
マンションで上の階から水が漏れてきて、天井や壁の壁紙が濡れた、乾いたあとに茶色いシミが残った。こうしたとき、まず気になるのは「直す費用は誰が持つのか」ではないでしょうか。自分は何もしていないのに自己負担になるのでは、上の階の方や管理組合とのやり取りで揉めたくない、と不安になる方もいると思います。
先に結論をお伝えします。上の階からの水漏れで傷んだ壁紙を直す費用の候補は、「自分の火災保険」「上の階の方の個人賠償責任保険」「管理組合の保険」の3つです。ただし、どれが実際に使えるかは、水がどこから来たのか(上の階の部屋の設備か、マンション全体で使う共用部分の配管か)と、誰かに賠償の責任があるかどうかで変わり、最後に決めるのはそれぞれの保険会社です。「管理組合の保険があるから大丈夫」とも言い切れません。東京海上日動火災保険の管理組合向けの保険では、共用部分が原因の事故の賠償を補償する特約でも、排水に起因する賠償責任は保険金を支払わないと定められています。
張り替えは、水の入り口が直り、壁紙の下の石膏ボードまで乾いてから進めるのが順番です。原因や責任の判断を自分で決めつけず、管理会社・管理組合や保険会社に確認の連絡を入れながら、並行して張り替えの見積もりを取っておくと、どの保険で手続きすることになっても話を進めやすくなります。
この記事を読むと、次のことが分かります。
- 水が入ってきた「場所」で、候補になる保険がどう変わるか(自分の火災保険、上の階の方の個人賠償責任保険、管理組合の保険)と、専有部分・共用部分の考え方
- 「管理組合の保険があるから大丈夫」とは言えない理由(保険の対象は共用部分であること、排水に起因する賠償責任を支払わない特約の例、居住者の賠償をまとめて補償する特約もあること)
- 原因や責任がまだはっきりしない間にしておきたいこと(被害の広がりを抑える、管理会社・管理組合への連絡と止水・原因確認の依頼、写真、保険会社への連絡、張り替え業者に聞けること)
- 張り替えを「乾かしてから」進める理由と、管理組合への届け出の確認、下地まで傷んでいた場合やシミがにじみ出る場合の考え方
- 保険の対象外で自己負担になった場合の、張り替え費用の考え方
上の階からの水漏れで傷んだ壁紙を張り替えるといくらかかるのか、管理会社や保険会社への連絡と並行して確かめておきたい方は、電話でお気軽にお尋ねください。傷んだ場所と状況を伺い、現地調査で壁を見たうえで見積もりをお出しします。見積もり・現地調査は無料です。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。
水が入ってきた「場所」で、候補になる保険が変わる

上の階からの水漏れと一口に言っても、水の出どころはいくつか考えられます。上の階の部屋の洗濯機や浴室、キッチンまわりの配管から漏れた場合もあれば、マンション全体で使っている配管から漏れた場合もあります。どこから来た水なのかによって、候補になる保険が変わります。
その前提になるのが、分譲マンションの「専有部分」と「共用部分」という分け方です。国土交通省が管理規約づくりの参考として示している「マンション標準管理規約」では、住戸の天井・床・壁は「躯体部分を除く部分を専有部分とする」とされています(出典:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」令和7年改正)。コンクリートの構造そのものは共用部分で、その内側に貼られている壁紙は、各住戸の持ち物である専有部分の側に入る、ということです。
配管についても、同じ標準管理規約の共用部分の一覧に、「給水管については、本管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配管継手及び立て管」と書かれています。また、各住戸の専用の設備のうち、共用部分の中にある部分以外のものは専有部分とする、とされています(出典:同上)。おおまかに言えば、マンション全体で使う本管や立て管は共用部分、そこから先で各住戸だけが使う配管は、共用部分の中にある部分を除いて専有部分の側、という区分です。各住戸だけが使う配管でも、どこを通っているかによって扱いが変わることがある、ということです。
