
テレビを買い替えたのを機に、壁に掛けてしまいたい。テレビ台をなくせば部屋は広く使えますし、配線を子どもが引っ張る心配もなくなります。ただ、調べていくうちに「壁に下地が入っていないと掛けられない」という話に行き当たって、そこで手が止まった方が多いのではないでしょうか。
結論から言うと、下地は後からでも入れられます。すでに人が住んでいる家でも、壁を開けて中に合板を入れる工事はできます。ただし、どういう方法になるかは壁の造りによって変わります。
壁を開けて中に入れる方法を選んだ場合は、その面の壁紙が張り替えになります。石膏ボードを切って合板を入れ、ボードを戻し、表面をパテで整えてから仕上げる、という順番になるためです。壁紙は下地の上に張る仕上げ材なので、下地をさわれば必ず表にも手が入ります。
逆に言えば、壁紙の張り替えをいずれ考えているなら、そのタイミングで一緒にやるのが最も無駄がありません。どのみち張り替える面なら、開けることへの抵抗もなくなります。
この記事を読むと、次のことが分かります。
- なぜ下地が必要で、その下地が壁のどこに入っているのか
- 後から入れる方法が「壁の中」と「壁の上」の2通りに分かれること
- 壁紙の張り替えと同時にすると、何が重なって省けるのか
- 壁を開けずに済ませる道として、壁掛け前提で設計されたテレビという選択肢があること
- マンションで必要になる、管理組合への手続き
先にお断りしておくと、「壁をどこまで開けるか」という点については、この記事でも答えを一つに決めません。それは現地を見た大工が決めることで、壁の造りによって変わるからです。代わりに、見積もりのときに何を聞けば自分の家についての見通しが立つかをお伝えします。
ご自宅の壁がどうなっているか気になった方は、お気軽にお問い合わせください。現地調査・お見積もりは無料です。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。
落ちないかどうかは、金具だけでなく壁側の強度で決まる

壁掛けテレビで最初に気になるのは、落ちてこないかどうかだと思います。小さなお子さんがいる部屋なら、なおさらでしょう。
そこで金具の耐荷重を調べる方が多いのですが、実は見るべき場所が違います。金具がテレビの重さに耐えられるかどうかより、その金具を留めた壁が耐えられるかどうかのほうが問題になります。
石膏ボードは、何もないところにねじが効かない
住まいの室内の壁は、石膏ボードという板で作られていることがほとんどです。石膏を紙で挟んだ板で、軽くて加工しやすい反面、それ自体は重いものを支えられません。石膏ボードという材料そのものについては、石膏ボードと壁紙は何が違う?傷みは30cmが分かれ目、ボード交換は大工が必要で別途費用で詳しく解説しています。
一般社団法人 石膏ボード工業会も、次のように明記しています。
「石膏ボードが張られた壁や天井では、下地のない中空のところにくぎやねじを打っても全くききません。また、エアコン・照明器具・扇風機・スピーカなどの重量物を取り付ける場合、石膏ボードの強度だけで支えることはできません」(出典:一般社団法人 石膏ボード工業会「暮らしに役立つ知恵」)
ここに挙がっているのはエアコンや照明器具ですが、壁に固定して支え続けるという点ではテレビも同じ側に属します。そして同じ資料は、重量物を設置する場合は柱や胴縁などの下地に直接くぎやねじで固定する、としています。
石膏ボードの裏側には、骨組みの通っていない空洞の部分が広くあります。そこにねじを打っても、石膏がぼろぼろと崩れるだけで留まりません。最初はなんとか留まったように見えても、荷重がかかり続けるうちに緩んでいき、抜け落ちることがあります。そして、どこが空洞でどこに骨組みがあるかは、壁の表面を見ただけでは分かりません。
テレビの重さの4倍という目安を示すメーカーもある
では、どのくらいの強さが必要なのか。テレビメーカーの設置手順に具体的な基準があります。
ソニーの壁掛け手順(KJ-65/55X9500H、KJ-65/55X8000Hと専用の壁掛けユニットの組み合わせ)では、「取り付ける壁にはテレビの質量の4倍に耐えられる強度が必要です」と案内されています。そして続けて、「取り付ける壁の強度が不足する場合は、充分な補強をしてください」とあります(出典:ソニー「テレビを壁に取り付ける方法(KJ-65/55X9500H、KJ-65/55X8000H)」)。
