防カビ壁紙は選んで買うもの?サンゲツの量産品は掲載品全点が防カビ、メーカーは「壁紙だけでは防げない」と明記

部屋の隅の幅木ぎわに広がった黒ずみ

洗面所の壁の隅が黒ずんできた。押入れを開けたら、奥の角に点々と黒い汚れがある。拭いても、しばらくするとまた出てくる。どうせ張り替えるなら、次はカビに強い壁紙にできないか、と考えることがあります。

売り場やネットで調べると「防カビ壁紙」という言葉が出てきます。ただ、それが本当に効くのか、値段は上がるのか、どこで頼めばいいのかは、調べてもはっきりしません。

先に結論をお伝えします。少なくともサンゲツの見本帳では、防カビ壁紙は探して選ぶものではありません。量産品と呼ばれる標準的なグレードは掲載品の全点が防カビで、柄や色の選択肢が多い1000番台でも「ほとんどの商品に防かび性能があります」と書かれています。つまり、いま張り替えを考えている壁紙には、もう付いている可能性が高いということです。

では、なぜカビは出るのか。ここがこの記事の中心です。防かびの試験は「壁紙の表面にかびが生えるかどうか」を見ているもので、部屋にカビが生えないことを確かめたものではありません。そしてメーカー自身が、防カビ機能の説明のすぐ下に「かびは壁紙だけで防ぐことはできません」と書いています。

この記事を読むと、次のことが分かります。

  • サンゲツの見本帳では、防カビ壁紙が「選ぶもの」ではなく、掲載壁紙のほとんどに最初から付いていること
  • 防かびの試験が何を確かめていて、何を確かめていないか
  • サンゲツとシンコールが「壁紙だけでは防げない」と明記していること
  • 「防カビ」と「防水」は別の機能で、サンゲツとリリカラの機能区分に「防水」が無いこと
  • カビが出る側の要因が、壁紙の外側にあること
  • 張り替えのときに業者へ何を見てもらえばよいか

読み終えるころには、防カビ壁紙を探すことよりも先にやるべきことが分かるようになります。

カビが気になる場所があれば、その場所を伝えていただくだけで結構です。無料の現地調査とお見積もりで、原因の見当と張り替えの費用をお伝えします。

電話が難しい方はでもご相談いただけます。


「防カビ壁紙」は選んで買うものではなく、サンゲツの見本帳ではほとんどの商品にもう付いている

壁紙の見本帳に並ぶ機能表示と、全点に付く防カビの印

最初に、いちばん誤解されている点から整理します。サンゲツの見本帳を見るかぎり、防カビは数ある機能の中から選び取るものではありません。

量産クロスのカタログは「掲載品全点」が防カビ

サンゲツの量産クロスの見本帳「Wallcoverings 2025-2027」には、掲載商品に備わる機能が6つ並んでいます。それぞれに何点の商品が該当するかが書かれていて、撥水が100点掲載、抗菌が100点掲載、ストレッチが39点掲載、表面強度アップが73点掲載、軽量が23点掲載です。

そして、サンゲツの量産クロスの見本帳で、防カビだけが該当点数ではなく「掲載品全点」と書かれています(出典:サンゲツ「Wallcoverings 2025-2027」)。この見本帳はSP2501からSP2605までの商品を収めたもので、そのすべてに防カビが付いている、という意味です。

同じ見本帳の巻末には、品番ごとにどの機能があるかを一覧にした対照表があります。ここでも撥水・抗菌・表面強度アップ・ストレッチ・軽量は品番ごとに印を付ける列になっているのに対し、防かびだけは列がありません。代わりに表全体の見出しが「機能性(全点防かび)」となっています。

カタログの作り自体が、防かびを「品番ごとに比べて選ぶもの」として扱っていない、ということです。

これは費用の話にもつながります。少なくともこの見本帳の中では、防かびの有無だけを理由に材料費が変わることは考えにくい、ということです。もし防カビを理由に金額が上がる説明をされたら、それが何を指しているのかを確かめてみてください。

