壁紙の耐用年数は6年?原状回復ガイドラインの負担割合と「一面分まで」の原則

入居者が退去したあとの空室。壁に家具を置いていた跡があり、床に段ボール箱が1つ置かれている

入居者が退去して、部屋の壁紙を張り替えることになった。見積もりを見ながら、「この費用は、どこまで入居者に負担してもらえるのか」と考える大家さんや管理会社の方は多いと思います。調べてみると「壁紙の耐用年数は6年」という話がよく出てきますが、10年、15年という数字を見かけることもあり、どれを基準にすればよいのか分かりにくくなっています。

先に結論をお伝えします。賃貸の退去で使われる「壁紙の耐用年数6年」は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が示している、費用の負担割合を決めるための基準です。そもそも、年数とともに起きる変化や、普通に暮らしていて生じる傷みは、年数に関係なく貸主の負担です。そのうえで、入居者の不注意などでついた傷の張り替え費用を入居者に負担してもらう場合も、壁紙(クロス)は6年で価値が1円になると考えて負担割合を計算します。入居していた年数が長いほど入居者の負担割合は小さくなり、6年を過ぎると、残る価値はほぼありません。一方、よく見かける10〜15年や、壁紙メーカーのサンゲツが張り替えの目安として示す5〜10年は、壁紙という建材そのものの寿命や張り替えどきについての、別の意味の数字です。

ただし、6年を過ぎれば入居者の負担がすべてなくなるわけではありません。落書きのような故意による傷は、年数に関係なく、直すための工事費などを入居者が負担することがあるとされています。また、入居者が負担するのは、原則として、傷をつけた箇所を含む一面分までが目安とされています(タバコのヤニが部屋全体に及んでいる場合などは扱いが異なります)。

この記事を読むと、次のことが分かります。

  • 「壁紙の耐用年数」に2つの意味があること。建材の寿命と、原状回復の基準
  • ガイドラインの「6年で残存価値1円」の考え方と計算の起点、6年を過ぎても入居者の負担が残る場合
  • 「6年」が国税庁の耐用年数表から引いた数字ではないこと
  • 張り替えの範囲は「一面分まで」が原則であること
  • 貸主の負担になりやすい例と、入居者の負担になりやすい例。タバコのヤニの扱い
  • 貸主・オーナーが退去後の張り替えで気をつけたいこと

読み終えるころには、退去後の張り替え費用のうち、どこまでが貸主の負担になりそうかの見当がつき、見積もりや入居者との話し合いに何を準備すればよいかが分かるはずです。

入居者の退去にともなう壁紙の張り替えを考えている大家さん・管理会社の方は、電話でご相談ください。部屋の状態や張り替えたい範囲を伺い、見積もりの進め方をご案内します。見積もり・現地調査は無料です。入居中の方の退去費用のご相談は、まず大家さん・管理会社へお問い合わせください。

電話が難しい方はでもご相談いただけます。


「壁紙の耐用年数」には2つの意味がある

継ぎ目が開いた古い壁紙の前の机に、電卓と、右肩下がりの棒グラフを描いた紙が置かれている

「壁紙の耐用年数」と検索すると、6年という数字と、10〜15年という数字の両方が出てきます。どちらかが間違っているわけではなく、別のことを指しています。

建材としての張り替えの目安は、サンゲツが5〜10年、一般には10〜15年とも言われる

1つは、壁紙という建材そのものがどのくらいもつか、という意味の耐用年数です。壁紙メーカーのサンゲツは、日頃のお手入れをしながら、使用状況に応じて5〜10年を目安に張り替えることをすすめています(出典:サンゲツ「壁紙のメンテナンス(一般ビニル壁紙)」)。一般には10〜15年ほどで、汚れや変色、表面のひび割れ、継ぎ目の開きといった傷みが目立ってくるとも言われます。

こちらは、住んでいる人が「そろそろ張り替えどきか」を考えるときの目安です。ただ、同じ年数でも、日当たりや湿気、タバコの有無、家具の置き方で傷み方は大きく変わるので、張り替えどきは、年数よりも今の壁の状態を見て判断するほうが実態に合います。張り替えどきの見極め方は、壁紙の替えどきはいつ?築年数より見るべき「今の壁の状態」と見逃せない5つのサインで扱っています。

賃貸の退去で使う「6年」は、費用の負担を決めるための基準

もう1つが、賃貸住宅を退去するときの原状回復で使う「6年」です。こちらは、壁紙が実際に6年で使えなくなるという意味ではありません。退去時の張り替え費用を、貸主と入居者でどう分けるかを計算するための基準です。

