型押し模様の山も、汚れ防止加工が施されている壁紙であればその加工の層も、一緒に削れます。
やっかいなのは、削れた直後は見た目の変化が分かりにくいことです。跡が薄くなったように見えて、あとになってそこだけ質感が変わる、テカる、かえって汚れがつきやすくなる、という形で出てきます。手が触れる場所は今後も汚れ続ける場所なので、汚れがつきやすい状態にしてしまうのは避けたいところです。すでに使ってしまった場合の見極め方も含め、壁紙にメラミンスポンジ(激落ちくん)は使える?製造元が挙げる「使用に適さない面」と張り替えを検討する5つのサインで解説しています。
市販の住宅用洗剤を使うなら、液性が中性かどうかを見る
市販の住宅用洗剤を使いたい場合は、商品名ではなく液性を見てください。ボトルの裏の成分表示に「液性:中性」と書かれていれば、壁紙メーカーが案内している中性洗剤と同じ液性だということになります。住宅用洗剤のなかにも中性のものがあり、たとえばウタマロクリーナーがこれにあたります。
ただし、中性であれば何にでも使ってよいというわけではありません。リリカラが挙げているのは「中性洗剤(食器食品用)」であって、住宅用洗剤ならどれでもよいと書かれているわけではないからです。製品の側にも使える面と使えない面の指定があるので、壁紙に使ってよい製品かどうかは、その表示でも確かめてください。そのうえで、壁紙の側の「洗剤を残さない」「強くこすらない」という条件も守ることになります。
手垢以外の汚れも同時に気になっている場合の洗剤の選び分けは、壁紙の掃除に使う洗剤はどれがいい?汚れ別の選び方と使ってはいけない洗剤の見分け方で整理しています。先ほど例に挙げたウタマロクリーナーについては、公式が示している液性や用途を壁紙の油汚れの落とし方|中性洗剤で落ちる範囲と張り替えに切り替える5つのサインで取り上げています。
どこで掃除をやめて、張り替えに切り替えるか
薄くはなったけれど消えてはいない、という状態は珍しくありません。ここからさらに粘るのか、張り替えを考えるのか。判断の材料を整理しておきます。
落とせるかどうかより、見て気になるかどうかで決める
掃除を続けるかどうかを「まだ落とせる可能性があるか」で考えると、いつまでも区切りがつきません。手垢は薄くはなっても完全には消えないことが多く、可能性という意味では常にわずかに残るためです。
判断しやすいのは、汚れではなく自分の感じ方を基準にすることです。部屋に入ったときに目に入るか、来客があったときに気になるか、家具を置けば隠れる位置か。跡が残っていても生活のなかで意識に上らない場所であれば、無理に張り替える必要はありません。逆に、見るたびに気になって何度も同じ場所に手を入れてしまうようであれば、掃除を続けるほど壁紙を傷めることになります。
張り替えを検討したほうがよいサイン
次のような状態であれば、掃除を続けるより、張り替えを選択肢に入れて考えたほうが結果的に落ち着きます。
- 中性洗剤で壁一面を通して拭いたのに、乾いたあともくすみが残っている:一箇所ではなく面で残るのは、表面に乗っているだけの汚れではなくなっているサインです。
- 拭いた場所と拭いていない場所の境目が出てしまった:ここから見た目を揃えるには、結局その面全体を拭き直すことになります。
- こすった場所だけ質感が変わった、テカりが出た:手垢ではなく壁紙自体が変わってしまった状態で、この変化は掃除では戻りません。
- 築年数が経っていて、他の箇所の汚れも同時に気になっている:手垢だけを見れば張り替えるほどではなくても、他の汚れや黄ばみと合わせて考えると、まとめて直したほうが納得感のある結果になります。
手垢の跡以外も含めて「そろそろ替えどきか」を考えたい場合は、壁紙の替えどきはいつ?築年数より見るべき「今の壁の状態」と見逃せない5つのサインが判断の参考になります。
判断に迷う場合は、その状態のまま業者に見てもらうのが確実です。張り替えが必要な状態かどうか、張り替えるならどの範囲でいくらかかるかは、壁紙の種類と傷み具合を実際に見れば分かります。無理に落とそうとしてから相談する必要はなく、むしろ手を加える前のほうが正確に判断できます。
手垢があっても、張り替え費用が上乗せされることはない
汚れがひどいと、その分だけ費用が高くなるのではないかと心配される方がいますが、基本的にそうはなりません。