これは特定の機種についての説明なので、すべてのテレビに同じ数字が当てはまるとは限りません。ただ、考え方としては参考になります。テレビ本体の重さぶんだけ耐えられればよい、という話ではないということです。
壁に掛かる力は、静かにぶら下がっているときだけのものではありません。地震で揺れたとき、掃除のときに手が当たったとき、配線を差し替えようとしてテレビを少し引いたとき。そのたびに、本体の重さを超える力が瞬間的にかかります。壁に求められるのは、そうした力にも耐えられる強度だということです。
金具を買っても、壁に留めるネジは入っていないことがある
意外に知られていないのが、壁掛け金具を買っても、壁に留めるためのネジは入っていないことがある、という点です。
たとえばハヤミ工産の壁掛金具ハミレックスMZ823の取扱説明書には、こう書かれています。
「使用するネジ類は同梱されておりません。取り付ける壁の強度や材質に合わせて別途ご用意下さい」(出典:ハヤミ工産 ハミレックス MZ823 取扱説明書)
この製品では、テレビ側に留めるネジやワッシャーは径ごとに一式そろって付属しています。それなのに、壁側のネジだけが入っていない。これは不親切なのではなく、入れようがないからです。
先ほどのソニーの手順でも同じで、別途用意するものとして「直径8mmまたは同等の4本以上のネジ」が挙げられており、壁に留めるネジは付属品に含まれていません。
壁の造りは家ごとに違います。石膏ボードの裏に木の柱がある家、軽量鉄骨の家、コンクリートに直接ボードが貼られている家。どれに留めるかでネジの種類も長さも変わるので、メーカーの側では決められません。同じ説明書には「壁の強度が弱い場所ではネジの数を増やして取り付けて下さい」という一文もありますが、どの壁がそれに当たるかの線引きまでは書かれていません。
つまり、壁側をどうするかは、最初から施工する側に委ねられています。金具の商品情報をいくら見比べても、壁側の固定方法までは決まりません。
メーカーは、取り付けを業者に任せるよう書いている
自分で付けられないか、と考える方は多いと思います。金具そのものは市販されていますし、取り付けを解説した動画もたくさんあります。
ただ、メーカー側の案内は一貫しています。先ほどのハミレックスMZ823の取扱説明書には、ベースプレートの取り付けの項に「※工事専門業者以外は取付工事を行わないで下さい」とあります。ソニーの手順にも、冒頭に「本製品の取り付けには、確実な作業が必要になります。必ず、販売店や工事店に依頼して、安全性に充分考慮して確実な取り付けを行ってください」と書かれています。
なぜこう書かれているかというと、壁掛けはネジを締めれば終わりという工事ではないからです。目の前の壁がどういう造りで、どこに何が入っていて、必要な強度を持っているか。それを見極めたうえで、壁に合った固定の仕方を選ぶ必要があります。しかも、壁の中は開けてみるまで完全には分からないので、限られた手がかりから見当をつけたうえで判断することになります。
下地は、テレビを掛けたい位置にあるとは限らない

ここまでで、一般的な壁掛け金具であれば下地に留める必要がある、ということは見えてきました。次の問題は、その下地がどこにあるかです。
一般的な下地は303mmや455mmの間隔で入っている
石膏ボードは、それ自体が壁として立っているわけではありません。裏側に木材や軽量鉄骨の骨組みがあり、そこに板を留めて壁になっています。この骨組みが下地です。
石膏ボード工業会の資料では、「一般の下地は、壁・天井裏に303mmや455mmなどの間隔で入っています」と説明されています(出典:一般社団法人 石膏ボード工業会「暮らしに役立つ知恵」)。
つまり、壁一面のどこでもねじが効くわけではありません。一定の間隔で入っている骨組みの位置でしか留められないということです。その向きや位置は壁の造りによって異なりますし、壁を見ただけではどこにあるかも分かりません。
下地に合わせると、テレビの位置のほうが決まってしまう
ここが、後から壁掛けにする方が最初につまずくところです。
テレビを掛けたい位置というのは、たいてい部屋の使い方から決まっています。ソファに座ったときに正面に来る場所、窓の光が映り込まない場所、家具の配置から自然に空いている場所。そうやって決めた位置に、都合よく下地が通っているとは限りません。
金具は左右2本の下地にまたがって留める形が多いので、テレビを掛けられる位置は、もとからある下地の位置と金具側で調整できる範囲で決まります。「15cmだけ右に寄せたい」と思っても、その位置に留める場所がなければどうにもなりません。