実際には、6年を過ぎた壁紙でも、きれいに使われていればそのまま使い続けられることがあります。反対に、6年を待たずに張り替えが必要になることもあります。「6年」は、壁紙の寿命を言い当てた数字ではなく、費用の分け方を決めるための物差しだと考えてください。

この記事で主に扱うのは、こちらの「6年」です。

原状回復ガイドラインの「6年で残存価値1円」

棚の上に6つのコインの山が並び、左から右へ段々低くなって、最後は1枚だけになっている

退去時の原状回復について、国土交通省は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表しています。現在の版は平成23年8月の再改訂版で、民間の賃貸住宅での退去時のトラブルを防ぐために、費用負担の考え方を整理したものです(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」)。

なお、UR賃貸住宅や都営住宅は、それぞれに独自の負担区分があります。こちらはUR賃貸住宅の壁紙張り替え|経年劣化はUR負担、自費なら「簡易模様替え」の届け出と、都営住宅の壁紙張り替えはできる?入居中・退去時にできる3つのことと相談先で扱っています。

経年変化・通常の使用による傷みは、家賃に含まれているという考え方

ガイドラインは、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と定義しています(出典:同上)。

つまり、原状回復は「借りたときの新品の状態に戻すこと」ではありません。年数とともに自然に起きる変化(経年変化)や、普通に暮らしていて生じる傷み(通常損耗)は、原状回復の対象に入りません。

その理由として、ガイドラインは「経年変化・通常損耗の分は、賃借人は賃料として支払ってきているところで、賃借人が明け渡し時に負担すべき費用にならないはずである」と説明しています(出典:同上)。家賃の中にすでに含まれているものを、退去のときにもう一度払わせると、二重に負担させることになる、という考え方です。

壁紙は6年で残存価値1円として、入居者の負担割合を計算する

入居者に負担してもらう傷みがあった場合でも、その費用を全額負担させるわけではありません。ガイドラインは、設備などの経過年数に応じて、入居者の負担割合を減らす考え方をとっています。

壁紙(クロス)については、ガイドラインの表で「6年で残存価値1円となるような直線(または曲線)を想定し、負担割合を算定する」とされています(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」)。新しい壁紙の価値が、6年かけて少しずつ下がっていき、6年で1円になる、と考えて計算するということです。

ガイドラインはこの考え方について、「年数が経つほど賃借人の負担割合は減少することとなる」と書いています(出典:同上)。たとえば、入居者の不注意で壁紙を汚してしまった場合でも、入居期間が長くなるほど、張り替え費用のうち入居者が負担する割合は小さくなり、6年を過ぎると、残る価値はほぼありません。

計算の起点は、入居したときの壁紙の状態で決まる

ここで気をつけたいのが、6年を数え始める起点です。ガイドラインは、設備ごとに交換した時期を正確に把握するのは難しいことから、「経過年数のグラフを、入居年数で代替する方式を採用することとした」としています(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」)。

ただし、入居したときの壁紙が新品だったとは限りません。ガイドラインは、「入居直前に設備等の交換を行った場合には、グラフは価値100%が出発点となるが、そうでない場合には、当該賃貸住宅の建築後経過年数や個々の損耗等を勘案して1円を下限に適宜グラフを決定することとなる」と書き、起点をどこにするかは「契約当事者が確認のうえ、予め協議して決定することが適当である」としています(出典:同上)。

貸主の側から見ると、入居の直前に壁紙を張り替えていれば、その時点を価値100%として計算できます。張り替えずに前の入居者の壁紙のまま貸していた場合は、入居した時点ですでに価値が下がっていた、という前提で計算することになります。いつ壁紙を張り替えたかの記録を残しておくと、退去時の話し合いがしやすくなります。

6年を過ぎても、故意・過失の傷は入居者の負担になることがある

もう1つ知っておきたいのが、「6年を過ぎれば、入居者は何も負担しなくてよい」とは書かれていないことです。

ガイドラインは、経過年数を超えた設備でも「継続して賃貸住宅の設備等として使用可能な場合があり、このような場合に賃借人が故意・過失により設備等を破損し、使用不能としてしまった場合には、賃貸住宅の設備等として本来機能していた状態まで戻す、例えば、賃借人がクロスに故意に行った落書きを消すための費用(工事費や人件費等)などについては、賃借人の負担となることがあるものである」としています(出典:同上)。

