
壁紙の張り替えを頼むなら、せっかくなら腕のいい職人さんに来てほしい。そう考えて調べているうちに、「1級技能士」「国家資格保有」といった言葉を掲げている業者を見かけ、「資格を持っている職人に頼んだほうが安心なのだろうか」「資格のない職人だと仕上がりが心配」と迷っている方もいるのではないでしょうか。
先に答えをお伝えすると、壁紙(クロス)を壁に張る仕事を対象にした国家検定は、技能検定の「表装」という職種の「壁装作業」です。合格すると「表装技能士」と名乗ることができます。名前が似ている「内装仕上げ施工技能士」は、床や壁の下地・ボードなどの作業を対象にした別の資格で、壁紙を張る作業は試験の区分に入っていません。
そして、技能士は合格者以外が「技能士」と名乗れない資格で、資格を持っていなくても壁紙の仕事をしている職人はたくさんいます。資格は経験を積んできたことの目安の一つにはなりますが、資格の有無だけで職人の腕を判断することはできません。
この記事を読むと、次のことが分かります。
- クロス職人の国家資格は何か(表装技能士の壁装作業の中身と、1級・2級の違い)
- 名前が似ている「内装仕上げ施工技能士」とはどう違うのか
- 「技能士」は名乗るための資格で、持っていなくても施工はできること
- 資格は経験の目安の一つだが、唯一の基準ではないこと
- 資格の有無より確かめておきたいこと(現地調査・見積もりでの説明のわかりやすさ、誰が実際に作業に来るか)
読み終えるころには、自分が業者を選ぶときに、資格のことをどのくらい気にすればよいかが見えてくるはずです。
資格のことも含めて、どんな職人が来るのか、何を確かめておけばよいのかを先に聞いておきたい方は、電話でお気軽にお尋ねください。見積もり・現地調査は無料です。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。
クロス職人の国家資格は「表装技能士」で、内装仕上げ施工技能士とは別

壁紙を張る職人さんの資格を調べると、いくつかの資格名が出てきます。なかでも目に入りやすいのが「内装仕上げ施工技能士」と「表装技能士」の2つです。どちらも国の技能検定の資格で、内装に関わる仕事という点は共通していますが、試験で確かめる作業の区分は別です。
技能検定は、働く人の技能を一定の基準で検定し、国として証明する国家検定制度です。職業能力開発促進法に基づいて行われ、試験は職種ごとに実技試験と学科試験があります(出典:中央職業能力開発協会「技能検定のご案内」)。どの作業がどの職種に入るかは、この制度の中で決められています。
壁紙を壁に張る仕事の国家検定は「表装」職種の壁装作業
壁紙を張る仕事を対象にしているのは、技能検定の「表装」という職種です。表装というと、掛軸や屏風、襖などを仕立てる仕事を思い浮かべる方が多いかもしれません。技能検定を実施する中央職業能力開発協会は、表装職種について「技能検定職種の『表装職種』には、壁紙などを壁下地に張る壁装も含めており」と説明しています(出典:中央職業能力開発協会「実施職種・作業内容」)。
表装職種の中には「表具作業」と「壁装作業」の2つの作業があり、壁紙の張り替えにあたるのは「壁装作業」のほうです。同じ説明によると、壁装作業で問われる内容には、採寸・割付け・裁断、材料選定、下地調整、仕上げの工法、仕上げ面の補修、積算・見積りなどが含まれています。壁紙をきれいに張るには、張る作業そのものだけでなく、張る前の下地を整える作業や、どれだけの材料が要るかを見積もる力も欠かせない、ということが試験の中身からも読み取れます。
住む側から見ても、この「下地調整」は仕上がりに直結する作業です。古い壁紙を剥がしたあとの壁には、細かな凹凸や継ぎ目の段差、画鋲の穴などが残っています。これをパテで埋めて平らに整えてから新しい壁紙を張らないと、張ったあとに凹凸や段差が表面に浮き出て見えることがあります。下地を整える作業自体はどの業者も行うのが普通ですが、パテを何回重ねるか、乾いたあとに表面を削って平らにするかといった手間のかけ方には差が出ます。どのくらいの下地処理が必要になりそうかは、現地調査で見当をつけるのが普通ですが、壁紙を剥がしてみて初めて分かる部分もあります。試験の内容に下地調整が入っているのは、壁紙の仕事が「張る」ことだけでは完結しないからだと考えると、納得しやすいのではないでしょうか。