高さについても事情は同じです。留められる位置は壁の造りのほうで決まっているので、好きな高さに合わせられるとは限りません。
壁掛けにしたいのは、たいてい見た目と使い勝手のためです。それなのに位置を壁の都合で決めることになるのでは、本末転倒に感じられると思います。
だから「後から補強する」という話になる
この行き詰まりに対する答えが、下地を足すという考え方です。
石膏ボード工業会の資料も、そこまで書いています。「重量物を設置する場合は、柱や胴緑などの下地に直接くぎやねじで固定します。設置箇所に下地がなく、直接固定することが難しい場合は、合板などによる補強が必要です」(出典:一般社団法人 石膏ボード工業会「暮らしに役立つ知恵」。「胴緑」は原文のままの表記です)。
先ほど引用したソニーの手順にある「取り付ける壁の強度が不足する場合は、充分な補強をしてください」も、同じことを別の立場から言っています。建材の業界団体とテレビメーカーという、まったく違う立場の両者が、壁の強度が足りない場合には補強が必要だとしているわけです。
補強の考え方そのものは単純です。下地の無い範囲に板を渡し、金具を留められる範囲をその板の分だけ広げる、ということです。テレビの位置を壁に合わせるのではなく、壁のほうをテレビに合わせるということです。
ひとつ注意しておきたいのは、同じ資料が「しかもなるべく事前に処理しておくほうが、美観の上からも望ましいでしょう」と付け加えている点です。後から入れられないとは書いていません。ただ、後から入れると見た目のほうに影響が出る、と言っています。
後から入れる方法は、壁の中か、壁の上か
後から下地を足す方法は、大きく2通りに分かれます。壁の中に入れるか、壁の上に出すかです。どちらを選ぶかで、工事の範囲も、仕上がりも、壁紙が必要かどうかも変わります。
壁の中に入れるなら、その面の壁紙は張り替えになる
ひとつめは、石膏ボードを切り取って、その奥に合板を入れる方法です。骨組みに合板を留め、その上からボードを戻し、継ぎ目をパテで平らに整えて、仕上げに壁紙を張ります。このパテで面を整える工程は下地処理と呼ばれるもので、壁紙の下地処理とは?数か月後に浮きが出る理由と、見積書で確認する一言で詳しく解説しています。ただし、ここでのパテ処理は下地補強の工事にともなって出てくるものなので、通常の張り替えに含まれる下地処理とは費用の扱いが変わります。
完成したあとの壁は、板が露出しない平らな壁に仕上がります。テレビを外しても板が残って見えることはありません。見た目のうえでは、これがいちばん自然な仕上がりになります。
その代わり、壁紙は必ず必要になります。ボードを切って戻した以上、そこには継ぎ目が残ります。パテで平らにしても、壁紙を張らなければ仕上がりません。しかも、切った部分だけに壁紙を貼って済ませるのは難しくなります。壁紙には柄と方向があり、部分的に継ぐとそこに線が出て目立ちやすいためです。きれいに仕上げるなら、その面をまるごと張り替えることになります。
先ほどの「事前のほうが美観の上で望ましい」という一文は、ここを指しています。家を建てるときに入れておけば、下地は仕上げの前に入るので壁紙の話は出てきません。後から入れるとなると、仕上がっている壁に手を入れることになります。
壁の上に出すなら壁紙は要らないが、板の分だけ出っ張る
もうひとつは、今の壁を壊さず、その上から板を留めてしまう方法です。下地のある位置に板を固定し、その板にテレビの金具を留めます。
壁の上に板を留める方法なら壁を開けないので、壁紙はそのまま残ります。壁を開ける方法に比べれば、工程も抑えられます。ただし、板の厚みのぶんだけ壁から出っ張ります。テレビの裏に隠れる大きさに収めるか、いっそ見せる仕上げにするかという判断が必要になりますし、壁と一体に見せたいという希望には応えにくくなります。
配線も違ってきます。壁の中を通して隠す配線は、壁を開けるからこそできることです。壁を開けない方法を選ぶと、配線は表に出るか、モールなどで覆う形になります。
どちらが良いというものではありません。壁の造り上どちらも選べる場合は、仕上がりを優先するか、工事の範囲を抑えることを優先するかという判断になります。
どちらになるか・どこまで開けるかは、現地を見た大工の判断
ここが、この記事でいちばん正直に書いておきたいところです。
