壁紙のアスベストは見た目で分かる?1970〜1991年製が対象、張り替え前の事前調査で施主がすること

スマートフォンを手に、部屋の壁を見つめる白髪の男性

築40年を過ぎた家で、壁紙の汚れや黄ばみが気になってきた。そろそろ張り替えを考えよう、と調べ始めたところで「古い壁紙にはアスベストが含まれていることがある」という話が目に入る。うちの壁紙は大丈夫なのか。剥がしたら危ないのではないか。そもそも自分で見分けられるのか。そう不安になる方は少なくありません。

先に結論をお伝えします。壁紙の業界団体である日本壁装協会は、アスベストが混入されている可能性のある壁紙の製造期間を「昭和45(1970)年〜平成3(1991)年」としています。一方で、石綿は2006年9月から製造・使用などが禁止されており、同協会も、会員会社がいま作っている壁紙や、壁紙を貼るための糊・パテにアスベストは使われていないとしています。そして、今の壁に貼られている壁紙にアスベストが含まれているかどうかは、協会自身が「施工後の見た目では判別ができません」と書いています。

見た目で分からないものを、住んでいる人が自分で確かめる必要はありません。壁紙の張り替えを含むリフォームでは、工事の前に、施工する業者がアスベストの有無を調べること(事前調査)が法令で義務づけられています。2023年10月からは、この調査を、決められた講習を修了した人など一定の要件を満たす人が行うことになっています。

この記事を読むと、次のことが分かります。

  • 壁紙にアスベストが使われていた可能性があるのは、いつ頃作られたものか。よく見かける「2006年9月」とはどう違うのか
  • 今の壁紙にアスベストが含まれているかを、見た目で見分けられるのか。裏打紙の色は目安になるのか
  • 壁紙だけでなく、その下の下地材にも可能性があること
  • 張り替えの前に業者が行う事前調査は、誰が、何を、どこまで調べるのか
  • 施主の側で準備しておくこと、見積もりのときに聞いておくこと

読み終えるころには、「うちの壁紙は危ないのか」という不安を、一人で抱えなくてよい理由が分かるはずです。

古い家の壁紙を張り替えたいけれど、アスベストのことが気になって相談をためらっている方は、電話でお尋ねください。建物の年代や今の壁の状態を伺ったうえで、張り替えの進め方をご案内します。張り替えの見積もりと、そのための現地調査は無料です。

電話が難しい方はでもご相談いただけます。


壁紙にアスベストが使われていたのは、いつ頃作られたものか

シミと黄ばみのある古い壁紙の隣に新しい白い壁紙が張られ、脚立が置かれた壁

最初に、時期の話を整理します。ここで2つの年代が出てきて、混同されやすいところです。

アスベストが混入されている可能性のある壁紙は、1970〜1991年の製造

日本壁装協会は、2024年7月付の資料「壁紙および壁紙施工副資材におけるアスベストの含有について」で、「アスベストが混入されている可能性のある壁紙の製造期間」を「昭和45(1970)年〜平成3(1991)年迄」と示しています(出典:一般社団法人日本壁装協会「壁紙および壁紙施工副資材におけるアスベストの含有について」)。

同じ資料には、アスベスト含有の可能性がある壁紙の、当時の防火認定番号も一覧で載っています。不燃・準不燃の認定番号が11件並び、認定日は昭和45(1970)年から昭和56(1981)年にかけてのものです。認定日は製品が認定を受けた日なので、認定を受けた製品がその後も作られていれば、製造の時期はそれより後まで続きます。上の製造期間が1991年まであるのと、認定日が1981年までなのは、この違いによるものと読めます。うち2件には「一部商品のみ該当」という注記があり、該当する商品は国土交通省・経済産業省の「石綿(アスベスト)含有建材データベース」で確認するよう案内されています(出典:同上)。

つまり、1970〜1991年に作られたすべての壁紙にアスベストが入っていたわけではありません。防火の認定を受けた一部の製品に使われていた可能性がある、というのが協会の示している範囲です。ただ、住んでいる側からは、自分の家の壁紙がどの認定番号の製品なのかを知る手段がほとんどありません。この点は次の章で詳しく見ます。