等級は1級と2級があり、同じ説明では、1級は「高度な下地調整」や高度な仕上げ工法まで含めた高度技能者のレベル、2級は「通常の下地調整」と一般的な仕上げができる中級技能者のレベルとされています。1級の合格者には厚生労働大臣名、2級の合格者には都道府県知事名の合格証書が交付され、「技能士」と称することができます(出典:中央職業能力開発協会「技能検定のご案内」)。
業者のホームページなどで、「表装技能士(壁装作業)」のように、表装の資格名に「壁装」の語を添えた表記を見かけることもあるかもしれません。その場合は、この表装職種の壁装作業の技能検定を指していると考えられます。気になるときは、どの職種・等級の資格なのかを尋ねてみると確かです。
「内装仕上げ施工技能士」の作業区分に、壁紙を張る作業は入っていない
一方の「内装仕上げ施工」は、名前に「内装」と入っているため、壁紙の仕事も含むように見えます。たしかに、同じ説明の中でも内装仕上げ工事は「床、壁、天井の仕上げ工事の他、カーテン・ブラインド工事も含まれ」るものとして紹介されています。
ただ、内装仕上げ施工職種の1級・2級の作業区分として挙げられているのは、プラスチック系床仕上げ工事、カーペット系床仕上げ工事、木質系床仕上げ工事、鋼製下地工事、ボード仕上げ工事、化粧フィルム工事の6つです。床材を張る作業、壁や天井の下地をつくる作業、石膏ボードなどを取り付ける作業が中心で、壁紙を張る作業はこの中にありません(出典:中央職業能力開発協会「実施職種・作業内容」)。
内装仕上げ施工技能士の職人が、ふだんから壁紙の仕事もしていることは十分ありえます。ただ、内装仕上げ施工技能士の資格は、壁紙を張る技能を試験で確かめたものではありません。証明しているのは、試験の対象になった床や下地・ボードなどの作業の技能です。
この2つが混同されやすい背景として、建設業の制度の上では同じ業種に並んでいることも挙げられます。厚生労働省の技能検定の案内では、建設業法で営業所ごとに置く「専任の者」などの資格として認められる技能検定の職種の一覧があり(等級や合格後の実務経験などの条件があります)、「内装仕上げ工事業」の欄には、内装仕上げ施工と表装が、畳製作などとともに並んでいます(出典:厚生労働省「技能検定を受検するメリット」)。建設業の区分としては同じ「内装仕上げ工事業」の仲間でも、技能検定としては別の職種で、試験される作業も別だということです。インターネット上の解説でも、クロス職人の資格として挙げられる名前は一つにそろっていないので、資格名を見かけたときは、どの作業の資格なのかを分けて考えると混乱しにくくなります。
資格を持っていなくても、壁紙の施工はできる

クロス職人の資格がどれなのかが分かったところで、次に気になるのは「資格を持っていない職人に頼んでも大丈夫なのか」という点ではないでしょうか。ここでは、技能士という資格の性格と、資格が職人の腕についてどこまで教えてくれるのかを整理します。
「技能士」は名称独占の資格で、名乗れないのは名前
厚生労働省は、技能検定に合格すると「技能士」と名乗ることができるとしたうえで、「名称独占のため、技能検定の合格者以外は『技能士』と名乗ることができません」と説明しています(出典:厚生労働省「技能検定を受検するメリット」)。
ここで決められているのは、「技能士」という名前を使えるのは合格者だけ、ということです。同じページには、壁紙を張る仕事そのものを技能士に限るとは書かれていません。名称独占の資格は一般に、資格がない人が名前を名乗ることを禁じるもので、その仕事をすること自体を禁じるものではないと理解されています。つまり、表装技能士の資格を持っていない職人が壁紙を張っても、それだけで問題があるわけではない、と読むのが自然です。
この点は、資格がなければ作業そのものができない種類の資格と比べると分かりやすくなります。たとえば壁紙の張り替えでも、天井のダウンライトの脱着のように、電気工事士でなければできない作業が絡むことがあります。こうした作業は、職人の腕前とは別に資格が要るので、壁紙の職人だけでは対応できません(ダウンライトは、外さずにそのまま壁紙を張り替えるのが基本です。外す必要があるときも、壁紙の業者に相談すれば、電気工事士の段取りまで相談できることが多いものです)。一方で、壁紙を張る作業そのものは、表装技能士の資格がなくても行うことができます。天井にダウンライトがあって扱いが気になる方は、壁紙張り替えでダウンライトは外す?外さない?基本はそのまま、電気工事士が必要になる条件を解説で詳しく解説しています。