1000番台にも「ほとんどの商品に防かび性能があります」と書いてある

量産品だけの話ではありません。柄や色の選択肢が多いグレード、いわゆる1000番台の見本帳にも同じことが書かれています。

サンゲツの「FINE 2023-2026」には、かびについての説明としてこうあります。

「かびは見た目の悪さの問題だけでなく、アレルギーやぜんそくなど、病気の原因になることがありますので注意が必要です。壁紙はほとんどの商品に防かび性能がありますが、壁紙単体でかびの発生を防ぐことはできません」(出典:サンゲツ「FINE 2023-2026」)

前半と後半で、まったく違うことを言っています。前半は「ほとんどの商品に付いている」、後半は「それだけでは防げない」。このあとの章は、実はこの一文をほどいていく作業になります。

ここでは前半だけ押さえておいてください。サンゲツの現行の見本帳では、量産品でも1000番台でも防かびはほぼ標準で付いている。グレードを上げれば防カビになる、という関係ではありません。

量産品と1000番台の差は、デザインの幅や、表面にフィルムを貼るといった加工の有無にあります。カビに関して言えば、どちらのグレードにも防かび機能があります。「予算を上げれば、もっとカビに強い壁紙にできるのではないか」と考えたくなりますが、見本帳が示しているのは機能の有無までで、グレードだけで防かび性能の差を判断することはできません。

だからサンゲツとリリカラの「機能で選ぶ」ページには防かびが出てこない

これを裏側から確かめられる場所があります。サンゲツとリリカラが用意している「機能から壁紙を探す」ためのページです。

サンゲツの「機能性壁紙ガイド」は、機能を7つに分けています。キズに強い、汚れに強い、耐薬品性がある、ニオイに効果がある、耐クラック性能がある、ウイルス・アレル物質・細菌に効果がある、施工性が良い・下地が目立ちにくい、の7つです。この中に、かびに関する分類はありません(出典:サンゲツ「機能性壁紙ガイド」)。

リリカラの「壁紙機能性ガイド」も同じです。キズがつきにくい、汚れに強い、耐薬品性がある、消臭効果がある、下地のひび割れをカバー、アレルゲンの働きを抑制、ウイルス数を減少・菌の繁殖を抑制、の7分類で、やはりかびの分類はありません(出典:リリカラ「壁紙機能性ガイド」)。

ところが、リリカラの個々の商品ページを開くと、機能の欄に「トップコート 防かび」と表示されている商品があります(出典:リリカラ 商品検索)。ガイドには無いのに、商品には付いている。

矛盾しているようですが、筋は通っています。機能で絞り込むページは「その機能がある商品と、ない商品を分ける」ための道具です。サンゲツのように、ほとんどの商品に付いていれば、絞り込みの軸になりません。だから載っていない。

「防カビ壁紙はどれですか」と探しても見つからないのは、商品が少ないからではなく、サンゲツの見本帳で見たとおり、ほとんどがそうだからです。

売り場やサンプル帳で「防カビ壁紙コーナー」を見かけないのも、同じ理由です。扱いが小さいからではなく、区別する必要が薄いからだと考えられます。探しても出てこないときは、見落としを疑う前に、もう手元にある可能性を考えてみてください。

防かびの試験は「顕微鏡で見てもゼロ」を求めている

壁紙の試験片に付けたかびと、それを観察する顕微鏡

付いていることは分かりました。では、その防かびはどれくらいの効き目を保証しているのか。基準は業界団体が定めています。

かび5種類を付けて28日間観察する

壁紙工業会は、防かび壁紙の性能試験をこう定めています。

「一般的なかび(黒かび、青かび等)5種類に対して菌糸の発育状態を顕微鏡・目視にて確認します」「壁紙工業会の防かびの性能基準は『0』を有することとしています。なお、試験開始から28日経過後まで観察します」(出典:壁紙工業会「機能性壁紙の概要」)