「2006年9月」は、建材全般の話

アスベストについて調べると、「2006年9月より前に建てられた建物は注意」という説明もよく見かけます。これは厚生労働省が発注者・施主向けに書いている内容で、石綿(アスベスト)は「2006年(平成18年)9月から製造・輸入・使用などが禁止されていますが、それ以前に着工した建築物等には防火・保温・断熱等の目的で石綿が使用されている可能性があります」とされています(出典:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「発注者・施主向けページ」)。

この2つの年代は、矛盾しているわけではありません。対象が違います。

  • 2006年9月:石綿の製造・使用などが全面的に禁止された時期。対象は壁紙に限らず、断熱材・吹き付け材・屋根材・下地のボードなど、建材全般
  • 1970〜1991年:日本壁装協会が示す、壁紙という製品にアスベストが混入されている可能性のある製造期間

壁紙そのものに限って言えば、協会が示す期間は2006年よりずっと早く終わっています。一方で、建物全体で見れば、2006年9月より前に着工した建物には、壁紙以外の建材にアスベストが使われている可能性が残ります。「うちは1991年より後に張り替えているから、何も心配いらない」とは言い切れない理由がここにあります。壁紙の下にある下地材の話は、あとの章で扱います。

これから貼る壁紙と糊には使われていない

これから張り替える側の心配にも答えておきます。まず、石綿は前の見出しで見たとおり、2006年9月から製造・輸入・使用などが禁止されています。そのうえで日本壁装協会は、「現在、当協会会員会社が製造している壁紙や壁紙施工副資材にアスベストは使用されておりません」と書いています(出典:一般社団法人日本壁装協会「壁紙および壁紙施工副資材におけるアスベストの含有について」)。

「壁紙施工副資材」とは、壁紙を貼るときに使う材料のことで、協会は具体的に「壁紙施工用でん粉系接着剤」「合成樹脂系接着剤」「壁紙施工用シーラー」「壁紙施工用パテ」を挙げています。これらについては、「現在に至るまでアスベストが含まれていないことを、会員会社からの情報提供により確認をしています」とされています(出典:同上)。

法令による禁止に加えて、業界団体も自分たちの製品について確認している、ということです。ここで言えるのは、張り替えで新しく貼る壁紙や糊が、アスベストの心配を持ち込むものではない、ということです。心配の対象になるのは、いま壁に貼られている古い壁紙と、その下の下地のほうです。

自分の家に当てはめるときは、3つの年を分けて考える

ここまでの話を、自分の家に当てはめてみます。たとえば、1980年頃に建ったマンションに長く住み続けている場合を考えます。

分けて考えたいのは、次の3つの年です。

  • 建物が着工した年:2006年9月より前なら、建物のどこかに石綿を含む建材が使われている可能性がある(厚生労働省の説明)
  • 今の壁紙が貼られた年:1970〜1991年の製造であれば、協会の示す期間に重なる
  • これから張り替える年:石綿の使用が禁止された後の製品なので、新しく貼る壁紙と糊は心配の対象にならない

1980年頃に建ったマンションで、建てたときの壁紙のままであれば、1つめと2つめの両方に当てはまります。途中で一度張り替えていれば、2つめは張り替えた年しだいで外れるかもしれませんが、1つめは変わりません。購入前に前の持ち主が張り替えていたかどうかは、住んでいる人にも分からないことがあります。

こうして分けてみると、年代だけではアスベストが含まれているかどうかを確定できないことが分かります。反対に、年代が当てはまるからといって、必ずアスベストが含まれているわけでもありません。年代で分かるのは「可能性があるかどうか」までで、「含まれているかどうか」は別の方法で確かめる話になります。その方法を、次の章で見ていきます。

自分の家の壁紙にアスベストが含まれているか、見た目で分かるか

スイッチのある部屋の壁に向けられた虫眼鏡

検索でよく調べられているのが「見分け方」です。結論から言うと、住んでいる人が見た目で見分ける方法はありません。その理由を、協会の資料に沿って見ていきます。

施工後の見た目では判別できない

日本壁装協会は、アスベスト含有の判別について次のように書いています。「通常、判別には商品名や商品番号の特定が必要になります。しかし、壁紙の場合、施工後の見た目では判別ができません」(出典:一般社団法人日本壁装協会「壁紙および壁紙施工副資材におけるアスベストの含有について」)。