「壁をどこまで開けるのか」という質問には、一律の答えがありません。テレビの金具が当たる範囲だけを四角く開ければ済むこともあれば、下地から下地まで横に帯状に開ける必要があることもあります。壁の造り、骨組みの位置と間隔、電気配線がどこを通っているか、そして掛けたい位置と大きさによって変わります。
そして、これを判断するのは大工の仕事です。壁紙を張る職人の領分ではありませんし、壁を開ける前に外から完全に見通せるものでもありません。
インターネットで調べると「〇〇cm四方を開けます」「1面まるごと開けます」と書いてある記事が見つかりますが、それはその業者がその現場で選んだやり方です。自分の家に当てはまるとは限りません。
ですから、読む側として持っておくべきなのは答えそのものではなく、質問のほうだと考えてください。自分の家の壁がどの方法になり、どこまで開けることになるのかは、現地調査の場で聞けば工事前に分かる範囲での見通しが手に入ります。あわせて、開けてみて状況が変わる可能性があるかどうかも聞いておくと確実です。
壁紙の張り替えと同時なら、重なる手配を減らせる
ここまでを踏まえて、費用と段取りの話をします。
壁を開けるなら、どのみち壁紙は必要になる
壁の中に下地を入れる方法を選んだ時点で、その面の壁紙の張り替えは工事に含まれます。選択肢ではなく、前提です。
そう考えると、見え方が変わってきます。壁紙の張り替えをいずれやろうと思っていた部屋なら、下地補強のために発生する壁紙の費用は、いずれ払う予定だったものが前倒しになっただけです。逆に、壁紙のことをまったく考えていなかった方にとっては、想定していなかった費用が乗ることになります。
どちらの立場で見積もりを見るかによって、同じ金額の受け取り方は変わります。そして、壁紙を張り替える予定があるなら、下地補強はそのときに合わせるのがいちばん効率的です。
自分の部屋の壁紙がそろそろ替えどきなのかどうかは、壁紙の替えどきはいつ?築年数より見るべき「今の壁の状態」と見逃せない5つのサインで判断の目安を解説しています。
面積が小さくても、大工の最低料金は丸ごとかかる
もうひとつ知っておいていただきたいのが、下地補強の費用は面積に比例しない、という点です。
下地を入れる作業は大工の仕事です。大工を1人手配する以上、作業が1時間で終わっても、その日のその時間を押さえてもらうことに変わりはありません。そのため、補強する範囲が小さくても、大工の最低料金は丸ごとかかります。
「テレビ1台ぶんだから安いだろう」という見込みは、ここで外れます。むしろ範囲が小さいほど、単価としては割高に感じられるはずです。
逆に言えば、大工に来てもらう日に、ほかにも頼みたいことがあるならまとめたほうが得になります。下地の補強、傷んだ箇所の直し、建具の調整。別々の日に呼べばそのたびに最低料金がかかりますが、同じ日にまとめれば、その分の手配にかかる費用は抑えられます。
同じことは壁紙の側でも起こります。まとめるかどうかで金額がどう変わるかは、クロス張り替えで天井もやるべき?壁と同時なら追加2万円、後回しは割高になる理由で具体的に解説しています。
なお、壁紙の張り替えでも、カビや穴の周りで石膏ボードが崩れていて、ボードごと交換が必要になった場合には同じ構造の費用がかかります。工事の中身は今回とは違いますが、大工を呼ぶという点は共通です。
見積もりのときに聞いておくこと
現地調査に来てもらったら、次のことを聞いておくと見通しが立ちます。
- 壁の造り:この壁はどういう造りで、下地はどこに入っているか
- 方法:壁の中に入れる方法と上に出す方法のどちらになるか、その理由は何か
- 範囲:壁を開ける範囲はどのくらいになるか
- 壁紙:張り替えが必要になるのはどの面までか、隣の面との色の差は出るか
- 費用の区切り:大工の費用と壁紙の費用はそれぞれいくらか、まとめると何が安くなるか
- 配線:テレビの配線を壁の中に通すことはできるか
最後の色の差については補足しておきます。補強した面だけを張り替えると、隣の面との間に色の差が出ることがあります。何年か使った壁紙は日焼けや汚れで少しずつ色が変わっているので、新しい壁紙を1面だけ入れると、その面だけが浮いて見えることがあるからです。同じ品番の壁紙を使ってもこうなります。この色の変わり方については、壁紙の日焼けは掃除・漂白で戻る?ヤニとの見分け方と部分張替えで色が合わない理由で詳しく解説しています。
気になるかどうかは部屋の明るさや今の壁紙の状態によるので、現地で見てもらって判断するのが確実です。差が出そうなら、その部屋をまとめて張り替えるという選択も出てきます。