サンゲツの見本帳にも、同じ内容が自社の試験方法として書かれています。「壁紙工業会制定 防かび壁紙性能試験に準ずる。一般的なかび(黒かび、青かび等)5種類を壁紙表面に付着させ、28日後の発育状態を顕微鏡と目視にて観察し、評価『0』の性能を有することを基準とする」。

壁紙工業会の試験は、実際にかびを付けて4週間置き、生えてくるかどうかを見るものです。中身としては素直です。

なお、この規格が実施されたのは2004年9月1日からで、もとは1996年に制定されたものです。20年以上、同じ基準で運用されています。

28日という期間には意味があります。同じ壁紙工業会の規格でも、汚れ防止は汚れを付けて24時間後、抗菌も24時間後に判定します。汚れは付いた直後から拭き取れるかどうかが問われますが、かびは胞子が付いてから菌糸が育つまでに時間がかかります。汚れのように数時間で判定できるものではないため、28日間という観察期間が設けられています。

合格は「0」。汚れ防止の「4級以上」とは数字の向きが逆

判定は6段階で表されます。

  • 0 … 肉眼および顕微鏡下でかびの発育が認められない
  • 1 … 肉眼ではかびの発育が認められないが、顕微鏡下では明らかに確認できる
  • 2 … 肉眼でかびの発育が認められ、発育部分の面積は試料の全面積の25%未満
  • 3 … 肉眼でかびの発育が認められ、発育部分の面積は試料の全面積の25%以上〜50%未満
  • 4 … 菌糸はよく発育し、発育部分の面積は、試料の全面積の50%以上
  • 5 … 菌糸の発育は激しく、試料全面を覆っている

合格は「0」だけです。肉眼で見えないだけでは足りず、顕微鏡で覗いても発育が認められないことを求めています。1番目の「肉眼では見えないが顕微鏡では確認できる」はもう不合格です。

ここで一点だけ注意があります。同じ壁紙工業会の規格でも、汚れ防止と表面強化は「4級以上」が合格で、こちらは数字が大きいほど良い評価です。防かびは「0」が合格で、数字が小さいほど良い。同じ団体の基準なのに、数字の向きが逆になっています。そもそも測っているものも、汚れが拭き取れるかと菌糸が育つかで別のものです。数字を並べただけでは、どちらが厳しいかを比べられません。

この「4級以上」のほうの話は、壁紙の汚れ防止はどこまで落ちる?規格の試験は4つの汚れだけ、油汚れ・ヤニ・手垢は対象外でまとめています。

試験しているのは「壁紙の表面にかびが生えるか」だけ

ここまでを読むと、ずいぶん踏み込んだ基準だと感じられると思います。実際、「0」しか認めない基準です。

ただし、何を確かめた基準なのかを正確に押さえておく必要があります。試験は、壁紙の試験片にかびを付着させて、その壁紙の表面で菌糸が育つかどうかを見ています。確かめているのは、壁紙という素材そのものがかびの養分になりにくいかどうかです。

部屋にカビが生えないかどうかは、試験していません。壁の裏側でどうなるかも、湿気がこもったときにどうなるかも、この試験の範囲外です。

この区別は大事なところなので、言い換えておきます。試験が答えているのは「この壁紙にかびは生えますか」であって、「この部屋にカビは生えますか」ではありません。前者に合格していることは、後者の保証になりません。

壁紙工業会は、この規定の適用範囲についてもはっきり書いています。「当工業会で規定しております『防かび壁紙性能』『汚れ防止壁紙性能』『表面強化壁紙性能』『抗菌壁紙性能』につきましては、機能性壁紙管理規定に基づき、各性能規定基準を遵守し試験した『壁紙』に対してのみに有効であり、『壁紙』以外への当規定(表示)の引用及び当規定の準拠につきましては、当工業会が承認したものでは、ありません」。

壁紙に対してのみ有効、という言葉がそのまま書かれています。壁の上から貼るシートや、塗るタイプの防カビ剤に「防カビ」と表示されていても、それがこの規格に照らした表示だとは限りません。