壁紙は、貼ってしまえば表面の柄しか見えません。商品名も品番も、壁の上からは読み取れません。建てた当時の図面や仕様書に品番が残っていれば手がかりになりますが、築40年を超える家では、そうした書類が手元に残っていないことも多いでしょう。仮に書類があっても、途中で一度張り替えていれば、今の壁紙は書類とは別のものです。

もう一つ、築年数だけでも判断できません。1970年代に建った家でも、その後に張り替えていれば、今の壁紙は1991年より後の製品かもしれません。逆に、建てたときのまま一度も張り替えていない壁もあります。住んでいる人にとって、いつ貼られた壁紙なのかを推測する手がかりは記憶や書類に限られますが、それだけで含まれているかどうかは確定できない、というのが実情です。

裏打紙がグレーなら可能性がある。ただしグレー以外でも否定できない

協会の資料には、注意点として次の記述があります。「裏打紙がグレー色の場合はアスベスト紙の可能性があります」。そして、この一文には「グレー色以外が、非含有ということではありません」という注記が付いています(出典:同上)。

裏打紙とは、壁紙の裏側にある紙の層のことです。つまり、裏がグレーなら可能性がある、しかし、裏がグレーでないからといってアスベストが入っていないとは言えない、ということです。裏打紙の色は「可能性がある」側の手がかりにはなっても、「無い」と判断する材料にはなりません。

この話を読むと、壁紙の端をめくって裏の色を見てみたくなるかもしれません。ですが、自分で壁紙を剥がして確かめることはお勧めしません。理由は2つあります。1つは、上の注記のとおり、色を見ても「無い」とは判断できないので、確かめた結果が行動の決め手にならないこと。もう1つは、アスベストが含まれている可能性のある材料を、調査の前に自分で剥がしたり切ったりすること自体が、避けたほうがよい行為だからです。含まれているかどうかが分からない段階では、そのままにしておき、調査する人に任せるのが順番です。

防火のラベルは目印にならない

古い家の壁紙には、防火性能を示す小さなラベルが貼られていることがあります。これをアスベストの目印だと考える方もいますが、協会ははっきり否定しています。「防火施工管理ラベルは防火性能を証明するもので、アスベスト含有と直接の関係はありません」(出典:一般社団法人日本壁装協会「壁紙および壁紙施工副資材におけるアスベストの含有について」)。

防火のラベルがあるから危ない、ないから安心、のどちらも成り立ちません。見た目で拾える手がかりは、ここでも結論につながりません。

協会が挙げている、判別のための3つの方法

では、どうやって確かめるのか。協会は「現場の状況に応じた、ご対応をお願いいたします」としたうえで、参考例として次の3つを挙げています(出典:同上)。

  • 壁紙の成分分析によるアスベスト含有の判別(分析方法はJIS A 1481-1(層別分析)を推奨)
  • 当該現場のみなし工事での作業実施
  • 壁紙製造会社あるいは壁紙販売会社のホームページ等を参照

1つめは、壁紙の一部を採って、アスベストが含まれているかを分析する方法です。分析の方法まで規格で指定されていることからも分かるとおり、専門の分析機関に依頼する作業で、住んでいる人が自分で行うものではありません。

2つめの「みなし工事」は、分析をせずに、アスベストが含まれているものとみなして、それに見合った方法で工事を進めることを指しています。分析の結果を待たずに、はじめから慎重な側の扱いで作業する、という考え方です。

3つめは、商品名や品番が分かっている場合の方法です。協会は別の箇所で「商品名、商品番号、製造会社、販売会社等が明確な場合は、そちらへ直接お問い合わせください」とも書いています(出典:同上)。とはいえ、先に見たとおり、築年数の古い家では品番が分からないことのほうが多いはずです。

どの方法を取るかを検討するのは、工事を行う業者や、後で見る要件を満たした調査者です。なお協会自身は、「壁紙および壁紙施工副資材にアスベストが含有しているか否かの判断や証明書発行等の業務は行っておりません」と明記しています(出典:同上)。協会に問い合わせれば答えが出る、というものでもありません。