ただし、標準管理規約は、国が「管理組合が、各マンションの実態に応じて、管理規約を制定、変更する際の参考として」作成しているものです(出典:同上)。実際の境目は、自分のマンションの管理規約で決まります。ここでは標準管理規約の考え方を手がかりに、候補になる3つの保険を順に見ていきます。1つの水漏れで、自分の保険と相手側の保険の両方が候補になることもあります。
自分の火災保険は、上の階が原因でも候補になる
まず確かめたいのが、自分で入っている火災保険です。火災保険は、火事だけでなく、契約している補償の範囲で、水漏れによる建物の損害も補償の対象にしていることがあります。
東京海上日動火災保険は、「給排水設備事故の水濡れ等」について、「給排水設備に生じた事故または被保険者以外の者が占有する戸室で生じた事故に伴う漏水、放水等による水濡れ、水圧等によって保険の対象に生じた損害」と説明しています(出典:東京海上日動火災保険「【火災保険】「給排水設備事故の水濡れ等」とは何ですか?」)。自分の部屋の給水管や排水管のトラブルだけでなく、ほかの人が使っている部屋(上の階の部屋など)で起きた事故で水が漏れてきた場合も、この説明に含まれています。
つまり、自分の火災保険は「原因が自分の部屋にあるときだけの保険」ではありません。建物(自分の部屋の内装を含む)を保険の対象にしていて、水濡れの補償が付いている契約であれば、上の階からの水漏れで傷んだ壁紙も、補償の対象になる可能性があります。ただし、ここで紹介したのは1社の案内で、補償の範囲は保険会社や契約によって違います。自分の契約で対象になるかは、保険会社か代理店に確かめてください。
上の階の方に賠償の責任があるなら、その方の個人賠償責任保険が候補
上の階の方が洗濯機のホースを外したままにしていた、浴槽の水をあふれさせた、といったように、上の階の部屋の側に原因があり、上の階の方に法律上の賠償の責任がある場合は、上の階の方が入っている個人賠償責任保険が候補になります。
ここで知っておきたいのは、上の階の方の「火災保険」そのものでは、水漏れを受けた側の部屋の損害は補償されないことがある、という点です。損保ジャパンは、分譲マンションで自分の専有部分から漏水させて、ほかの戸室に損害を与えた場合について、「いいえ、他の戸室へ漏水させた場合、火災保険では相手の方へ補償されません。」と答えています。そのうえで、「ただし、お客さまに法律上の損害賠償義務があり、個人賠償責任特約をオプションでセットしていただいている場合には補償されます。」としています(出典:損保ジャパン「分譲マンションなどの共同住宅で、自分の専有部分から漏水させてしまい、他の戸室に損害を与えた場合の費用は、火災保険で補償されますか?」)。
この回答には、条件が2つ入っています。1つは、上の階の方に法律上の損害賠償義務があること。もう1つは、個人賠償責任特約をオプションで付けていることです。上の階の方がこの特約を付けていなければ、この形では補償されません。また、ここで紹介したのは損保ジャパンの火災保険(「THE すまいの保険」)の案内で、ほかの保険会社でも同じ扱いとは限りません。
上の階の方に責任があるかどうかは、水漏れの原因がどこにあったかによって決まっていきます。原因の確認は管理会社や管理組合に相談しながら進めることになり、賠償の責任がどこまであるかは、それぞれの保険会社とのやり取りの中で確かめられていきます。壁紙の見た目だけで「上の階の方のせいだ」と決めつけず、まずは原因の確認を待つのが、揉めごとを避ける近道です。
共用部分(立て管など)が原因なら、管理組合が責任を問われることがある
水漏れの原因が、マンション全体で使う立て管や本管など、共用部分の配管にあった場合は、話が変わります。標準管理規約では、「敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。」とされています(出典:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」令和7年改正)。
共用部分の管理は管理組合の役目なので、共用部分の配管が原因で部屋が傷んだ場合は、管理組合が責任を問われることがあります。その場合に関わってくるのが、管理組合が入っている保険です。ただし、次の見出しで説明するとおり、管理組合の保険でどこまでまかなえるかは、契約している特約の内容によって違います。