6年を過ぎた壁紙は、計算上の価値はほぼ1円でも、部屋の壁としてはまだ使えることがあります。それを故意に傷つけて使えなくした場合は、元の状態に戻すための工事費や人件費を入居者が負担することがある、ということです。貸主の側から見れば、長く住んだ入居者の退去でも、故意・過失による傷があれば、元に戻すための工事費などの負担を求める余地は残っています。

「6年」は、国税庁の耐用年数表から引いた数字ではない

「壁紙の法定耐用年数」を調べると、税金の世界の耐用年数と、この6年が一緒に語られていることがあります。

実際に、国税庁が公表している「主な減価償却資産の耐用年数表」を見ると、建物の耐用年数は、木造・合成樹脂造の住宅用で22年、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の住宅用で47年などと示されていますが、「壁紙」や「クロス」という項目は載っていません(出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」)。

ガイドラインは、経過年数による減価の割合について、「減価償却資産の考え方を採用するとともに、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年3月31日大蔵省令第15号) における経過年数による減価割合を参考にして」きたと説明しています(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」)。つまり、「6年」は、税金の考え方を参考にしながら、ガイドラインが原状回復のために示した数字です。

なお、張り替えにかかった費用を税金の上でどう扱うかは、この記事では扱いません。確定申告などで扱いが気になる場合は、税理士や税務署に確認してください。

張り替えの範囲は「一面分まで」が原則

退去時の張り替えでもう1つ揉めやすいのが、どこまでの範囲を入居者の負担にするかです。壁の一部に傷があるとき、部屋全体の張り替え費用を入居者に請求できるのか、という問題です。

入居者の負担は、傷をつけた箇所を含む一面分までが目安

ガイドラインの表では、壁紙(クロス)の入居者の負担単位について、「㎡単位が望ましいが、賃借人が毀損させた箇所を含む一面分までは張替え費用を賃借人負担としてもやむをえないとする」とされています(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」)。

入居者が壁の一か所に傷をつけた場合でも、入居者に負担してもらう範囲は、傷をつけた壁の一面分までが目安になります。部屋のほかの面まで張り替える費用を、同じ理由で入居者に求めるのは難しい、ということです。

工事は面や部屋全体になることがあるが、負担の範囲とは別

一方で、実際の工事の範囲について、ガイドラインの同じ表には、「最低㎡単位 色、模様あわせを行う場合は当該面または居室全体」と書かれています(出典:同上)。

壁紙を一部だけ新しくすると、周りと色や模様が合わず、そこだけ浮いて見えることがあります。そのため、実際の工事では、一面まるごと、あるいは部屋全体を張り替えることが少なくありません。

「工事をどこまでやるか」と「そのうちどこまでを入居者に負担してもらうか」は、分けて考える必要があります。見た目をそろえるために部屋全体を張り替えるとしても、入居者の負担の目安は、傷のある一面分までです。残りの面は、貸主が次の入居者のために張り替える部分として考えることになります。

貸主の負担になりやすい例と、入居者の負担になりやすい例

では、どのような傷みが貸主の負担になり、どのような傷みが入居者の負担になるのでしょうか。ガイドラインは、壁や天井(クロスなど)について、通常の例を挙げています。ここではその中から、壁紙に関わる代表的なものを紹介します(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」)。

貸主の負担とされる例

普通に暮らしていれば起きる傷みや、自然現象による変化は、貸主の負担とされています。ガイドラインに挙がっている例は次のとおりです。

  • テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
  • 壁に貼ったポスターや絵画の跡
  • 壁等の画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)
  • エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡
  • クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)

画鋲の穴や、日当たりによる変色は、退去時によく問題になりますが、いずれも貸主の負担とされています。ただ、日当たりによる変色と、タバコのヤニによる変色は、見た目が似ていることがあります。負担の区分が逆になるので、見分け方は壁紙の日焼けは掃除・漂白で戻る?ヤニとの見分け方と部分張替えで色が合わない理由で確かめてください。

入居者の負担とされる例

一方、入居者の使い方によって起きたり起きなかったりする傷みや、故意・過失による傷は、入居者の負担とされています。

  • タバコ等のヤニ・臭い
  • 壁等のくぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替が必要な程度のもの)
  • 天井に直接つけた照明器具の跡
  • 落書き等の故意による毀損

同じ「穴」でも、画鋲やピンの穴は貸主の負担、重い物をかけるためにあけ、下地ボードまで張り替えが必要になった穴は入居者の負担、と分かれている点に注意してください。カビや結露、ペットによる傷なども、入居者の使い方や手入れによって起きたかどうかという同じ考え方で判断されます。