壁紙だけでなく、下地にもアスベストの可能性がある

ここまでは壁紙そのものの話でした。張り替えで見落とされやすいのが、壁紙の下にある下地材です。

協会が挙げている下地材

日本壁装協会は、同じ資料の中で下地にも触れています。「また、壁紙の下地基材として、石綿スレート板、石綿フレキシブルボード、石綿ケイ酸カルシウム板、その他繊維混入セメント板類、石膏ボードなど、アスベスト含有建材が使用されている場合があります」(出典:一般社団法人日本壁装協会「壁紙および壁紙施工副資材におけるアスベストの含有について」)。

壁紙は、壁の表面を仕上げる薄い材料です。その下には、石膏ボードやセメント系の板といった下地材があり、これが壁そのものを形づくっています。協会は、石膏ボードなどの下地材にもアスベスト含有建材が使われている場合がある、と書いています。

張り替えでは、下地に手を加えることもある

壁紙の張り替えは、表面の壁紙を剥がして新しいものを貼るだけの工事に見えるかもしれません。実際には、古い壁紙を剥がしたあと、下地の傷みや段差をパテで埋める、部分的に傷んだボードを補修する、といった作業が入ることがあります。剥がすときに下地の表面が一緒にめくれることもあります。古い壁紙を剥がしたあとに下地をどう整えるのかは、壁紙の下地処理とは?数か月後に浮きが出る理由と、見積書で確認する一言で詳しく扱っています。

そのため、アスベストの心配は壁紙だけでは終わりません。先ほどの「2006年9月」の話がここで効いてきます。壁紙が1991年より後のものでも、2006年9月より前に着工した建物であれば、下地の建材にアスベストが使われている可能性は残ります。

この点も、住んでいる人が壁の表面から確かめられるものではありません。下地が何でできているかは、壁紙を剥がしてみないと分からないことも多く、同じ家の中でも、面ごとに下地が違うことがあります。住まいの壁でよく使われている石膏ボードがどんな材料で、場所によって下地がどう違うのかは、石膏ボードと壁紙は何が違う?傷みは30cmが分かれ目、ボード交換は大工が必要で別途費用で解説しています。ここでも、確かめるのは工事を行う側の仕事になります。

和室の京壁や綿壁のような塗り壁をクロスに変える場合は、壁の表面を削り落とす「掻き落とし」や、塗り壁を撤去する工事になることもあります。こうした工事でアスベストの事前調査をどう行うかを業者に確認しておく点は、京壁の壁紙張り替えはそのまま貼れる?4つの対応方法の費用とリスク、追加料金が出やすい条件を解説と綿壁の壁紙張り替えはそのまま貼ると危険?4つの対応方法の費用とリスク、追加費用の条件を解説でも触れています。

張り替えの前の「事前調査」は、法令で義務づけられている

ここからは、実際に張り替えるときに何が行われるかの話です。見た目で判別できない以上、誰かが調べる必要があります。その役割は、法令で工事を行う側に割り当てられています。

規模の大小にかかわらず、工事にかかわるすべての材料が対象

厚生労働省は、改修・リフォームを行う業者向けのページで、次のように説明しています。「解体・改修工事を行う際には、その規模の大小にかかわらず工事前に解体・改修作業に係る部分の全ての材料について、石綿(アスベスト)含有の有無の事前調査を行う必要があります」(出典:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「改修・リフォーム業者のみなさまへ」)。

同じページでは、規制の対象になる改修工事として建築物の模様替・修繕が挙げられ、そこには戸建て住宅や、アパート・マンションの住戸部分のリフォームも含まれると明記されています(出典:同上)。一戸建てでも、分譲マンションの自分の住戸でも、リフォームであれば対象に入る、ということです。

ポイントは「規模の大小にかかわらず」と「全ての材料について」の2つです。部屋一つの張り替えだから調査はいらない、ということにはなりません。そして調べる範囲は、壁紙だけではなく、その工事で手を加える部分の材料すべてです。前の章で見た下地材も、ここに含まれます。

調べ方も決まっています。厚生労働省は、工事の対象となる全ての材料について「設計図書等の文書と目視で調査する」と説明しています(出典:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「改正石綿則のポイント」)。書類で分からなければ、先に見た分析やみなし工事といった方法で扱いを決めることになります。

