
壁紙の汚れを落とそうと調べていると、重曹を勧める情報がたくさん出てきます。家にあるもので済むうえ、環境にもやさしいと書かれていれば、試してみたくなるのは自然なことです。
先に結論をお伝えします。重曹のメーカー3社の製品を確認したところ、壁紙に使うと書かれていたのは、重曹を染み込ませたシートだけでした。自分で作る重曹水のスプレーや重曹ペーストについては、どのメーカーも用途に壁紙を挙げていません。そして壁紙メーカー側のお手入れの案内にも、重曹という言葉は出てきません。
もうひとつ知っておきたいのが、重曹が洗剤であると同時に研磨剤でもあるという点です。これは推測ではなく、重曹のメーカー自身が「研磨」を製品の特長として挙げています。壁紙の表面には型押しの凹凸があり、強くこすると凹凸が潰れることは壁紙メーカーも注意しています。
この記事を読むと、次のことが分かります。
- 重曹のメーカーが壁紙用として挙げている形態と、挙げていない形態
- 重曹が研磨剤でもあるということの意味
- 凹凸のある壁紙で、特に気をつけたい2つの点
- 重曹とクエン酸のどちらを選ぶか、という問いの立て方
- 落ちない汚れを張り替えで考えるときの範囲と費用
読み終えるころには、メーカーの用途表示をもとに手元の重曹を使うかどうかを判断しやすくなり、落ちなかったときの次の一歩も決められるはずです。
ご自宅の壁紙が張り替えの必要な状態なのか、張り替えるとしたらどのくらいかかるのか。気になる点は、まずはお電話でもご相談いただけます。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。
壁紙用として挙げられていたのは、重曹の「シート」だけ

ひとくちに重曹といっても、売られている形はいくつかあります。粉末、スプレー、シート、スポンジ。この違いは容器の違いにすぎないように見えますが、メーカーが想定している使い道は形ごとに分かれています。
メーカーが壁紙に使うと書いているのは、重曹のシート
レックの「激落ちくん」ブランドの重曹製品のうち、壁紙に言及しているのはシートタイプです。同社のサイトには「壁紙・ドアノブまわり」という掃除方法のページがあり、「壁紙の手アカ・皮脂の汚れもふき取ってきれいに」「気になる壁紙の手アカはふき取るだけで明るい印象に!」と書かれています。使う製品として挙げられているのは「GN重曹電解水シート」と「GN重曹超厚ウエットシート」で、手順は「汚れを直接シートでふき取ります」の一文だけです(出典:レック「壁紙・ドアノブまわり」)。
このページには、壁紙の種類による向き不向きの説明も、仕上げに水拭きや乾拭きをするようにという指示も、注意書きもありません。
シート以外の形態には、壁紙の用途表示がない
一方、同じレックのスプレータイプには壁紙が出てきません。「激落ちくん重曹スプレー400mL」の商品説明で挙げられている場所は「食卓の食べこぼし、リビングの手アカ、ヤニ汚れ」で、掃除方法のページとして紐づいているのは「フローリング、ビニール床・テーブル」の1件だけです(出典:レック「激落ちくん重曹スプレー400mL」)。
粉末タイプはさらに用途が限定的で、紐づいている掃除方法は「鍋のコゲ落とし」「レンジフードの天板」の2件です。スポンジタイプも「茶しぶ汚れ」「魚焼きグリル」で、壁紙は出てきません。
他社の製品も見ておきます。カネヨ石鹸の「ナチュラル暮らし 重曹クリーナー」は、用途の欄に「キッチン周り、浴槽、プラスチック用品、スチール用品、ブラインドなどの洗浄、消臭。冷蔵庫内、生ゴミ、トイレ、ペット小屋などの消臭。」と書かれています。壁紙もクロスも、そして壁という言葉自体も出てきません。使用上の注意の一項目めは「用途以外に使わない。」です(出典:カネヨ石鹸「ナチュラル暮らし 重曹クリーナー」)。
シャボン玉石けんの「重曹 680g」も同様で、使い方として挙げられているのは鍋のコゲ落とし、五徳の汚れ、キッチン・ガスレンジの油汚れ、冷蔵庫や玄関・トイレの消臭、生ゴミの消臭です(出典:シャボン玉石けん「重曹 680g」)。
つまり、読者が調べることの多い「重曹水をスプレーして拭く」「重曹ペーストを塗る」という使い方については、メーカーの用途表示から壁紙用かどうかを確認できません。同じ重曹でも、メーカーが壁紙用として挙げているのは、シートの形のものだけです。
壁紙メーカー側の案内にも、重曹は出てこない
ここまでは洗剤側から見た話です。壁紙の側からも確認しておきます。
