
UR賃貸住宅(独立行政法人都市再生機構が貸している賃貸住宅)の壁紙が古くなってきたとき、「家賃を払っているのだから、URに言えば張り替えてもらえるのではないか」「自分の部屋なのだから、お金を出して業者に頼めばいいのではないか」と考える方は少なくありません。UR賃貸住宅の壁紙まわりの扱いは、民間の賃貸住宅や持ち家とは違います。ただ、古くなった壁紙をあきらめる必要はありません。経年劣化で傷んだ壁紙は、居住年数に関係なく、URに申し出れば張り替えの対象になることがあります。一方で、好みの色や柄に変えたいときは自費で、決められた届け出が必要です。
UR賃貸住宅は、入居者が室内の内装に手を加えるときに、あらかじめURへ届け出て承諾を得るルール(模様替え)がある住宅です。そのうち壁紙の張替えは、手続きの軽い「簡易模様替え」に位置づけられていて、URの決めた材料・工法どおりに張り替えれば、退去のときに元へ戻さなくてよい扱いになります。修繕の分担も決まっていて、経年劣化で傷んだ壁紙はUR負担、室内での喫煙によるヤニ汚れや、結露を放置したカビ、落書きといった入居者の使い方でついた傷みは入居者負担です。
この記事を読むと、次のことが分かります。
- 経年劣化の壁紙を、居住年数に関係なくURに申し出て直してもらえること
- 好みの色・柄に変えたい、または急ぐときの「簡易模様替え」の届け出
- 最初から内装を自由に変えられる「DIY住宅」という選択肢
- 退去のとき、どこまでがUR負担で、どこからが入居者負担になるか
読み終えるころには、いま自分がまず何を、どこへ相談すればよいかがはっきりしているはずです。
ご自宅の壁紙について「この場合はどうなるのか」を確かめたいときは、電話一本でご相談いただけます。UR賃貸住宅にお住まいの方は、まず管理サービス事務所・住まいセンターへご確認ください。持ち家(戸建て・分譲マンション)にお住まいの方や、賃貸物件のオーナーの方で壁紙の張り替えを検討している場合は、無料の現地調査・お見積もりでご相談いただけます。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。
UR賃貸住宅では、経年劣化で傷んだ壁紙を、居住年数に関係なくURに申し出て直してもらえることがある

UR賃貸住宅の修繕には、入居者が費用を負担するもの(費用も入居者負担)と、URが費用を負担するもの(費用もUR負担)の区分があります。居住中の負担区分はURの「修理細目のしおり」で示されていて、障子紙・ふすま紙・畳表の張り替えや電球の交換など、しおりの表に挙げられた軽微なものが入居者負担、それ以外はUR負担とされています(出典:修理細目のしおり(令和7年10月改訂)|UR都市機構)。
壁紙(クロス)は、この入居者負担の表には入っていません。さらに同じしおりには、「畳床」「ふすま骨組み」「クロス」の修繕について、居住年数にかかわらず、入居者からの申し出に応じて対応する、と書かれています(実施までに時間がかかることがある、という断りつきです)。長く住んで壁紙が経年劣化で傷んできた場合は、まず管理サービス事務所または住まいセンターに申し出れば、UR負担の修繕として張り替えの対象になることがある、ということです。
UR負担の対象になりやすいのは「使用に支障がある傷み」
ただし、経年劣化であれば何でも張り替えてもらえるわけではありません。同じしおりでは、UR負担の項目であっても、住宅の使用に支障のない範囲の汚損・変色や、部分的なクロスの剥がれ、経年変化による軽い変色などは修繕の対象にできない、とされています。UR負担で対応する例として挙げられているのは「クロスの著しいはがれ」など、生活に支障が出ている傷みです。「少し色あせてきた」という程度では対象になりにくく、めくれや剥がれが広い範囲に及んでいる、といった状態が目安になります。
自分の使い方でついた傷み・汚れは入居者負担
一方で、入居者の故意・過失や、清掃を怠ったことによる傷み——室内での喫煙によるヤニの黄ばみ・臭い、結露を放置して広がったカビ、落書きなど——は、UR負担の修繕にはなりません。これらは入居者が費用を負担して直すもので、その場合は、URに確認したうえで入居者側で業者を手配します。
雨漏り・漏水が原因のシミや剥がれは、その原因の修繕として直る
