壁紙は断熱できる?市販の断熱シートの効果とデメリットを解説

壁紙の断熱について、腕を組んで寒そうにしている男性のイラスト

冬場、窓際やリビングの壁がひんやりして、暖房をつけてもなかなか部屋が温まらない。壁紙や断熱シートを変えれば少しは違うのだろうか——そう感じたことはありませんか。

結論から言うと、市販の断熱シートやいわゆる「断熱壁紙」を壁に貼っても、断熱材を使ったリフォームや窓の断熱改修と同じレベルの効果は期待できません。得られるのは、窓際や北側の壁のひんやり感がやわらぐ、結露が多少軽くなる、といった補助的な効果にとどまり、しかもその効果の程度は製品や貼る場所によって差があります。

この記事を読むと、次のことが分かります。

  • サンゲツ・リリカラといった壁紙メーカーの機能性ラインナップに、そもそも「断熱」というカテゴリが存在しないこと
  • 市販の断熱シートで実際に見込める効果と、その限界
  • 断熱シートを貼るときに知っておきたいデメリット(カビ・賃貸での原状回復・見た目の凹凸)
  • 本気で寒さ対策をしたいときに検討すべき、断熱シートより効果の見込める選択肢

読み終えるころには、「断熱シートに何を期待してよいか」「それでは足りないと感じたら次に何を調べればよいか」がはっきりしているはずです。

断熱シートの限界を踏まえたうえで、持ち家の壁紙も含めた本格的なリフォームを検討したくなったら、無料の現地調査でご自宅の状態を確認することもできます。

電話が難しい方はでもご相談いただけます。


壁紙(クロス)に断熱機能を持たせる製品はほとんどない

壁紙のサンプル帳と、断熱機能がないことを示す禁止マークのイラスト

「断熱壁紙」という言葉から、キズや汚れに強い壁紙のように、断熱性能を備えた壁紙という商品がメーカーから出ているのではと想像するかもしれません。しかし、国内の壁紙メーカーを見る限り、その想像には無理があります。

サンゲツ・リリカラの機能性壁紙に「断熱」はない

壁紙最大手のサンゲツは、キズに強い、汚れに強い、ニオイに効果がある、ウイルス・アレル物質・細菌に効果がある、といった機能ごとに壁紙を分類した「機能性壁紙ガイド」を公式サイトで公開していますが、このラインナップに断熱や保温の項目は含まれていません(出典:サンゲツ「機能性壁紙ガイド」)。もう一社の大手であるリリカラの「壁紙機能性ガイド」でも、キズ・汚れ・消臭・下地のひび割れカバー・アレルゲン抑制といった機能は掲載されているものの、断熱・保温にあたる項目は見当たりません(出典:リリカラ「壁紙機能性ガイド」)。

2社ともに壁紙の機能を細かく分類したページを用意しているにもかかわらず、断熱という切り口自体が存在しないということは、壁紙(クロス)そのものに断熱性能を持たせるという発想が、現時点の壁紙業界では主流の商品企画になっていないことを示しています。

「断熱壁紙」の実態は、壁紙に貼り足す副資材であることが多い

一方で、「断熱壁紙」「断熱シート」という名称の商品はホームセンターや100円ショップ、ニトリなどで実際に販売されています。ただしこれらの多くは、壁紙メーカーが作る内装材としての壁紙(クロス)とは別の商品カテゴリです。発泡ポリエチレンやアルミ蒸着フィルムなどでできた薄いシートを、既存の壁紙の上から貼り足す、いわば「後付けの副資材」という位置づけになります。

つまり「壁紙を断熱仕様のものに変える」というよりは、「今ある壁紙の上に、断熱をうたう別の素材を重ねる」というのが実態に近い言い方です。

市販の断熱シートで得られる効果とその限界

薄い断熱シートと厚い断熱材の断面を比較したイラスト

断熱シートを壁に貼ることで、まったく何も変わらないというわけではありません。ただし、そこで得られる効果と、断熱材や窓の断熱改修による効果とでは、レベルがかなり違います。

期待できるのは「ひんやり感の緩和」「結露の軽減」程度

発泡ポリエチレンやアルミ蒸着フィルムでできた断熱シートは、壁の表面に薄い空気層を作ることで、触れたときのひんやり感をやわらげたり、壁の表面温度と室内の空気の温度差を多少縮めたりする効果が期待できます。この温度差が縮まることで、結露が多少軽くなることもあります。

冬場に窓際やリビングの外壁に面した壁がひんやりする、といった体感の不快感を軽くしたい、というレベルであれば、断熱シートは試してみる価値のある選択肢です。

断熱材・窓の断熱改修と比べると、効果は限定的

「部屋全体が暖かくなる」「暖房費がはっきり下がる」というレベルの断熱効果を期待するなら、断熱シートだけでは力不足です。市販の断熱シートは厚みが数ミリ程度であるのに対し、住宅の断熱材として使われるグラスウールなどは厚みが数センチ単位あり、そもそも断熱の仕組みとしての規模が違います。

また、住宅の熱損失では特に窓(開口部)の影響が大きいとされています。環境省は、既存住宅における「熱損失が大きい窓」の断熱性能を高めるための改修を支援する事業を実施しています(出典:環境省「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業」)。国がわざわざ窓に絞った支援事業を用意しているのは、それだけ窓からの熱の出入りが住宅全体の断熱性能に与える影響が大きいためです。