調査するのは、要件を満たした調査者

調べる人にも要件があります。厚生労働省によれば、「建築物の事前調査は、厚生労働大臣が定める講習を修了した者等が行う必要があります」とされ、これは令和5年(2023年)10月からの義務です(出典:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「改正石綿則のポイント」)。改修・リフォーム業者向けのページでも、事前調査は「建築物石綿含有建材調査者などの一定の要件を満たす者が行う必要があります」と書かれています(出典:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「改修・リフォーム業者のみなさまへ」)。

つまり、事前調査は、知識のある人が決められた手順で行うものになっています。住んでいる人が自分で壁紙の裏を見て判断する、という形は、この仕組みのどこにも出てきません。施主が自分で判別しなくてよいのは、法令が調べる役割を工事を行う側に割り当てているからです。

結果は記録として残り、一定規模以上は行政に報告される

調査の結果にも決まりがあります。厚生労働省は、事前調査の結果について「記録を作成して3年間保存するとともに、作業場所に備え付け、概要を労働者に見やすい箇所に掲示する必要があります」と説明しています(出典:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「改修・リフォーム業者のみなさまへ」)。張り替えの工事中に、調査結果の概要が掲示されているのを見かけることがあるのは、このためです。

また、一定規模以上の工事では、調査結果を行政に報告する仕組みもあります。環境省によれば、建築物の改造・補修であれば、請負代金の合計額が100万円以上の工事が報告の対象で、元請業者などが都道府県等に報告します。報告は原則として電子システムから行います(出典:環境省「石綿事前調査結果の報告について」)。

工事の金額が報告の基準に満たない場合もあります。ただし、報告の対象にならない工事でも、事前調査そのものが不要になるわけではありません。報告は一定規模以上に限られ、調査は規模にかかわらず行う、という関係です。

施主の側で準備しておくこと、聞いておくこと

最後に、張り替えを相談する側として、何をしておけばよいかをまとめます。調査そのものは業者の仕事ですが、施主にも関われることがあります。

自分で剥がして確かめない

繰り返しになりますが、見積もりの前に、壁紙の端をめくったり、一部を剥がしたりして確かめる必要はありません。裏打紙の色を見ても「アスベストが無い」とは判断できず、確かめるための分析は専門の機関が行うものです。

むしろ、気になる箇所があるなら、そのままの状態で現地調査のときに伝えてください。すでに剥がれかけている箇所、破れて下地が見えている箇所があれば、それも調査する人にとって大事な情報になります。

図面や書類があれば、渡せるようにしておく

厚生労働省は、発注者・施主に向けて、事前調査が適切に行われるよう「石綿の有無を確認するうえで有用な情報(設計図書、建築確認申請の副本等)を施工業者に提供する」ことを求めています(出典:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「発注者・施主向けページ」)。

設計図書とは、建物の図面や仕様書のことです。マンションであれば、購入時にもらった図面集やパンフレット、管理組合が保管している竣工図書に、内装の仕様が書かれていることがあります。一戸建てなら、建てたときの建築確認の書類や、ハウスメーカーから受け取った仕様書が該当します。途中でリフォームをしていれば、そのときの見積書や工事の記録も手がかりになります。

もっとも、築40年を超える家で、こうした書類がすべて揃っていることは多くありません。見つからなければ、それで構いません。「書類はない」と伝えれば足ります。図面などの書類が見つからなくても、事前調査は目視などで行われます。探す手間をかける前に、まず相談して、どんな書類があると役に立つかを聞いてみるのでも十分です。

調査の費用は、見積もりのときに確認する

気になるのは費用だと思います。厚生労働省は、発注者・施主に対して、施工業者への配慮として「事前調査の費用及び石綿が使用されていることが明らかになった場合における石綿除去等工事に必要な費用を適正に負担する」ことを挙げています(出典:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「発注者・施主向けページ」)。

つまり、事前調査を行うのは業者ですが、事前調査の費用は、工事を頼む側が適正に負担するよう求められています。同じページには、事前調査の費用の項目例として「書面調査」「現地調査」「裏面確認調査」「分析調査」「総合調査報告書」「諸経費(交通費他)」が挙げられています(出典:同上)。書類を確かめる、現地で見る、必要なら裏側や成分まで調べる、結果を報告書にまとめる、という流れのそれぞれに手間がかかる、ということです。なお、ここでの「現地調査」は、アスベストの有無を確かめるための調査のことで、張り替えの見積もりを出すために部屋を見に来てもらう現地調査とは別のものです。