壁紙が色あせているのではなく、雨漏りや上の階からの漏水でシミ・浮き・剥がれが出ているような場合は、その原因(屋根や外壁の防水、配管など)の修繕としてURが対応し、壁紙の傷みもあわせて直ることがあります。まず自分の壁紙の傷みが「経年劣化」なのか「別の原因による損傷」なのかを分けて考えると、申し出るときに話が通じやすくなります。
好みの色や柄に変えたい、URの対応を待てないときは、自費で「簡易模様替え」の届け出をする

URに申し出て張り替えてもらえるのは、傷んだ壁紙を元と同じような標準的なクロスに戻す修繕です。「白い壁をグレーにしたい」「アクセントになる柄を入れたい」といった好みの変更や、URの修繕を待たずに早くきれいにしたい、というときは、自費で(全額自己負担で)張り替えることになります。ただしその場合も、勝手に業者を呼んで工事することはできません。
UR賃貸住宅では、室内の改装や造作をするときは、あらかじめURへ届け出て承諾または受理を受けるルール(模様替え)があります。壁紙の張替えは、この中でも手続きの軽い「簡易模様替え」に区分されています(出典:住まいのしおり(居住のご案内)8. UR都市機構への「願出」・「届出」|UR都市機構)。
「簡易模様替え届」に図面やパンフレットを添えて届け出る
「模様替え」には、住まいセンターの審査を経て承諾を得る手続き(模様替え等承諾申請書)と、必要書類を確認して受理する簡単な手続き(簡易模様替え届)があります。壁紙の張替えは後者で、工事の内容がわかる図面やパンフレットなどを添えて「簡易模様替え届」を出し、内容を確認してもらったうえで工事に入ります。
届け出の窓口は管理サービス事務所または住まいセンターで、所定の用紙も用意されています。「居室の壁紙を自費で好みのものに張り替えたい」と具体的に伝えれば、必要な書類と進め方を案内してもらえます。
URの決めた材料・工法に沿えば、退去時に元へ戻さなくてよい
模様替えは原則として、退去のときに入居者の費用で元の状態に戻す(原状回復する)ことが条件です。ただし壁紙の張替えは、URが「原状回復義務を免除する」と定めている項目で、使う材料・仕様・施工方法がURの決めた基準に合っていれば、退去時に元へ戻さなくてよい扱いになります。
URは、要望の多い模様替えについて、承諾・受理できる工事の仕様(材料や工法など)をあらかじめ定めています。自費で張り替えるときは、この仕様に沿った材料・工法で施工することが、免除を受ける条件です。どんな材料・工法なら基準に合うかは、届け出の前に管理サービス事務所または住まいセンターで確認してください。
免除されても、退去時に汚損・破損があれば補修費用はかかる
原状回復義務が免除されるのは、あくまで「入居者が自費で張り替えたこと自体は元に戻さなくてよい」という意味です。その壁紙に、退去時点で故意・過失による傷や破れ、ヤニ汚れ、カビなどの汚損・破損がある場合は、その補修費用は入居者の負担になります。自費できれいにした壁紙も、その後の使い方しだいで退去時の請求につながる、という点は標準のクロスと変わりません。
増改築や間仕切りの変更はできない
壁紙の張替えは簡易な手続きで進められますが、UR賃貸住宅では、増改築、共用部分の模様替え、間仕切り壁の変更などは認められていません。壁紙に関連して「ついでに壁を一枚抜きたい」「板を張って下地から作り替えたい」といった話になると、簡易模様替えの範囲を超え、そもそも認められないこともあります。範囲の判断に迷うときは、工事を頼む前に窓口へ相談してください。
最初から壁紙を自由に変えられる「DIY住宅」という部屋もある
UR賃貸住宅には、入居前から「入居者が自分で内装に手を加えること」を前提にした部屋があります。「簡易模様替え」の届け出とは別枠の仕組みで、壁紙を自由に扱いたい人向けの選択肢です。
DIY住宅は、原状回復が不要で壁紙や床を変えられる
「DIY住宅(UR-DIY)」は、建物の構造部分(躯体)以外なら入居者が原則DIYでき、退去時の原状回復義務が免除される部屋です(出典:DIY住宅とは|UR賃貸住宅)。壁紙の張り替えや塗装、床材の変更などが対象になります。タイプによって手を加えられる範囲が分かれていて、躯体以外を幅広く扱える「DIY住宅」、壁紙や床など表層の改修が中心の「Petit DIY住宅」、壁面のDIYに絞った「カスタマイズUR」があります。