それでもメーカーは「壁紙だけでは防げない」と書いている

この「0」を満たした商品が、サンゲツの見本帳のほとんどを占めている。それならカビは出ないはずです。ところが、メーカー自身がそうは言っていません。

サンゲツは防カビの説明のすぐ下に注記している

先ほどの見本帳をもう一度見てみます。「防カビ 掲載品全点」という見出しがあり、「かびの発生と繁殖を抑える」という説明があり、試験方法と6段階の判定表が載っています。

その判定表の真下に、こう書かれています。

「※かびは壁紙だけで防ぐことはできません。建物の構造や室内環境に影響されます。常に換気を心がけ、風通しを良くして、湿度の上昇を抑えてください」

サンゲツは、防カビをうたったページの同じ面に、防カビの限界も書いています。1000番台の見本帳でも同じで、「壁紙はほとんどの商品に防かび性能がありますが、壁紙単体でかびの発生を防ぐことはできません」と、1つの文の中で並べています。

売る側が自分で書いている以上、これは控えめな表現ではなく、そのまま受け取るべき記述だと考えています。

商品の説明は、ふつう良いところを前に出すものです。その同じ面に「これだけでは防げません」と書くのは、書かないと誤解される、と分かっているからだと読めます。防カビという言葉が、実際の性能より広く受け取られやすいことを、メーカー側が一番よく知っているということでもあります。

シンコールも同じことを書いている

もう1社も同じです。シンコールは、壁紙のお手入れの案内の中に「かびの発生を防ぐ」という独立した項目を設けていて、その中身はこの一文だけです。

「防かび壁紙だけで、家の構造や生活環境によっては、かびの発生を防げません。常にお部屋の換気を心掛けることが大切です」(出典:シンコール「壁紙のお手入れについて」)

シンコールは「かびの発生を防ぐ」という見出しの中で、防カビ壁紙の限界と換気の必要性を説明しています。見出しを立てておきながら、防カビ壁紙だけで防げるとは書かれていません。サンゲツとシンコールが揃って同じことを言っている以上、これは言葉のあやではなく、この2社に共通する認識だと読めます。

サンゲツの見本帳が結露に1節を割いている

もうひとつ、見本帳の作りから分かることがあります。

サンゲツの1000番台の見本帳には、かびについての説明のすぐ次に「結露について」という独立した節があります。中身は「結露や過度の湿気はシミ・剥がれ・かびの原因となりますので、室内の換気や湿度調整を心がけてください」という導入に続いて、換気・除湿、通気を良くする、冬の結露、という3つの項目です。

サンゲツの見本帳が、壁紙ではなく部屋の湿度について1節を使っている。この配置そのものが、カビが壁紙の問題として閉じないことを示しています。

見本帳は、本来なら商品を選んでもらうための道具です。そこに商品の説明ではない話が入っているということは、選び方だけを伝えても足りないと判断されている、ということでもあります。カビについて調べていて、壁紙の機能の話ばかりが出てくるようであれば、探す方向がずれているのかもしれません。

「防カビ」と「防水」は別のもの。サンゲツとリリカラの機能区分に「防水」は無い

洗面所や脱衣所でカビが気になっている場合、防カビと一緒に「防水」を探している方が多くいます。ここは分けて理解しておく必要があります。

機能表示にあるのは「撥水」で「防水」は無い

結論から言うと、サンゲツとリリカラの機能区分に「防水」というものはありません。

サンゲツの機能性壁紙ガイドで水に関係する機能は「撥水」の1つだけです。リリカラも同様で、水に関わる機能は「撥水トップコート」という名前で扱われています。どちらのページにも、防水・耐水という語は出てきません。

見本帳の機能表示の凡例を見ても、並んでいるのは抗ウイルス、抗アレル、ウレタンコート、防かび、抗菌、表面強化、スーパー耐久性、消臭、吸放湿、撥水、通気性、ストレッチといった名前で、防水はありません。