出てきた見積書をどう読めばよいかは、クロス張り替えの見積書チェックポイント7選|追加費用で後悔しないための確認事項にまとめています。
壁を開けずに済ませる道もある
ここまで工事の話をしてきましたが、そもそも壁に下地を入れない方法もあります。
壁掛けを前提に設計されたテレビという選択肢
テレビのなかには、壁に掛けることを前提に設計された製品があります。専用の金具を細いピンで壁に留める方式にすることで、大がかりな工事をせずに取り付けられるようにしたものです。
たとえばパナソニックのウォールフィットテレビがこれにあたります。公式サイトでは「付属の専用金具を細いピンで固定することにより、石こうボードが使用された壁に大掛かりな工事をせずに気軽に取り付ける事ができます」と説明されています(出典:パナソニック「ウォールフィットテレビ LW2シリーズ 安心設置」)。
通常の壁掛けが下地にねじを効かせるのに対して、こちらは細いピンを何本も斜めに打ち込んで石膏ボード自体で保持する考え方です。同じページには、取り外したあとのピン穴についても「細いピンで固定するため、設置場所を変えても壁に開いたピンの穴は目立ちにくくなっています」「気になる場合は、ホームセンター等で販売されている穴埋め材で補修すると更に目立たなくなります」と書かれています。
なお、壁に残った小さな穴を壁紙の張り替えのときにどう扱うかは、壁のビス穴があっても壁紙張替えは大丈夫?石膏ボードの状態で対応が変わる理由を解説で解説しています。張り替えを頼むのであれば、事前に自分で埋めておく必要はありません。
すでにテレビを買ってしまった方には使えない選択肢ですが、これから買い替えるところなら、テレビの選び方そのものが工事の要否を変えるということは知っておいて損がありません。
石こうボード以外の壁では、業者の工事になるか、設置できないこともある
この方式にも条件があります。
同じページの注意書きには「石こうボード以外の壁に固定する場合は、工事専門業者による工事が必要です」とあり、安全上の注意として「不安定な場所への設置、石こうボード以外の壁(吸音ボード、土壁など)、荷重に耐えらない場所の設置はおやめください」とも書かれています(「耐えらない」は原文のままの表記です)。
つまり、ピン留め方式で大がかりな工事をせずに取り付けられるのは、壁が石膏ボードの場合ということです。それ以外の壁材でも対応できる場合はありますが、業者に依頼することになりますし、吸音ボードや土壁のように設置を避けるよう案内されている壁もあります。壁材によって可否も工法も変わるので、そこから確認が要ります。自分の家の壁がどちらなのかは、壁紙が張ってある状態では見分けがつかないことも多いところです。
なお、このページには「住宅によって、壁掛け設置自体が禁止されている場合がありますので、事前に管理会社やオーナー様へご確認ください」という注意書きもあります。
マンションは、工事の前に管理規約を確認する
分譲マンションにお住まいの場合、工事そのものとは別に、管理組合への手続きが必要になることがあります。
壁の内装側は専有部分だが、工事には手続きがある
まず、自分の住戸の壁がどこまで自分のものかという話です。
国土交通省が示すマンション標準管理規約(単棟型)では、専有部分の範囲について「天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする」と定められています(出典:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」令和6年6月7日改正版)。コンクリートの構造体そのものは共用部分で、その内側の仕上げは専有部分、という区分です。
ただし、専有部分だからといって、自由に工事してよいとはなっていません。同じ規約の第17条では、専有部分の修繕等であって「共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあるもの」を行うときは、あらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けなければならない、とされています。さらに同条では、承認が要らない工事についても、業者の出入りや資機材の搬入、騒音や振動などを管理組合が把握する必要があるものは事前に届け出ることとされています。
承認と届出の二段構えになっている、ということです。
躯体に穴を開ける工事は、承認の対象になりうる