どの項目がどこまで必要になるかは、建物の年代、図面の有無、分析が必要かどうか、張り替える範囲によって変わります。そのため、この記事で一つの金額を示すことはできません。

大事なのは、見積もりの段階で確認しておくことです。厚生労働省も同じページで、適正な工事業者を選ぶために、工事費用に事前調査費が計上されているか、石綿の調査を行う資格(建築物石綿含有建材調査者など)を持っているかを確認すること、事前調査の終了後に調査結果の報告書の提出を求めることを挙げています(出典:同上)。これを張り替えの場面に置き換えると、現地調査の際に次のように聞けば足ります。

  • この家の張り替えでは、アスベストの事前調査をどのように行いますか。調査はどなたが担当しますか
  • その調査の費用は、見積もりに含まれていますか。別にかかる場合は、どのくらいですか
  • 調査が終わったら、結果を書面でもらえますか
  • 調査の結果、アスベストが含まれていた(または含まれているものとして扱う)場合、工事の進め方と費用はどう変わりますか

答えの中身と同じくらい、答え方にも目を向けてください。事前調査が必要な理由や、分析するのか、みなし工事にするのかといった進め方を、かみ砕いて説明してくれるかどうかは、業者を見るうえでの一つの材料になります。アスベストの調査費以外にも、見積書で追加費用につながりやすい項目をどう確かめるかは、クロス張り替えの見積書チェックポイント7選|追加費用で後悔しないための確認事項にまとめています。

健康面の不安は、公的な情報で確かめる

「これまで古い壁紙のある部屋で暮らしてきたけれど、大丈夫だったのか」という不安を持つ方もいると思います。健康への影響については、この記事では扱いません。リフォームの立場から正確に答えられる話ではないためです。厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイトには、石綿に関する公的な情報がまとめられています。健康面で気になることがあれば、公的な情報を確認したうえで、必要に応じて医療機関に相談してください。

まとめ

壁紙とアスベストについて、日本壁装協会と厚生労働省・環境省の公開情報から分かったことを整理します。

  • 日本壁装協会が示す、アスベストが混入されている可能性のある壁紙の製造期間は、昭和45(1970)年〜平成3(1991)年。当時の防火認定品の一部が該当する
  • 「2006年9月」は、石綿の製造・使用などが全面的に禁止された時期で、壁紙に限らない建材全般の話。壁紙が新しくても、下地の建材に可能性が残ることがある
  • 石綿は2006年9月から製造・使用などが禁止されており、協会も会員会社の壁紙と、糊・シーラー・パテといった副資材にアスベストは使われていないとしている。これから貼る材料は心配の対象にならない
  • 今の壁紙にアスベストが含まれているかは、施工後の見た目では判別できない。裏打紙がグレーなら可能性はあるが、グレー以外でも否定はできない。防火のラベルは関係がない
  • リフォームでは、規模の大小にかかわらず、工事にかかわる全ての材料について、一定の要件を満たす調査者による事前調査が義務づけられている。結果は記録され、一定規模以上は行政に報告される
  • 施主は、自分で剥がして確かめる必要はない。図面や書類があれば渡し、調査の進め方と費用を見積もりの段階で確認する

「うちの壁紙は大丈夫か」という問いに、見た目だけで答えられる人はいません。だからこそ、法令は調べる役割を工事を行う側に割り当てています。張り替えを考えているなら、アスベストのことを理由に相談をためらう必要はありません。気になっていることをそのまま伝えて、調査の進め方と費用を確かめるところから始めてください。

築年数の古い家で壁紙の張り替えを考えていて、アスベストの事前調査のことも含めて確認したい方は、電話でご相談ください。現地調査でお部屋の状態を見たうえで、張り替えの見積もりに何が含まれるかをお伝えします。張り替えの見積もりと、そのための現地調査は無料です。アスベストの事前調査に費用がかかるかどうかは、見積もりの段階で確認できます。

電話が難しい方はでもご相談いただけます。

この記事の執筆者

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氏名:松田郁幾
実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。

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