リリカラ、シンコール、サンゲツの3社が公開しているお手入れのページには、重曹という言葉が出てきません。日常の汚れについて案内されているのは、固く絞った布やスポンジでの水拭きと、落ちにくい場合の薄めた中性洗剤です。汚れや壁紙の種類によっては消毒用アルコールが挙がっていることもあります(出典:リリカラ「ビニル壁紙|お手入れ便利帳」、シンコール「壁紙のお手入れについて」、サンゲツ「壁紙のお手入れ方法」)。
一方で、はっきり書かれていることもあります。リリカラとサンゲツはどちらも「強い洗剤やシンナーなどの有機溶剤は、変色や表面破損の原因になるので使用しないでください」としています。ただし、重曹がこの「強い洗剤」に当たるのかどうかまでは書かれていません。
ここは正確に受け取ってください。壁紙メーカーは「重曹を使ってはいけない」と書いているわけではなく、重曹について何も書いていない、というのが実際のところです。
壁紙メーカーが案内している中性洗剤の使い方や、汚れの種類ごとの洗剤の選び方については、壁紙の掃除に使う洗剤はどれがいい?汚れ別の選び方と使ってはいけない洗剤の見分け方で詳しく解説しています。
重曹は洗剤であると同時に「研磨剤」でもある

重曹を勧める情報の多くは、弱アルカリ性だから酸性の油汚れを中和できる、という説明を根拠にしています。これは間違いではありません。ただ、重曹にはもうひとつの性質があります。
製造元が「研磨して汚れを落とす」と説明している
シャボン玉石けんは、重曹の特長を3つ挙げています。洗浄、研磨、消臭です。このうち研磨については「重曹はやわらかい結晶なのでやさしく研磨して汚れを落とします」と説明されています。洗浄については「重曹は石けんと同じ弱アルカリ性です。台所の油汚れのほとんどは酸性なので、弱アルカリ性の重曹で中和して汚れを落とすことができます」としています(出典:シャボン玉石けん「重曹 680g」)。
レックの粉末タイプも、油汚れやコゲ汚れを「ざらざらした粒の研磨作用」で落とすと説明しています(出典:レック「激落ちくん重曹1kg」)。
つまり、重曹は汚れを化学的に中和するだけの製品ではありません。重曹には、物理的に削って落とす働きもあります。これはメーカー自身が製品の売りとして挙げているものです。
同じように汚れを削って落とす道具については、壁紙にメラミンスポンジ(激落ちくん)は使える?製造元が挙げる「使用に適さない面」と張り替えを検討する5つのサインで詳しく解説しています。
「ペーストにすると角がとれる」という説明の裏返し
シャボン玉石けんの説明には続きがあります。「また少し水に湿らせてペースト状にすると結晶の角がとれて、傷つけずに汚れを取り除くことができます」。
この一文は、裏返すと重要なことを言っています。ペースト状にすれば角がとれる、ということは、粉のままでは角があるということです。同社が使ってはいけないものとして挙げているリストには、アルミ製のもの、漆器、銅製のもの、大理石、上絵付きの食器と並んで「傷つきやすい素材のもの」が入っています。
ビニールクロスの表面が「傷つきやすい素材」に当たるかどうかは、このリストには書かれていません。
メーカー自身が「白く残る」ことを想定している
もうひとつ、カネヨ石鹸の使用方法の欄に、見落とされがちな一行があります。「重曹が白く残る場合は、よく絞った布で拭き取ってください」(出典:カネヨ石鹸「ナチュラル暮らし 重曹クリーナー」)。
メーカー自身が、重曹が白く残ることを想定しているということです。台所のタイルやステンレスであれば、残った白い粉は濡れた布で拭けば済みます。問題は、拭き取りにくい場所に使ったときです。
なお同社のページには「使用できないもの」とは別に「注意するもの」という欄があり、「カーペット、塗装面、ワックス処理の床、人工大理石などは目立たない部分でシミ、変色にならないか試してから使う」と書かれています。壁紙は名指しされていませんが、この欄には床や壁面の仕上げ材がいくつか挙がっています。
凹凸のある壁紙では、粉の残りとこすり傷の両方に気をつける
ここまでの2つの性質、つまり「削る」ことと「白く残る」ことは、凹凸のある壁紙で特に気をつけたい点になります。
谷に粉が残り、山が削られる
日本の住宅で使われているビニールクロスの多くは、表面が平らではありません。細かい型押しによって凹凸がつけられています。この凹凸は、汚れを目立ちにくくしたり、質感を出したりするためのものです。
重曹の粒子をこの面に使うと、気をつけたい点が2つあります。ひとつは、粒子が凹凸の谷に入り込むことです。カネヨ石鹸が言う「白く残る」状態が、谷の部分で起こりえます。凹凸の谷に入った重曹の粉は、布で表面を拭いても届きにくくなります。