もう少し具体的な線引きもあります。
同じ標準管理規約には、区分所有者が行う工事の制限について部位ごとに整理した資料が添えられており、壁については「躯体コンクリートへの穿孔又はアンカーボルト等の金物の打込みを伴う工事」が理事会の承認を要する工事の例として挙げられています。承認の条件は「穿孔や金物の打ち込みにより躯体に悪影響を与えないこと」とされています。
マンションの壁には、コンクリートに直接ボードが貼られている造りのものがあります。この場合、ねじを留める先がコンクリートしかない、という状況も起こりえます。そこにアンカーを打つ工事であれば、この項目に当たる可能性があります。
また、同じ資料の注記には、高層マンションで住戸間の界壁が乾式工法の場合は界壁への穿孔工事を原則禁止とすることも考えられる、という記載もあります。必要な耐火性能を満たさなくなる可能性が極めて高いため、という理由です。
これらはあくまで国が示す「標準」であって、実際の規約は各マンションで定められています。自分のマンションがどうなっているかは、手元の管理規約を見るか、管理会社に聞くのが確実です。
メーカーも管理会社への確認を求めている
この点は、工事をする側だけでなく、テレビを作っている側も同じことを言っています。
前の章で引用したパナソニックの設置についての注意書きには、「住宅によって、壁掛け設置自体が禁止されている場合がありますので、事前に管理会社やオーナー様へご確認ください」とあります(出典:パナソニック「ウォールフィットテレビ LW2シリーズ 安心設置」)。大がかりな工事を伴わないピン留め方式の製品でも、管理会社やオーナーへの確認が求められているということです。
賃貸にお住まいの場合は、そもそも壁に手を入れてよいかどうかから確認が必要になります。賃貸の壁紙張り替えで大家の許可がどう関わるかは、賃貸の壁紙張り替えは大家の許可が必要?大家指定業者と入居者手配の違いを解説で解説しています。分譲であれば、確認先は管理会社か管理組合の理事会になります。
手続きに時間がかかることもあるので、業者を決めてから慌てるより、検討を始めた段階で規約を一度見ておくほうが落ち着いて進められます。
まとめ
壁掛けテレビの下地は、後からでも入れられます。すでに住んでいる家でも、壁を開けて合板を入れる工事は可能です。どういう方法になるかは、壁の造りによって変わります。
石膏ボードは何もないところにねじが効かず、一般的な壁掛け金具では下地に留めることになります。一般的な下地は303mmや455mmなどの間隔で入っているので、テレビを掛けたい位置に都合よくあるとは限りません。無ければ足せばよい、というのが補強の考え方です。
足し方は2通りあります。壁の中に入れれば板が露出しない平らな壁に仕上がりますが、その面の壁紙は張り替えになります。壁の上に板を出せば壁紙は要りませんが、板の分だけ出っ張り、配線も表に出ます。
どちらになるか、壁をどこまで開けるかは、現地を見た大工が判断することです。ここは一律には決まりません。だからこそ、現地調査の場で一つずつ確認しておいてください。
費用は面積に比例しません。大工を呼ぶ以上、範囲が小さくても最低料金は丸ごとかかります。裏を返せば、同じ日にまとめられる工事があるなら、別々に頼むより手配の費用を抑えられます。下地補強は、壁紙を張り替える予定があるならそのタイミングに合わせるのがいちばん無駄がありません。
これから買い替えるところなら、壁掛けを前提に設計されたテレビを選ぶという道もあります。ただし、石膏ボード以外の壁では業者への依頼が必要になりますし、壁材によっては設置できません。
そしてマンションであれば、工事の前に管理規約の確認を。壁の内装側は専有部分ですが、工事の内容によっては承認や届出が必要になります。
まずは、自分の家の壁に下地がどう入っているかを見てもらうところからです。壁紙の状態もあわせて見てもらえば、安全に取り付けられるか、仕上がりがどうなるか、そしてどこまでを一度にやっておくのがよいかまで判断できます。
壁紙の張り替えと合わせて下地補強もご検討でしたら、まとめてお見積もりいたします。現地調査・お見積もりは無料ですので、お気軽にご相談ください。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。 氏名:松田郁幾この記事の執筆者

実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。