実際の現場でも、壁紙の仕事をしている職人には、技能士の資格を持っている人も、持っていない人もいます。資格を持っていないことは、壁紙を張る仕事ができないことを意味しません。
資格は実務経験の目安の一つだが、唯一の基準ではない
では、資格は何の目安になるのでしょうか。技能検定を受けるには、原則として、その職種に関する実務経験が必要です。必要な年数は、1級で7年以上、2級で2年以上とされています(職業訓練歴や学歴などによって短縮される場合があります。出典:中央職業能力開発協会「技能検定のご案内」)。そのうえで実技試験と学科試験に合格しているので、1級の表装技能士であれば、表装の仕事に一定の期間携わり、試験で求められる水準の技能と知識を持っていることの一つの裏づけになります。
1級と2級の違いも、こうした目で見ると分かりやすくなります。2級は通常の下地調整と一般的な張り方ができる中級のレベル、1級はそれに加えて高度な下地調整や難しい仕上げの工法まで求められるレベルです。ただ、等級が示しているのは、職人が試験で示した技能の水準です。その職人がふだんどんな住まいで、どんな壁紙を張っているのかは、等級からは分かりません。等級は参考にしつつ、自分の家の工事に近い経験があるかは、別に尋ねてみるとよいでしょう。
一方で、資格がその職人の今の腕前をすべて表しているわけではありません。技能検定は職人が自分で受けるかどうかを決めるもので、受けなければ資格は取れません。現場の仕事が忙しく、受検しないまま経験を積んできた職人もいます。壁紙の仕事の相談を受けていると、資格を持っていなくても腕のある職人は多いというのが実感です。
逆に、資格を持っているからといって、すべての現場で仕上がりが約束されるわけでもありません。壁紙の仕上がりは、壁の下地の状態や、選んだ壁紙の種類、部屋の形によっても変わります。資格は「経験を積み、試験で技能を確かめた人である」という目安の一つとして受け止め、それだけで頼む・頼まないを決めないのが現実的です。
もし資格の有無がどうしても気になるなら、相談のときに「伺う職人さんは、技能士の資格をお持ちですか」と尋ねてみるのも一つの方法です。答えがどちらであっても、次の章で紹介するような点もあわせて確かめておくと、判断の材料が増えます。
資格の有無より確かめておきたいこと
資格の有無だけで職人の腕を判断できないとすれば、何を見ればよいのでしょうか。壁紙の張り替えを頼む前に、相談者の側から確かめられることは、資格のほかにもあります。
現地調査・見積もりでの説明のわかりやすさを見る
一つは、現地調査や見積もりのときの説明です。下地の傷みは、多くの場合、現地調査のときに業者が見当をつけ、費用は原則として見積もりのとおりになります。それでも「剥がしてみないと分からない部分がある」と言われることはあります。そのときに、「こういう状態なら、このくらいの費用が加わる」と条件を付けて説明してくれる業者は、さまざまな現場を経験してきた目安になります。反対に、見ただけで原因を決めつけたり、何を聞いても「大丈夫です」としか答えなかったりする場合は、少し注意して話を聞いたほうがよいかもしれません。
たとえば、「下地処理は見積もりに含まれていますか」「追加の費用がかかるとしたら、どんな場合ですか」と尋ねてみてください。答えの中身だけでなく、こちらに分かる言葉でかみ砕いて説明してくれるかどうかも大事です。壁の構造に詳しくない相談者にも分かるように話してくれるか、質問にきちんと向き合ってくれるかは、対応の丁寧さを判断する材料になります。こうしたやり取りは、資格の表記だけでは分からない、その職人や業者の経験を知る手がかりになります。
見積書の書き方だけで判断しないことも大切です。下地処理の費用は、見積書に独立した行として書く業者もあれば、1㎡あたりの単価に含めている業者もあり、行の名前も「下地処理」「下地調整」「パテ処理」などさまざまです。見積書に下地処理の行が見当たらなくても、それだけで「やってくれない」とは言えません。分からないところは、紙の上で推し量るより、その場で尋ねて説明してもらうほうが確実です。下地処理の中身と、見積書での見方については、壁紙の下地処理とは?数か月後に浮きが出る理由と、見積書で確認する一言で詳しく解説しています。