壁の表面に薄いシートを一枚足すだけの対策と、窓そのものを断熱性能の高いものに交換する・内窓を追加するといった対策とでは、住宅全体の温度環境に与えるインパクトの大きさが違う、という点は押さえておく必要があります。

断熱シートを貼るときに知っておきたいデメリット・注意点

結露の逃げ場がなくなり、シートの裏側でカビが発生することがある

断熱シートは壁と空気の間に薄い層を作る性質上、正しく使えば結露を軽減する効果が期待できる一方、使い方や場所によっては逆効果になることもあります。もともと結露しやすい壁(窓のない北側の壁、収納の奥など)にシートを貼ると、シートと壁紙の間に湿気がこもり、目に見えないところでカビが発生することがあります。

これは断熱シートに限らず、気密性の高いシートやパネル類全般に共通する注意点です。結露が気になる場所ほど、貼りっぱなしにせず、ときどき換気をして湿気を逃がす、シートの裏側の状態を定期的に確認する、といった手入れとセットで考える必要があります。カビが下地まで及んでしまった場合の張り替えや、防カビ処置・費用の目安については、壁紙のカビは張り替えだけで直る?下地の防カビ処置と費用の目安を解説で詳しく解説しています。

賃貸では、粘着跡や壁紙へのダメージ、原状回復に注意

賃貸住宅の場合、断熱シートをどう貼るかによって、退去時の原状回復に影響することがあります。両面テープや強力な粘着シールで直接壁紙に貼り付けるタイプは、剥がすときに壁紙の表面が一緒にめくれたり、粘着剤の跡が残ったりすることがあります。

このような損傷が「経年劣化」ではなく「入居者の使用による損耗」とみなされると、退去時の原状回復費用として請求される可能性があります。賃貸で断熱シートを使う場合は、跡が残りにくいと明記されたタイプを選ぶ、目立たない場所で試し貼りをしてから本格的に使う、といった対応をおすすめします。

見た目の凹凸感、コンセント・スイッチまわりの施工のしにくさ

断熱シートは壁紙に比べて厚みがあるため、貼った部分だけ壁の表面に段差や凹凸が生じ、見た目の違和感につながることがあります。特に部屋の一面だけ、あるいは一部分だけに貼ると、貼った箇所と貼っていない箇所の境目が目立ちやすくなります。

また、コンセントやスイッチのプレート周りは、シートを合わせてカットする手間がかかります。電源まわりの作業に不安がある場合は、無理に自分で手を加えず、その部分だけ避けて貼る、あるいは詳しい人に相談する、といった選択肢もあります。

本格的に寒さ対策をしたいなら次に検討すべきこと

窓の断熱改修という選択肢

住宅全体の断熱性能を本気で上げたいなら、まず候補になるのは窓の断熱改修です。既存の窓の内側にもう一つ窓を追加する「内窓」の設置は、既存の窓枠を壊さずに施工でき、断熱の効果が期待できる方法として知られています。環境省は、こうした窓の断熱改修に対する補助金制度(先進的窓リノベ事業)を実施しており、対象となる工事や条件は年度ごとに見直されるため、興味があれば最新の実施状況を確認してみるとよいでしょう(出典:環境省「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業」)。

ただし内窓の設置には工事費用がかかり、断熱シートのように今すぐ試せるものではありません。賃貸住宅の場合は、壁紙の張り替え以上に建物への変更をともなうため、まず貸主や管理会社に工事の可否を確認する必要があります。

床・天井や壁自体の断熱リフォームという選択肢

窓以外にも、床下や天井裏に断熱材を入れる、壁の内部に断熱材を追加するといったリフォームがあります。床下・天井裏や壁の内部に断熱材を追加する工事は、壁紙の表面に薄いシートを足す対策とは異なり、住宅の構造部分に手を加えるため、断熱効果は大きく見込める一方、工事の規模や費用も大きくなります。持ち家で、内装のリフォームとあわせて断熱まで本格的に見直したいという場合には、こうした選択肢も検討の対象になります。

断熱シートは「注意点を踏まえて選ぶ」補助策、本格的な対策は別に考える

ここまで見てきたとおり、市販の断熱シートや「断熱壁紙」は、貼るだけで手軽に試せる一方、断熱材や窓の断熱改修と同じレベルの効果は期待できません。得られる効果は製品や貼る場所によって差があり、ひんやり感の緩和や結露の軽減が見込める場面もあれば、貼り方によってはシートの裏側に湿気がこもり、かえってカビの原因になることもあります。

まずは今の悩みが「窓際の冷え込みを少し和らげたい」という範囲であれば、カビ・原状回復・見た目といった注意点を踏まえたうえで、断熱シートを検討する価値はあります。一方で「部屋全体を暖かくしたい」「暖房費を大きく下げたい」というレベルを求めるなら、断熱シートでは力不足で、窓の断熱改修や壁・床・天井の断熱リフォームといった、より規模の大きい対策を検討する必要があります。

窓の断熱改修や壁紙の張り替えとあわせて、本格的な寒さ対策を考えたくなったら(賃貸の場合はまず貸主・管理会社にご確認のうえ)、無料の現地調査・お見積もりからお気軽にご相談ください。

電話が難しい方はでもご相談いただけます。


この記事の執筆者

執筆者写真

氏名:松田郁幾
実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。

上部へスクロール