「防水の壁紙はありますか」と聞かれても、少なくともこの2社の機能表示の中には見当たりません。

撥水は水をはじいて拭き取りやすくするもの

では撥水は何をする機能かというと、水を通さないことではなく、水をはじいて汚れを拭き取りやすくすることです。

サンゲツは撥水についてこう説明しています。「表面の撥水コートにより、水汚れをはじき、汚れを拭き取りやすい壁紙です」。比較の図では、撥水コートの上では水分が玉になってとどまり、一般のビニル壁紙では水滴が全体に広がる、という形で示されています。

つまり撥水が効くのは、水がかかった直後に拭き取る場面です。壁の内側に湿気がこもる状況や、結露が繰り返し起きる状況に対して働く機能ではありません。

住む側の実感で言い換えると、洗面所で顔を洗ったときに跳ねた水滴や、歯みがきの飛沫を、あとから拭き取りやすくなる機能です。壁が濡れっぱなしになる状況や、冬の朝に窓まわりが結露する状況には効きません。同じ「水」でも、表面に一時的に付く水と、空気中の湿気が冷えて水に戻る結露とでは、話がまったく別だからです。

洗面所で「防水と防カビの両方がほしい」と考えたとき、この2社の表示上、選べるのは「撥水の機能がある、防かび付きの壁紙」であって、水を通さない壁紙ではない、ということになります。

メーカーが挙げる使用場所はキッチン・トイレ・洗面廻り

リリカラは、機能ごとに「おすすめ使用場所」を挙げています。水に関わるものを拾うと、撥水トップコートは「飲食物や水汚れがつきやすいキッチン・トイレ・水廻り」、消臭と汚れ防止を兼ねたものは「水汚れや臭いが気になる洗面廻り・トイレ」となっています。

一方で、押入れやクローゼットといった収納については、同社のガイドに記載がありません。カビが気になる場所としてよく挙がるにもかかわらず、メーカーが機能と結びつけて推奨している場所には入っていない、ということです。

これは「押入れに使ってはいけない」という意味ではありません。ただ、押入れのカビを壁紙の機能で解決する発想が、リリカラのおすすめ使用場所には無い、という事実として受け取っておくとよいと思います。

押入れやクローゼットの壁紙を張り替えること自体はできます。費用の考え方はクローゼットのクロス(壁紙)張り替え費用|居室とまとめると差額2万円前後、単独だと割高になる仕組みで扱っています。

洗面所の張り替えについては、洗面所の壁紙張り替え費用はいくら?4万〜6万円の目安と洗濯機移動で変わる金額を解説が目安になります。

カビが出る側の要因は、壁紙の外にある

ここまでで、壁紙の側の話はほぼ尽きています。防かびは付いている、基準は「0」を求めている、それでも防げない。では何が原因なのか。見本帳の注意書きに、具体的な記述があります。

下地が乾いていないまま貼ると出る

サンゲツの見本帳の「選択・施工上の注意」には、こう書かれています。

「コンクリートやモルタルなどの湿式下地、およびシーラー・パテを施した箇所は十分に乾燥(水分率11%以下)させてから施工を開始してください。乾燥が不十分な場合、壁紙の変色・剥がれ・かびが発生することがあります」

乾燥の程度まで数字で示されています。裏を返せば、下地が水分率11%以下まで乾かないうちに貼るとかびが出ることがある、ということです。

これは住んでいる側では確かめようのない部分です。下地が十分に乾燥していたかどうかは、現場の段取りの中で決まります。張り替えたのに同じ場所にまたカビが出た、という場合、壁紙の性能ではなくこちらが原因のこともあります。

下地をどう整えるかという工程そのものについては、壁紙の下地処理とは?数か月後に浮きが出る理由と、見積書で確認する一言で詳しく扱っています。

とはいえ、施主の側から「何時間乾かしましたか」と確かめるのは現実的ではありません。できるのは、以前の張り替えのあとにカビが出た経験があるなら、そのことを次の業者に伝えておくことです。同じ手順を繰り返さないための材料になります。