施工の前に、所定の用紙に図面を添えてDIYプランを申請し、URの承諾を受けることが必要です。「DIY住宅の手引き」で認められた範囲を超えた施工には、原状回復義務が発生します。タイプによっては、プランニングと施工の期間として一定期間の家賃がかからない扱いもあります(一定期間以上の入居が条件)。
MUJI×URなど、内装が刷新された部屋を選ぶ方法もある
自分で手を加えるのではなく、内装が新しくなった部屋に住みたい場合は、「MUJI×UR」のようなリノベーション住戸を選ぶ方法があります。無印良品とURが共同で団地の住戸を改装したもので、壁や床を含めて内装が刷新されています(出典:MUJI×UR|UR賃貸住宅)。
いま住んでいる一般の部屋を、あとからDIY住宅に変えることはできない
DIY住宅やMUJI×URは、入居するときに選ぶ「部屋の種類」です。すでに一般の部屋に住んでいる場合、その部屋を途中からDIY住宅の扱いに切り替えることはできません。いま住んでいる部屋で壁紙を自費で張り替えるなら、「簡易模様替え」の届け出をすることになります。自分の部屋がどの区分にあたるかは、賃貸借契約書や入居時の募集案内で確認でき、わからなければ管理サービス事務所または住まいセンターで確認できます。
退去のときにどこまでがUR負担かを知っておくと、今の判断がしやすい
「経年劣化で傷んだ壁紙はUR負担、入居者の使い方でついた傷みは入居者負担」という線引きは、退去時の原状回復でも同じ考え方です。URの修繕対象にならない程度の軽い傷みは、無理に自費で張り替えなくても、退去時にその費用を入居者が負担することはありません。逆に、その間に故意・過失による汚損を作ってしまうと、退去時に入居者負担で請求されます。この境目を知っておくと、「今、自費で動くか、様子を見るか」を判断しやすくなります。
通常の使用でついた傷みは、退去時にUR負担で直る
テレビの裏の放熱跡(電気焼け)やポスターを貼った跡(日焼け)など、普通に暮らしていて進む壁紙の傷みは、退去時に貸主(UR)の負担で復旧されます(出典:退去時における住宅の損耗等の復旧(原状回復)について|UR都市機構「住まいのしおり」)。これは国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、経年変化・通常の使用による損耗の修繕費用は賃料に含まれる(貸主負担)とされている考え方に沿ったものです(出典:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について|国土交通省)。
長年住んで、日焼けや経年変化で壁紙全体が変色しているようなケースは、その代表例です。長く住んで壁紙が古いこと自体は、入居者の落ち度ではありません。
入居者負担になるのは、故意・過失や清掃を怠ったことによる汚損
一方で、退去時に入居者の負担になるのは、故意・過失や、通常の使い方とはいえない使い方でついた損耗・キズ・汚れです。資料には、壁(クロス張り)と浴室の壁・床のお客様負担として、次のような項目が挙げられています(出典:同「住まいのしおり」退去時における住宅の損耗等の復旧について)。
- 傷、破れ
- クレヨン・マジックなどによる落書き
- タバコ等のヤニによる黄ばみ
- タバコや香辛料など、通常とはいえない使い方でついた臭い
- 浴室の壁・床の、通常の清掃を怠った汚れやカビ
これらがある場合、壁紙の張り替えや消臭、浴室の除カビ・清掃など、その傷みに応じた復旧費用を退去時に求められます。資料に挙がっていない傷み(ペットによるひっかき傷など)をどちらの負担として扱うかは、退去前にURに確かめておくと安心です。同じページの資料の説明では、「通常の清掃を怠った汚れ」とは、ゴミの撤去、掃き掃除・拭き掃除、水まわり・換気扇・レンジまわりの油汚れの除去など、日常の掃除を怠ったことで生じた汚れを指します。なお、室内での喫煙によるヤニ汚れが壁紙の内部や下地まで染み込むことがある理由と、張り替えを考える目安は、壁紙のヤニ・タバコ汚れは掃除で落ちる?張り替えに切り替える4つのサインと見積もりの確認点で解説しています。
退去まで様子を見るなら、傷みを「通常の使用」の範囲にとどめる