タバコのヤニ・臭いは、部屋全体で入居者の負担になることがある

タバコについては、ガイドラインが特に詳しく書いています。

まず、「喫煙等によりクロス等がヤニで変色したり臭いが付着している場合は、通常の使用による汚損を超えるものと判断される場合が多いと考えられる」とされています。あわせて、「賃貸物件での喫煙等が禁じられている場合は、用法違反にあたるものと考えられる」とも書かれています(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」)。

負担の範囲は、先ほどの「一面分まで」とは扱いが異なります。ガイドラインは、「喫煙等により当該居室全体においてクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合のみ、当該居室全体のクリーニングまたは張替費用を賃借人負担とすることが妥当と考えられる」としています(出典:同上)。ヤニや臭いが部屋全体に及んでいる場合に限って、部屋全体の費用が、経過年数を考えたうえで入居者の負担になる、ということです。

ただし、ここでも経過年数の考え方は変わりません。部屋全体の張り替え費用が入居者の負担になる場合でも、入居期間が長ければ、6年で残存価値1円という計算で負担割合は小さくなります。

ヤニが壁紙の内部や下地まで染み込むことがある理由と、張り替えを考える目安は、壁紙のヤニ・タバコ汚れは掃除で落ちる?張り替えに切り替える4つのサインと見積もりの確認点で扱っています。

貸主・オーナーが退去後の張り替えで気をつけたいこと

最後に、貸主・オーナーの方が、退去後の張り替えを進めるうえで気をつけたいことを整理します。

経年劣化の分は貸主の負担として、張り替えの予算を見込んでおく

ここまで見てきたとおり、経年劣化の分は、入居期間にかかわらず貸主の負担です。入居者の不注意による傷があっても、入居期間が長いほど、入居者に負担してもらえる割合は小さくなります。長く住んだ入居者が退去した部屋では、壁紙の張り替え費用の多くは貸主の負担になると考えておくほうが現実的です。

そのため、退去が決まった時点で、張り替えの費用を貸主側の予算として見込んでおくと、あとで慌てずに済みます。一般的な量産品の壁紙であれば、材料と工事を合わせて1㎡あたり1,500〜2,500円程度が目安とされ、多くの業者は最低料金を4万〜6万円程度に設定しています。実際の金額は、部屋の広さ、天井やクローゼットも張り替えるか、下地の状態、ヤニを抑える処理が要るかどうかで変わります。6畳の部屋を例にした費用の目安は、【知らないと損】6畳の壁紙クロス張替え費用|4万円以下は見積もり内容を要確認。相場と失敗しない判断基準で扱っています。

予算は、以前の張り替えのときの金額をもとにすると足りないことがあります。当店にも、賃貸ワンルームのにおいが気になる大家さんから、部屋の壁・天井・クローゼットにトイレも含めて張り替えたいというご相談をいただきましたが、概算がご予算を上回り、見送られました(兵庫県神戸市灘区:賃貸退去に伴うクロス張替えの予算オーバーのご相談)。張り替える範囲が広がるほど金額は上がるので、どこまで張り替えるかを決めてから予算を組むと、見積もりとのずれが小さくなります。

張り替える壁紙のグレードによっても費用は変わります。量産品と、ひとつ上のグレードの違いは、量産クロスと1000番クロスの違い|価格差は6畳で約1万円、部屋ごとの選び分け方で扱っています。

通常損耗を入居者の負担にする特約は、契約書に具体的に書かれているかが分かれ目

賃貸借契約に、「退去時の壁紙の張り替え費用は入居者の負担とする」といった特約を入れているケースもあります。

ガイドラインは、この種の特約について最高裁判所の判例を引用しており、通常損耗の補修費用を入居者に負担させるには、少なくとも、「賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗及び経年変化の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか」、契約書で明らかでない場合は貸主が口頭で説明して入居者が明確に認識し、合意の内容としたと認められることが必要だ、という判断を紹介しています(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」)。

特約が有効かどうかは、契約書の書き方や説明の経緯など、個別の事情によって変わります。特約をもとに入居者へ負担を求める場合や、判断に迷う場合は、弁護士や、自治体の住宅相談窓口などの専門家に相談してください。

退去が重なる2〜3月は、早めに業者の予定を押さえる

賃貸の退去と入居が集中する2〜3月は、原状回復の工事で職人の予定が埋まりやすい時期です。次の入居者の募集に間に合わせたいなら、退去の予定が分かった時点で、早めに業者に連絡しておくと安心です。年度末の入居に間に合わせたい場合は、前年の秋から年内のうちに相談しておくと、予定を押さえやすくなります。