下地の内側からの影響もある

同じ注意書きには、もう少し踏み込んだ記述もあります。

「下地および下地の内側からの影響を受けて、壁紙に変色やかびなどが発生する場合があります。石膏ボード下地の場合でも、木質構造材や断熱材等さまざまな施工環境要因で、明確な原因の特定が困難な変色が発生する可能性がありますのでご了承ください」

下地そのものだけでなく、その内側にある木材や断熱材まで要因になりうる、と書かれています。しかも「明確な原因の特定が困難」とまで添えてあります。

メーカーが自社の見本帳でここまで書くのは、それだけ壁紙の性能では引き受けられない領域だということです。壁紙を替えても、その内側が変わらなければ、同じことが起こりえます。

「明確な原因の特定が困難」という言葉は、裏を返せば、現場で見ても一つに絞りきれないことがある、という意味です。ですから業者が「見てみないと分かりません」と答えたとしても、それは必ずしも不親切な対応ではありません。むしろ、その場で断定して原因を決めつける説明のほうが気になります。

一度下地に入った菌糸は拭いても戻ることがある

シンコールは、かびが発生してしまった場合の対処についても書いています。表面だけであれば、かび取り剤でこすり取り、消毒用アルコールで拭き取るのが効果的だとしたうえで、こう続けています。

「大量に発生した場合は 専門業者にご相談ください。下地に菌糸が入り込んでいた場合、アルコールで拭き取っても再発生するおそれがあります」

拭いても戻ってくる、という経験がある場合、これに当てはまっている可能性があります。表面のかびを取ることと、下地に入ったものを断つことは別の作業です。

サンゲツの見本帳にも同趣旨の記述があり、「かびが大量に発生してしまった場合は、専門業者に相談することをおすすめします」としています。拭き取りで対応できる範囲には線があって、その先は施工の話になる、というのが各社に共通した案内です。

拭き取りに使うもの自体にも限界があります。壁紙にアルカリ電解水は使える?カビはメーカーが「落とせない」と明記、pH12.5は重曹より強いでも、この点をメーカーの記述から確認しています。

張り替えのときに何を見てもらうか

最後に、実際に張り替えを考える場合の話をします。

防カビの有無ではなく、カビが出た理由を見てもらう

ここまで見てきたとおり、防カビはサンゲツの見本帳ではほとんどの商品に付いています。ですから、見積もりの場で「防カビの壁紙にしてください」と伝えても、話はあまり前に進みません。標準で付いているものを指定しているだけになるからです。

伝えるべきなのは、機能の名前ではなく状況です。どの部屋のどこにカビが出ているのか、いつから出ているのか。それを見てもらえば、壁紙の問題なのか、下地の問題なのか、部屋の使い方の問題なのかを検討する手がかりになります。

カビについては、現地を見ないと分からないことが多い分野です。写真だけでは下地の状態までは判断できません。気になる場所があるなら、現地調査の際に必ず見てもらってください。

伝え方は難しく考えなくて大丈夫です。「洗面所のこの隅が、毎年冬になると黒くなる」という程度で十分に手がかりになります。専門的な言葉を使う必要はありませんし、原因の見当をこちらで付けておく必要もありません。

出ている場所と時期を伝える

現地で見てもらうときに、こちらから伝えておくと話が早い情報があります。

まず、出ている場所です。部屋の隅なのか、壁一面なのか、家具の裏なのか、収納の中なのか。位置によって疑う原因が変わります。

次に、時期です。一年中出ているのか、冬だけなのか、梅雨の時期だけなのか。カビが出る時期が季節に偏っているなら、結露の可能性が上がります。サンゲツの見本帳が結露に1節を割いて、冬場は室内と外気の気温差が大きく結露が発生しやすいと書いているのも、この見立てと合います。