URの修繕対象にならない軽い傷みを、退去時の張り替えまで様子を見ると決めた場合、今できるのは、負担が増える原因を作らないことです。こまめに換気して結露とカビを防ぐ、室内でタバコを吸わない、キッチンまわりの油汚れは早めに拭く、といった日常の手入れです。結露によるカビが壁紙のどこまで影響するか、下地の防カビ処置については、壁紙のカビは張り替えだけで直る?下地の防カビ処置と費用の目安を解説で詳しく解説しています。
傷みを「通常の使用」の範囲にとどめておけば、退去時に自己負担が発生しにくくなります。
まず動くべきは、管理サービス事務所・住まいセンターへの相談
ここまで見てきたどの道を選ぶにしても、出発点は同じです。管理サービス事務所または住まいセンターに連絡して、自分の住宅と壁紙の状態を伝え、どの道が使えるかを確認することです。窓口の連絡先は、入居時に配られた書類や、UR賃貸住宅の公式サイトで確認できます。
聞くことは3つ
問い合わせのときは、次の3点を順に確認すると、話が整理できます。
- この壁紙の傷みは、URが経年劣化の修繕として直してくれる範囲に入るか(雨漏りや漏水など、別の原因で壁紙が傷んでいる場合は、その原因の修繕になることがあります)
- 好みの色や柄に自費で張り替えたい場合、簡易模様替えの届け出はどう進めるか。URの仕様に合う材料・工法はどれか
- 自費で張り替えた壁紙は、退去時にそのままでよいのか、状態によっては補修費用がかかるのか
いずれも「居室の壁紙が古くなってきた」という前提を先に伝えたうえで聞くと、担当者も答えやすくなります。やり取りの内容は、日付とあわせてメモに残しておくと、あとで手続きを進めるときや、内容を見返すときに役立ちます。
URへの確認・必要な届け出をせずに、個人の判断で業者へ発注することはできない
「UR 壁紙 張り替え」で検索すると、民間のリフォーム会社や壁紙張り替え業者のページも出てきます。ただし、UR賃貸住宅の入居者が、必要な届け出やURの仕様の確認をしないまま個人でこうした業者へ工事を発注することは、前述のとおりできません。
民間の壁紙張り替えサービスが対象にしているのは、持ち家(戸建て・分譲マンション)の所有者や、賃貸物件のオーナー・管理会社です。UR賃貸住宅にお住まいの方が個人で申し込んでも、「まずURにご確認ください」という案内になるのが実情です。UR賃貸住宅の壁紙については、業者を探すより先に、URの窓口への確認を済ませてください。
UR賃貸住宅の古い壁紙にできることは3つ、入り口は管理サービス事務所への相談
この記事で見てきたとおり、UR賃貸住宅では、経年劣化で傷んだ壁紙は、居住年数に関係なくURに申し出れば張り替えの対象になることがあります。できることは、次の3つです。
- まずURに申し出て、経年劣化の修繕として直してもらう:「著しいはがれ」など使用に支障がある傷みが対象です。色あせが軽い程度だと対象になりにくく、ヤニ・カビ・落書きなど自分の使い方でついた傷みは入居者負担になります。修繕の実施までに時間がかかることがあります。
- 好みの色・柄にしたい、または急ぐなら、自費で簡易模様替えの届け出をする:勝手に業者を入れる工事はできません。工事内容がわかる図面などを添えて「簡易模様替え届」を出し、URの仕様に沿った材料・工法で施工すれば、退去時に元へ戻す必要はありません。ただし退去時に汚損・破損があれば、その補修費用はかかります。
- 最初から内装を自由に変えられるDIY住宅という選択肢を知る:いま住んでいる一般の部屋を途中から切り替えることはできませんが、住み替えや次の入居先を考えるときの選択肢になります。
どれを選ぶ場合も、最初の一歩は管理サービス事務所または住まいセンターへの相談です。自分の住宅と壁紙の状態を伝えて、どの道が使えるかを確認するところから始めてください。民間の業者に相談するのは、URに確認して、認められる方法・仕様がはっきりしてからで十分です。
繰り返しになりますが、UR賃貸住宅の壁紙は、まず管理サービス事務所・住まいセンターへの確認が入り口です。持ち家や分譲マンションの壁紙を張り替えたい方、賃貸物件のオーナーの方は、無料の現地調査・お見積もりからお気軽にご相談ください。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。 氏名:松田郁幾この記事の執筆者

実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。