壁紙の張り替えは、古い壁紙を剥がしてから新しいものを貼る作業です。表面についた手垢は、古い壁紙と一緒に剥がされてなくなります。汚れの程度が重くても軽くても、剥がして貼るという作業そのものは変わらないため、手垢を理由とした特別な処理や追加料金は発生しません。
費用を左右するのは、汚れの程度ではなく張り替える面積と壁紙のグレードです。「汚してしまったので割高になるのでは」と、見積もりを取ることをためらう必要はありません。
張り替えるときの範囲と、手が触れる場所の壁紙の選び方
張り替えを考える段階になったら、次に決めるのは範囲です。汚れている部分だけを直したいと考える方が多いのですが、壁紙の張り替えは面積が小さいほど割高になりやすいという性質があります。
手垢の部分だけ直すならリペア業者、張り替えるなら1面単位で考える
手垢のある部分だけを直したい場合は、壁紙を張り替えずに、傷や汚れのある箇所だけを直すことを専門にしているリペア業者に頼む方法があります。手垢が1〜数箇所で、周りの壁紙がまだきれいなら、費用の目安は1万〜3万円程度で、張り替えより安く済むことが多くなります。ただし、周りの色や柄に合わせて目立たなくする直し方なので、条件によっては、近くで見ると直した跡が分かることがあります。
張り替え業者に頼む場合は、事情が違います。壁紙は幅およそ90センチのロール状のもので、これを上から下まで貼り継いでいきます。汚れた部分だけを切り取って貼り直す部分補修という方法自体はありますが、継ぎ目の位置で区切る必要があるため、実際には最低でも1枚分を張り替えることになります。しかも段取りや職人の手間は1面を張り替える場合とあまり変わらないため、費用にもほとんど差がつかないことが多くなります。多くの業者は、最低料金を4万〜6万円程度に設定しています。
もう一つ、部分的な張り替えには色の問題があります。すでに貼られている壁紙は日焼けや汚れで少しずつ色が変わっているため、同じ品番の新しい壁紙を隣に貼ると、その部分だけ明るく浮いて見えます。手垢の場合はこれが特に起きやすく、周囲にも薄く汚れが乗っている状態のまま、一部分だけを新品に替えることになるためです。品番が分からず廃番になっている場合は、近い柄を探すことになり、差はさらに出ます。1面ずつ、あるいは部屋単位で張り替えるほうが、仕上がりに違和感が出にくくなります。実際に部分補修と一面張替えを比べたご相談の例は、神奈川県厚木市:壁紙の部分補修と一面張替えの費用差についてのご相談でご紹介しています。
他の箇所とまとめたほうが、結果的に割安になる
壁紙の張り替えには、面積にかかわらず発生する費用があります。職人の移動、家具の養生、道具の準備、作業後の片付けといった部分で、1面だけの張り替えでも一日分の段取りは同じようにかかります。このため小さい面積で依頼すると、1平方メートルあたりの単価は高くなります。
手垢の場合、これは考えやすい話でもあります。手が触れる場所は一箇所ではないので、スイッチ周りが気になるときは、ドアの脇や廊下、階段まわりも同じように汚れていることが多いためです。気になっている箇所をまとめて依頼すれば、この固定的な費用を分け合う形になり、1箇所あたりの負担は小さくなります。見積もりの段階で「この面も一緒に張り替えた場合はいくらか」を出してもらえば、比較して決められます。
どこを優先するかは、汚れの目立ちやすさと、その部屋で過ごす時間の長さで考えると整理しやすくなります。すべてを一度にやる必要はなく、気になる部屋から順に進めるという選び方もあります。
汚れ防止タイプは「突発的な汚れ」向け。ためた汚れには限界がある
張り替えるタイミングは、壁紙の種類を選び直せるタイミングでもあります。手が触れる場所には、汚れ防止タイプの壁紙が選択肢になります。
サンゲツは汚れやキズに強いタイプについて「付着した汚れが拭き取りやすくキズにも強い壁紙です」とし、おすすめの場所として「キッチン、ダイニング、リビング、洗面・トイレ、子ども部屋、玄関・階段ホール」を挙げています(出典:サンゲツ「汚れやキズに強いタイプ|壁紙の選び方」)。玄関・階段ホールや子ども部屋は、まさに手が触れやすい場所です。