実際にカビが気になって張り替えを検討された例として、福岡県小郡市:階段のカビが気になり壁紙張り替えを検討されたご相談があります。

そして、これまでに何をしたか。拭いたのか、市販のかび取り剤を使ったのか、以前に張り替えたのか。張り替えたのにまた出たのであれば、下地を含め、同じ場所で再発する原因を確認してもらう必要があります。

この3つは、その場で思い出しながら話すと抜けやすいものです。現地調査の前に、気になっている場所を一度見て回って、頭の中で整理しておくと伝えやすくなります。写真を撮っておけば、季節が変わって見た目が変わったときにも比べられます。

すでに出ているなら下地の状態も確認する

いま現にカビが出ている状態で張り替える場合、新しい壁紙を貼るだけでは足りないことがあります。

菌糸が下地に入り込んでいれば、その上に防かびの壁紙を貼っても、下から戻ってくることがあります。防かびの試験が確かめているのは壁紙の表面にかびが生えにくいことであって、下地から上がってくるものを止める性能ではありません。

その場合は、下地をどう処置するかが本題になります。処置の内容や費用の考え方は、壁紙の選び方とは別の話になるので、ここでは扱いません。すでにカビが出ている場合の張り替えについては、壁紙のカビは張り替えだけで直る?下地の防カビ処置と費用の目安を解説をご覧ください。

ひとつだけ言えるのは、見積もりを比べるときに「下地をどうするか」が書かれているかどうかを見てほしい、ということです。同じ面積の張り替えでも、下地の処置が入っているかどうかで内容がまったく変わります。金額だけを並べて安いほうを選ぶと、処置が入っていない見積もりを選んでしまうことがあります。

まとめ

防カビ壁紙について、業界規格とメーカーの見本帳から分かったことを整理します。

  • 少なくともサンゲツの見本帳では、防カビ壁紙は探して選ぶものではない。量産クロスの見本帳は「掲載品全点」が防カビで、1000番台にも「ほとんどの商品に防かび性能があります」と書かれている
  • だからサンゲツとリリカラの「機能から壁紙を選ぶ」ページには、かびの分類がそもそも無い。サンゲツでは、ほとんどの商品に付いているため、絞り込みの軸になっていない
  • 防かびの試験は、かび5種類を付けて28日間観察し、顕微鏡で見ても発育が認められない「0」だけが合格。汚れ防止の「4級以上」とは数字の向きが逆なので、数字だけでは厳しさを比べられない
  • ただし試験しているのは壁紙の表面にかびが生えるかどうかだけで、部屋にカビが生えないことは確かめていない
  • サンゲツとシンコールが「壁紙だけでは防げない」と明記している。サンゲツは防カビの説明の真下に注記し、結露に1節を割いている。シンコールは「かびの発生を防ぐ」という見出しの中で防カビ壁紙の限界と換気の必要性を説明している
  • 「防カビ」と「防水」は別のもので、サンゲツとリリカラの機能区分に「防水」は無い。あるのは水をはじいて拭き取りやすくする「撥水」
  • カビが出る側の要因は壁紙の外にある。下地の乾燥不足、下地の内側の木材や断熱材、結露。下地に菌糸が入っていれば、拭いても再発することがある

防カビ壁紙は、名前から受ける印象ほど選択の余地があるものではありません。サンゲツの見本帳ではほとんどの商品に最初から付いていて、その性能は「0」を求める基準で確かめられています。それでもカビが出る場合は、壁紙の性能だけでなく、試験が見ている範囲の外――下地や結露、室内の環境にも原因がある可能性があります。

カビが気になる場所があるなら、壁紙の機能を探すより先に、その場所を見てもらってください。いつ、どこに、どんな出方をしているか。それを伝えるところから、原因の切り分けが始まります。壁紙を替えれば済むのか、その前にやることがあるのかは、見てみないと決まりません。

どこにカビが出ているかを伝えていただくだけで、現地で見るべき場所が絞れます。無料の現地調査とお見積もりで、下地の状態と張り替えの費用をお伝えします。

電話が難しい方はでもご相談いただけます。

この記事の執筆者

執筆者写真

氏名:松田郁幾
実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。

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