「管理組合の保険があるから大丈夫」とは言えない理由

分譲マンションの管理組合が、マンションの建物を対象にした保険に入っていることがあります。そのため、「水漏れなら管理組合の保険で直してもらえる」と考える方もいるかもしれません。ですが、管理組合の保険は、各住戸の壁紙の損害を何でもまかなう保険ではありません。ここでは、東京海上日動火災保険の管理組合向けの保険「マンション管理組合のための住まいの保険」の約款を例に見ていきます。1社の例なので、ほかの保険会社や、管理組合ごとの契約内容によって扱いが違う可能性があることを、先にお断りしておきます。
管理組合の保険が対象にしているのは、建物の共用部分
この保険の普通保険約款では、保険の対象について「日本国内に所在する保険証券記載の建物の共用部分または共用部分に収容される区分所有者共有の動産とします。」と定められています(出典:東京海上日動火災保険「マンション管理組合のための住まいの保険 ご契約のしおり」2026年10月1日以降始期用)。
管理組合の保険の対象そのものは共用部分で、各住戸の専有部分は入っていない、ということです。前の見出しで見たとおり、壁紙は専有部分の側に入るので、上の階からの水漏れで自分の部屋の壁紙が傷んでも、それだけで管理組合の保険の対象になるわけではありません。管理組合の保険が関わるのは、管理組合が付けている賠償の特約を通してで、次に見るように、共用部分が原因の事故で管理組合の側が負う賠償を補償する特約と、居住者の賠償をまとめて補償する特約があります。
共用部分が原因の事故の賠償を補償する特約でも、「排水」に起因するものは支払わない例がある
同じしおりには、「建物管理賠償責任補償特約」という特約が載っています。この特約は、保険証券にこの特約を適用することが記載されている場合に適用されるもので、共用部分に起因する偶然な事故によって他人の財物を損壊し、管理組合などの被保険者が法律上の損害賠償責任を負った場合に、保険金を支払うとされています(出典:東京海上日動火災保険「マンション管理組合のための住まいの保険 ご契約のしおり」2026年10月1日以降始期用)。共用部分の配管が原因で自分の部屋が傷んだときに、関わってきそうな特約です。
ところが、この特約の「保険金をお支払いしない場合」の条には、支払わない損害賠償責任の1つとして「排水又は排気(*4)に起因する損害賠償責任」が挙げられています。注記の(*4)は「排気には、煙を含みます。」です(出典:同上)。つまり東京海上日動火災保険の例では、共用部分の排水管からの水漏れの賠償は、管理組合の賠償の特約でも対象外になりうる、ということです。実際の水漏れがこの「排水に起因する」に当たるかどうかは、保険会社が判断します。
ここで気をつけたいのは、この条が挙げているのは「排水」に起因する賠償責任だという点です。給水管の事故まで同じように除くとは書かれていません。水漏れの原因が排水管か給水管かで扱いが変わりうるので、「管理組合の保険では水漏れは出ない」と一律に受け取るのも正確ではありません。どちらにしても、原因の確認が先になります。
管理組合が、居住者の賠償をまとめて補償する特約を付けていることもある
同じしおりには、もう1つ、「個人賠償責任補償特約(包括契約用)」という特約も載っています。こちらも保険証券に記載がある場合に適用されるもので、居住用の戸室の所有、使用または管理に起因する偶然な事故や、居住している方の日常生活に起因する偶然な事故で、他人の財物を損壊し、居住者などが法律上の損害賠償責任を負った場合に、保険金を支払うとされています(出典:同上)。
管理組合がこの特約を付けていれば、上の階の方が自分で個人賠償責任保険に入っていなくても、管理組合の保険の特約で上の階の方の賠償がまかなわれる場合がある、ということです。反対に、付けていなければ、この形では補償されません。
このように、管理組合の保険でどこまでまかなえるかは、どの特約を付けているかと、水漏れの原因が何だったかの組み合わせで変わります。管理組合がどの保険に入り、どの特約を付けているかは、住んでいる人からは見えにくいものです。水漏れが起きたら、管理会社か管理組合に「管理組合の保険で関係しそうなものはあるか」も一緒に聞いておくと、話が早くなります。
原因や責任がまだはっきりしない間に、しておきたいこと