現地調査のときの様子も、判断の材料になります。現地調査では、壁を手で押したときの感触、継ぎ目や角のひび、表面のカビや変色、膨らみや浮きなどを確かめることが多く、気になる箇所について「いつごろから」「何か試したか」を尋ねられることもあります。現地調査で見ていることや、その場で決めておくことは、壁紙張り替えの流れは5段階|問い合わせから完了まで、依頼する側がすることと期間の考え方で整理しています。張り替えたい壁を一緒に見ながら、どこがどういう状態で、どんな作業が必要になりそうかを話してくれるかどうかは、資格証よりも具体的に、その業者の仕事ぶりを伝えてくれます。
依頼先の種類と「誰が作業に来るか」も合わせて確かめる
もう一つは、実際に誰が作業に来るのかです。壁紙の張り替えの依頼先には、壁紙張り替え専門業者、リフォーム会社、工務店、ホームセンターなどがあり、窓口で相談に乗ってくれる人と、実際に壁紙を張る職人が別の会社の人、ということも珍しくありません。マッチングサイトを通して頼む場合も、作業をするのはサイトの運営会社ではなく出店している店舗や加盟会社で、サイトに載っている会社名や屋号だけでは工事の日に誰が来るかまでは分からないことがある点は、壁紙張り替えのマッチングサイトとは?申し込む前に確かめたい3つのポイントで紹介しています。
業者のホームページに資格保有者の名前が載っていても、その人が自分の家に来るとは限らない点には気をつけておきたいところです。資格を判断の材料にしたいなら、「実際に作業に来るのはどなたですか」とあわせて確かめておくと、資格の表記と実際の作業が結びつきます。同じように、現地調査や見積もりに来た人が、そのまま作業にも来るのかを確かめておくと、そこで受けた説明の印象を、実際に作業する職人の判断にもつなげやすくなります。依頼先の種類ごとの特徴や、見積もりのときに聞いておきたい一言は、壁紙張り替えはどこに頼む?4種類の業者の違いと失敗しない選び方で詳しく整理しています。
まとめ
クロス職人の資格について、ポイントを整理します。
- 壁紙(クロス)を壁に張る仕事を対象にした国家検定は、技能検定の「表装」職種の「壁装作業」。合格すると「表装技能士」と名乗ることができ、1級と2級がある
- 名前が似ている「内装仕上げ施工技能士」の作業区分は、床仕上げ・鋼製下地・ボード仕上げ・化粧フィルムなどで、壁紙を張る作業は入っていない。建設業の制度の上では同じ「内装仕上げ工事業」の欄に並ぶが、技能検定としては別の職種
- 「技能士」は名称独占の資格で、合格者以外は「技能士」と名乗れない。資格を持っていなくても、壁紙を張る仕事自体はできる
- 技能検定を受けるには、原則として実務経験が必要(1級で7年以上、2級で2年以上が目安)。資格は経験を積んできたことの目安の一つになるが、資格を持っていなくても腕のある職人は多く、資格の有無だけで腕は判断できない
- 資格のほかに、現地調査・見積もりでの説明がかみ砕いたものか(剥がしてみないと分からない部分があると言われたら、条件を付けて説明してくれるか)、実際に誰が作業に来るのかもあわせて確かめておく
資格の表記は、業者を選ぶときの材料の一つとして持っておき、それだけで決めないのが安心です。気になる業者が見つかったら、現地調査や見積もりの相談のときに、下地処理が含まれているか、追加の費用がかかるとしたらどんな場合か、誰が作業に来るのかを尋ね、説明のわかりやすさを確かめるところから始めてみてください。当店へのご相談でも、電話か問い合わせフォームで、気になっている点をそのままお伝えください。
どんな職人が伺うのか、下地や追加の費用はどうなりそうかなど、気になる点があれば電話でお尋ねください。当店では、資格の有無だけで職人を判断していません。張り替えたい場所と壁の状態を伺い、見積もりの前に確かめておきたい点をご案内します。見積もり・現地調査は無料です。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。
この記事の執筆者

氏名:松田郁幾
実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。