時期による予約の取りやすさについては、壁紙・クロス張り替えに適した季節は?一年中できる理由と、避けたい2〜3月で扱っています。

張り替えの範囲は現地で確かめ、負担の切り分けは契約とガイドラインをもとに整理する

どの面が経年劣化で、どの面に入居者の故意・過失による傷があるのかは、実際に部屋を見ないと判断が難しいものです。入居者との負担の切り分けは、契約の内容とガイドラインをもとに、貸主と入居者の間で整理することになります。業者が見積もりで示せるのは、どの面をどれだけ張り替えるかと、その内訳です。当店にも、賃貸アパートのオーナー様から、入居者が退去したあとの原状回復として、張り替えの範囲を現地で相談したいというご相談をいただいたことがあります(【相談事例】奈良県磯城郡川西町:賃貸アパートの原状回復クロス張り替えのご相談)。

見積もりを取るときは、張り替えたい範囲と一緒に、「この面には入居者がつけた傷がある」「この部屋は喫煙されていた」といった事情を伝えておくと、どの面をどれだけ張り替えるかと、その内訳が分かる見積もりにしやすくなります。張り替える面と面積が分かれば、入居者の負担分を一面分まで、経過年数を考えて計算するときの材料になります。見積書でほかに確かめておきたい項目は、クロス張り替えの見積書チェックポイント7選|追加費用で後悔しないための確認事項にまとめています。

なお、入居中の方が退去前に自分で業者を手配して張り替えることもありますが、その場合は大家さんや管理会社の許可が必要です。業者を誰が手配するかによる違いは、賃貸の壁紙張り替えは大家の許可が必要?大家指定業者と入居者手配の違いを解説で扱っています。

まとめ

賃貸の退去で使われる「壁紙の耐用年数」について、国土交通省のガイドラインをもとに整理します。

  • 「壁紙の耐用年数」には、建材としての張り替えの目安(サンゲツは5〜10年、一般には10〜15年とも)と、原状回復の費用負担を決めるための「6年」の2つの意味がある
  • 経年劣化や普通に暮らしていて生じる傷みは、年数に関係なく貸主の負担。入居者の不注意などによる傷の費用を入居者に負担してもらう場合も、壁紙は6年で残存価値1円になると考えて負担割合を計算するので、入居期間が長いほど入居者の負担割合は小さくなる
  • 計算は原則として入居年数を基準にする。入居の直前に壁紙を張り替えていれば価値100%が起点、そうでなければ建物の築年数や傷み具合を勘案して起点を決める
  • ただし、6年を過ぎても、落書きなど故意・過失による傷は、直すための工事費などを入居者が負担することがある
  • 「6年」は国税庁の耐用年数表から引いた数字ではない。表に壁紙という項目は載っておらず、ガイドラインが税金の考え方を参考にして示した数字である
  • 入居者の負担は、原則として、傷をつけた箇所を含む一面分までが目安。見た目をそろえるために部屋全体を張り替えても、残りの面は貸主の負担として考える
  • 日照による変色や画鋲の穴は貸主の負担、タバコのヤニや下地ボードまで傷めたくぎ穴、落書きは入居者の負担とされる。ヤニが部屋全体に及んでいる場合は、経過年数を考慮したうえで、部屋全体の費用が入居者の負担になることがある
  • 退去が決まったら、経年劣化の分は貸主の負担として張り替えの予算を見込み、退去の予定が分かり次第、早めに業者の予定を押さえる。2〜3月は特に埋まりやすい

退去後の張り替えは、次の入居者を迎えるための準備でもあります。どこまでを張り替えるかは部屋の状態を見ながら決め、入居者に負担してもらう範囲は、契約の内容とガイドラインをもとに整理するのが確実です。張り替える範囲と内訳が分かる見積もりを取るところから始めてみてください。

入居者の退去後、どこまで張り替えるか、いくらかかるかを確かめたい大家さん・管理会社の方は、電話でご相談ください。現地調査で部屋の状態を見たうえで、張り替える範囲をご相談しながら見積もりをお出しします。見積もり・現地調査は無料です。入居中の方の退去費用のご相談は、まず大家さん・管理会社へお問い合わせください。

電話が難しい方はでもご相談いただけます。

この記事の執筆者

執筆者写真

氏名:松田郁幾
実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。

上部へスクロール