水漏れに気づいた時点では、原因がどこにあるのか、誰の保険で直すことになるのかは、まだ分からないことがあります。その間に急いで張り替えてしまうと、あとで原因や損害の状況を確かめにくくなります。
被害の広がりを抑え、管理会社・管理組合に連絡する
最初にするのは、被害の広がりを抑えることです。天井や壁から水が垂れているなら、真下の家具や家電を移し、受けられる容器やタオルで床への広がりを抑えます。上の階から来ている水は、自分の部屋の側では止められません。水漏れが続いているなら、すぐに管理会社か管理組合に連絡して、止水と、上の階の部屋や共用部分の配管の確認を依頼します。上の階の方と直接話せる関係でも、原因の確認は管理会社を通して進めるほうが、あとのやり取りが整理しやすくなります。
連絡するときは、いつ気づいたか、どの部屋のどのあたりが濡れているか、今も水が出ているか、を伝えられるようにしておくと話が早く進みます。
濡れた箇所の写真を残す
次に、濡れた箇所やシミの写真を残しておきます。濡れている天井や壁を近くから撮った写真に加えて、部屋全体のどのあたりかが分かる写真があると、あとで保険会社に状況を伝えやすくなります。シミは時間がたつと広がったり色が変わったりすることがあるので、気づいた時点で撮っておくと安心です。
自分の保険会社・代理店にも連絡しておく
原因が上の階や共用部分にありそうでも、自分の火災保険の保険会社か代理店にも連絡しておきます。前の見出しで見たとおり、自分の火災保険は上の階が原因の水漏れでも候補になることがあり、どの保険で手続きするかは、保険会社と相談しながら決めていくことになるからです。
保険証券を手元に出し、建物(自分の部屋の内装)が保険の対象に入っているか、水濡れの補償が付いているか、免責金額(自己負担額)がいくらに設定されているかを確かめておくと、相談がスムーズです。修理費用が大きくない場合は、免責金額の設定によっては保険金が出ないこともあります。分からないところは、そのまま保険会社や代理店に聞けば大丈夫です。保険金の請求には期限も定められているので、原因の確認を待つ間も、連絡は後回しにしないほうが安心です。写真の撮り方、保険証券で確かめておきたいこと、請求の期限、保険会社に連絡してから保険金を受け取るまでの流れは、壁紙の張り替えに火災保険は使える?水漏れ・うっかりした破損が対象になる条件と、保険料・申請の流れで詳しく説明しています。
原因の判断は管理会社・保険会社に任せ、張り替え業者に聞くのは範囲と費用
水漏れで傷んだ壁紙を見てもらうと、張り替え業者に「これは上の階のせいですか」「共用部分の配管が原因ですか」と聞きたくなるかもしれません。ですが、水漏れの原因が専有部分にあるのか共用部分にあるのか、誰に賠償の責任があるのかを判断するのは、管理会社や管理組合、保険会社の領分で、張り替え業者が決められることではありません。
張り替え業者が答えられるのは、どこまで張り替えることになるか、下地まで傷んでいそうか、費用がいくらくらいになるか、といった張り替えの側のことです。張り替えの範囲と費用が分かっていれば、保険会社に相談するときの資料にもなるので、原因の確認を待つ間に並行して見積もりを取っておくと、やり取りを進めやすくなります。見積書にどんな項目が必要かは、保険会社によって違うことがあるので、手続きする保険会社に確かめてください。見積もりを頼むときに「上の階からの水漏れで、保険の手続きを考えている」と伝えておくと、必要な写真や見積書の書き方についても相談しやすくなります。
一方で、張り替えの工事そのものは、原因の確認と保険会社の確認が済むまで待つほうが安心です。先に張り替えてしまうと、傷んだ壁紙はもう残らず、損害の状況を確かめにくくなります。
張り替えは「乾かしてから」が順番
原因の確認と保険会社の確認が済んだら、張り替えに向けて、修理が終わったか、下地が乾いたかも確かめていきます。水漏れのあとの張り替えには、急がないほうがよい理由があります。
水の入り口が直ってから張り替える
まず前提になるのが、水の入り口が直っていることです。上の階の配管や設備、共用部分の配管の修理が終わる前に新しい壁紙を貼っても、また水が回れば同じ場所にシミが出ます。張り替えの日程は、修理が終わったことを管理会社などに確かめてから決めるのが安全です。