ただし、正直にお伝えしておきたい点があります。シンコールは「汚れ防止壁紙は、突発的な汚れに適した壁紙です。タバコのヤニや、時間が経ったしつこい汚れなどを完全に拭き取ることは困難です」と明記しています(出典:シンコール「壁紙のお手入れについて」)。同社は「汚れの原因や放置時間によっては汚れが完全に落ちない場合があります」ともしています。
手垢は、まさに「時間が経ったしつこい汚れ」になりやすい側の汚れです。汚れ防止タイプにすれば手垢がつかなくなる、たまった手垢も拭けば元どおりになる、という話ではありません。期待できるのは「薄いうちに拭けば落としやすい」というところまでで、こまめに拭くという前提そのものは変わりません。
それでも、拭いたときに落ちる状態を保ちやすくなること自体には意味があります。全面に使う必要もなく、手が触れる低い位置や玄関・階段まわりだけを汚れ防止タイプにして、天井や高い位置は一般的な壁紙にするという組み合わせもできます。見積もりを依頼するときに、その分け方でいくら変わるのかを聞いてみるとよいでしょう。
まとめ:どこまで落とし、どこから張り替えるか
一般的なビニール壁紙についた手垢は、固く絞った布での水拭き、それで落ちなければ薄めた中性洗剤、ここまでが壁紙メーカーの案内している範囲です。凹凸に入り込んだ汚れには歯ブラシという案内もありますが、これは汚れ防止壁紙についてのものなので、一般の壁紙で試すなら力を入れず、目立たない場所で先に確かめてください。洗剤を使ったあとは真水で拭き取り、最後に乾拭きで仕上げます。洗剤の拭き残しが変色の原因になることは、3社が揃って注意しています。
それで落ちなかったとしても、掃除の仕方が悪かったわけではありません。壁紙メーカーのお手入れの案内には、そもそも「手垢」という項目自体がなく、手垢専用の落とし方は用意されていません。代わりに書かれているのは、汚れは「種類や放置時間によっては除去できなくなる場合もある」ということです。手垢は毎日少しずつ積み重なる汚れなので、気づいた時点でこの条件に当てはまりやすい側にいます。
落ちないときに気をつけたいのは、より強いものに持ち替えないことです。セスキや自分で作る重曹水、アルカリ電解水を使う方法は壁紙メーカーが案内していないため、手垢に効くのかも、壁紙にとって安全なのかも確かめられません。一方で「強い洗剤やシンナーなどの有機溶剤は、変色や表面破損の原因になる」ことははっきり書かれています。そして強くこすれば型押しの凹凸が潰れてテカり、メラミンスポンジは汚れと一緒に壁紙の表面まで削ります。こちらは確かめようのない話ではなく、手垢を消すつもりで直さなければならない範囲のほうを広げてしまう方法です。
掃除をやめる線引きは、落とせる可能性ではなく、見て気になるかどうかで考えると決めやすくなります。壁一面を通して拭いたのに乾いたあともくすみが残っている、拭いた場所との境目が出てしまった、こすった場所の質感が変わった、他の箇所の汚れも同時に気になっている。こうした状態であれば、これ以上傷めないためにも、こすり続けずに張り替えを選択肢に入れて考えるほうが落ち着きます。
手垢が1〜数箇所で、周りの壁紙がまだきれいなら、張り替えずに直すリペア業者(1万〜3万円程度が目安)という選択肢もあります。張り替えになっても、汚れがひどいことを理由に費用が上乗せされることはありません。古い壁紙と一緒に剥がされるため、特別な処理は必要ないからです。範囲は継ぎ目の関係で1面単位が基本になり、手が触れる場所は一箇所ではないぶん、気になっている箇所をまとめて依頼すれば1箇所あたりの負担は小さくなります。汚れ防止タイプの壁紙も選択肢になりますが、こちらは突発的な汚れに向いたもので、ためてしまった汚れを完全に拭き取れるわけではないという点は知っておいてください。
判断に迷うときは、無理に落とそうとする前に、その状態のまま見てもらうのが確実です。壁紙の種類と傷み具合を実際に見れば、張り替えが必要な状態かどうか、張り替えるならどの範囲でいくらかかるかはその場で分かります。
張り替えが必要な状態なのか、まだ様子を見てよいのか。壁の状態を見たうえでのご案内は無料です。無理に落とそうとする前に、そのままの状態でお気軽にご相談ください。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。 氏名:松田郁幾この記事の執筆者

実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。