日程を決めるときは、管理組合への届け出も確かめておきます。分譲マンションでは、住戸の中の内装工事でも管理組合への届け出を求めていることがあり、その扱いはマンションによって違います。届け出が要らないマンションもあれば、承認が要るマンションもあり、承認が要る場合はそのぶん日程に余裕を見ておく必要があります。届け出をするのは住んでいる人(施主)で、業者は書類の記入などを手伝う立場です。水漏れの連絡のついでに、張り替えの届け出が必要かも管理会社に聞いておくと、日程を組みやすくなります。マンションでの届け出や工事の日程の考え方は、マンションの壁紙張り替え費用はいくら?3LDKで20万〜34万円前後、間取り別の目安と費用の決まり方で扱っています。
下地の石膏ボードまで濡れていたら、乾くのを待つ
水漏れでは、壁紙の表面だけでなく、その下の石膏ボードまで水を吸っていることがあります。表面が乾いて見えても、ボードの中に水分が残ったまま新しい壁紙を貼ると、あとからシミが浮き出てきたり、カビが出たりする原因になることがあります。急いで張り替えて失敗しないためにも、下地がしっかり乾くのを待ってから張り替えるのが順番です。
乾いたあとも、ボードが水を吸ってふやけたり、もろくなったりしていれば、補修や交換が必要になります。壁を指で押したときにやわらかく沈む、表面が波打っている、といった様子があれば、下地まで傷んでいる可能性があります。
もう1つ気をつけたいのが、下地の表面に残った水の跡が、新しい壁紙ににじみ出てくることがある点です。水の跡が残っている壁を張り替えるときは、見積もりの段階で「シミが浮いてこないような下地の処理は入りますか」「その処理で費用は加わりますか」と聞いておくと安心です。シミの原因の見分け方や、水の跡が新しい壁紙ににじみ出る理由については、壁紙のシミの原因は?雨漏り・結露・カビ・ヤニの見分け方と、張り替えの前にすべきことで扱っています。
下地の傷みと費用は、見積もりの段階で確かめる
下地の傷みは、多くの場合、現地調査のときに業者が見当をつけられます。下地の補修を含めた張り替えの費用は、原則として見積もりのとおりで、施工の前に伝えられるものです。ただ、水を吸った範囲によっては、古い壁紙を剥がしてみないと分からない部分が残ることもあります。現地調査で「剥がしてみないと分からない」と言われたときは、「傷んでいた場合、追加でどのくらいかかりそうか」の目安を、剥がす前に聞いておくと安心です。保険の手続きをしているなら、その可能性も保険会社に伝えておくと、あとから費用が変わったときの行き違いを防ぎやすくなります。
小さな凹凸や継ぎ目の段差をパテで整える程度なら、張り替えの費用に含まれることが多いものです。水を吸ってふやけた部分はパテで埋められないことがあり、範囲が小さければ壁紙の職人がプレートやメッシュで塞げる場合もありますが、その場合は補修の分の費用が加わります。範囲が広くなると大工の手配が必要になり、大工の費用が別にかかります。どのくらいの範囲が分かれ目になるのかは、石膏ボードと壁紙は何が違う?傷みは30cmが分かれ目、ボード交換は大工が必要で別途費用で扱っています。
保険の対象外・自己負担になった場合の費用の考え方
原因を確かめた結果、どの保険の対象にもならなかった、自分の火災保険で免責金額(自己負担額)を下回って保険金が出なかった、ということもあります。ただ、保険が使えないことと、誰が費用を持つかは別の話です。上の階の方や管理組合に賠償の責任がある場合は、保険が使えなくても、費用の扱いはその相手との話し合いになります。どこまでを誰が持つかは、管理会社や管理組合、保険会社に相談しながら決めていくことになります。そのうえで、自分で費用を持って張り替えることになった場合の考え方を見ておきます。
一般的な価格帯の量産品の壁紙であれば、材料と工事を合わせて1㎡あたり1,500〜2,500円程度が目安です。また、職人が現場に来て、養生し、道具を出して片付けるまでの手間は、張り替える範囲が小さくてもあまり変わらないため、多くの業者は最低料金を4万〜6万円程度に設定しています。水漏れのシミが天井の一角や壁1面だけでも、この最低料金がかかることが多いと考えておくとよいでしょう。1㎡あたりの単価に何が含まれ、下地の補修のように何が別の項目になるかは、壁紙張り替え費用の内訳とは?㎡単価1,500〜2,500円に含まれるもの・別途になるもの、見積書の言葉を整理で整理しています。
壁紙は幅約90cmのロールを貼り継いでいくので、張り替えは壁や天井の面で区切った1面単位が基本です。シミのある部分だけを張り替える方法もありますが、継ぎ目の位置で区切るため最低でもロール1枚分になり、新しい壁紙と周りの古い壁紙の色の差も目立ちやすくなります。シミが広がっている場合や、周りの壁紙も古くなっている場合は、面ごと張り替えるほうが仕上がりはそろいます。部分的な張り替えが最低1枚分になる理由と、1面の張り替えと比べたときの費用や色の注意点は、壁紙の部分張り替えはできる?最低1枚分になる理由と、1面張り替えと比べた費用・色の注意点で扱っています。
気になっている箇所がほかにもあれば、まとめて見積もってもらうと、1箇所あたりの負担を小さくしやすくなります。
まとめ:原因を決めつけず、確認の連絡と並行して見積もりを取る
- 上の階からの水漏れで傷んだ壁紙を直す費用の候補は、自分の火災保険、上の階の方の個人賠償責任保険、管理組合の保険の3つ。どれが使えるかは、水の出どころと賠償の責任の有無で変わり、最後に決めるのは保険会社
- 標準管理規約では、住戸の天井・床・壁は躯体部分を除く部分が専有部分で、壁紙は専有部分の側。マンション全体で使う本管や立て管は共用部分。実際の境目は、自分のマンションの管理規約で決まる
- 自分の火災保険は、建物(部屋の内装)を保険の対象にしていて水濡れの補償が付いていれば、上の階が原因の水漏れでも候補になりうる(東京海上日動火災保険の案内)
- 上の階の方の火災保険そのものでは、水漏れを受けた側の損害は補償されないことがある。上の階の方に法律上の賠償の責任があり、個人賠償責任特約を付けていれば補償される(損保ジャパンの案内)
- 東京海上日動火災保険の管理組合向けの保険では、保険の対象は共用部分。共用部分に起因する事故の賠償を補償する特約でも、排水に起因する賠償責任は支払わない(実際の水漏れがこれに当たるかは保険会社が判断する)。一方で、居住者の賠償をまとめて補償する特約もある。1社の例で、管理組合ごとの契約内容で変わる
- 被害の広がりを抑え、管理会社・管理組合に連絡して止水と原因の確認を依頼し、写真を残し、自分の保険会社にも連絡する。原因や責任の判断は管理会社・保険会社に任せ、張り替え業者に聞くのは範囲と費用
- 見積もりは並行して取ってよいが、張り替えの工事は原因と保険会社の確認が済んでから。水の入り口が直り、石膏ボードまで乾いてから張り替える。管理組合への届け出が要るかも確かめる。下地の傷み・シミのにじみ出しへの処理と費用は見積もりの段階で確かめ、剥がすまで分からない部分があると言われたら、追加の目安を剥がす前に聞く
- 保険が使えないことと、誰が費用を持つかは別の話。自分で費用を持つことになった場合は、量産品で1㎡あたり1,500〜2,500円程度、多くの業者は最低料金を4万〜6万円程度に設定している
上の階からの水漏れは、自分に落ち度がなくても、原因の確認や保険のやり取りに時間がかかることがあります。だからこそ、原因を自分で決めつけず、管理会社・管理組合や保険会社に確認の連絡を入れながら、張り替えの見積もりを並行して取っておくと、どの保険で手続きすることになっても話を進めやすくなります。張り替えの見積もりが必要になったら、電話か問い合わせフォームで、傷んだ場所と水漏れの状況をお聞かせください。
水漏れで傷んだ壁紙をどこまで張り替えることになるかは、実際に壁を見てお伝えするのがいちばん確実です。管理会社や保険会社への連絡と並行して、傷んだ場所と状況を電話でお聞かせください。現地調査で確認できる範囲を見たうえで、張り替えの範囲と、下地の補修が必要になった場合の費用も含めて見積もりをお出しします。水漏れの原因や責任、保険の対象になるかどうかの判断は、管理会社・管理組合や保険会社が行いますので、手続きの進め方はそちらにご確認ください。見積もり・現地調査は無料です。
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この記事の執筆者

氏名:松田郁幾
実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。