もうひとつは、力をかけたときに出っ張った部分に当たることです。布や粒子が触れるのは、谷ではなく山の側になります。
型押しが潰れると、その部分だけ光り方が変わる
壁紙メーカーもこの点には触れています。リリカラは「強く力を入れて拭くと表面の凹凸が潰れたり、キズが付くことがある」と注意しています。シンコールも「強くこすると、汚れが広がったり染み込んだり、表面が破損する場合があります」としています。
型押しの凹凸が潰れると、その部分だけ光の反射が変わります。汚れが落ちたとしても、こすった範囲が四角く浮き上がって見えることがあります。
凹凸のある壁紙では、ここまで見てきた2点をどちらも気にかける必要があります。
重曹とクエン酸、どちらを選ぶかという問題ではない
壁紙の掃除を調べていると、重曹とクエン酸のどちらを使うべきか、という情報にもよく行き当たります。汚れの性質によって使い分ける、という説明です。
重曹メーカー自身も「クエン酸と使い分ける」と書いている
この使い分けの考え方は、重曹のメーカー自身が案内しているものです。シャボン玉石けんは「重曹は弱アルカリ性なので、クエン酸と使い分けることで、より快適にお掃除していただけます」としています(出典:シャボン玉石けん「重曹 680g」)。
酸性の汚れには弱アルカリ性の重曹、アルカリ性の汚れには酸性のクエン酸、という考え方自体は、掃除の世界では一般的なものです。
ただし壁紙メーカーは、どちらも案内していない
問題は、この使い分けが壁紙を対象にしたものではないという点です。
前述のとおり、壁紙メーカー3社のお手入れの案内に重曹は出てきません。そしてクエン酸も出てきません。案内されているのは水拭きと薄めた中性洗剤が基本で、汚れや壁紙の種類によって消毒用アルコールが加わる程度です。酸性・アルカリ性のどちらに寄せるかという話は、そもそも登場しないのです。
どちらを選ぶか、という問いの立て方をしている時点で、壁紙メーカーが案内している範囲の外に出ています。
酸性の側も、用途の外にある
酸性のものについては、より具体的な例があります。トイレの便器用として売られている酸性洗剤は、用途の欄に「便器内の掃除、トイレタイルの掃除」と書かれており、壁紙は入っていません。使用上の注意の一項目めは「用途外に使わない。」です。
これは重曹側と同じ構造です。カネヨ石鹸の重曹クリーナーの使用上の注意も、一項目めは「用途以外に使わない。」でした。液性が酸性であれアルカリ性であれ、製品には想定された用途があります。今回確認した便器用の酸性洗剤と重曹クリーナーでは、いずれも壁紙がそこに含まれていませんでした。
便器用の酸性洗剤については、トイレの壁紙掃除は中性洗剤まで|便器用の酸性洗剤を壁に使ってはいけない理由で詳しく解説しています。
なお、同じアルカリ性のものでも、セスキ炭酸ソーダやアルカリ電解水は別の製品です。用途の表示はメーカーや商品ごとに違うため、手元にあるものを使う前には、その商品のパッケージや公式サイトで用途と使えないものを確認してください。
落ちない汚れは、張り替えの範囲と費用で考える
水拭きと薄めた中性洗剤まで試して落ちなかったとき、次に強いものを探すのか、それとも別の方法を考えるのか。ここが分かれ道になります。
汚れの種類ごとに、対応できる範囲が違う
落ちない汚れといっても、原因によって事情が異なります。同じ「黒ずんでいる」「黄ばんでいる」でも、手で触れる位置についた汚れと、日当たりによる変色と、湿気によるものとでは、落ちやすさも対処の方向も変わります。
汚れの位置と状況から見当をつけると、どこから当たればよいかが分かりやすくなります。
汚れの種類ごとの見分け方や、掃除・張り替えで対応できる範囲を次の記事で解説しています。
- 手で触れる高さの黒ずみ・黄ばみ:壁紙の手垢の落とし方|メーカーの案内は中性洗剤まで、張り替えを検討する4つのサイン
- 窓まわりや日の当たる面の変色:壁紙の日焼けは掃除・漂白で戻る?ヤニとの見分け方と部分張替えで色が合わない理由
- 黒い点状の汚れ、湿気が多い場合:壁紙のカビは張り替えだけで直る?下地の防カビ処置と費用の目安を解説
- タバコによる部屋全体の黄ばみ:壁紙のヤニ・タバコ汚れは掃除で落ちる?張り替えに切り替える4つのサインと見積もりの確認点
張り替えは1面単位が基本になる
掃除では戻らないと判断した場合、張り替えという選択肢が出てきます。
壁紙はロール状のものを上から下へ貼っていくため、汚れた部分だけを四角く切り取って貼り直すと、その継ぎ目と色の差が目立ちます。同じ品番の壁紙が手に入ったとしても、既存の壁紙は日焼けや汚れで色が変わっているため、新しいものを部分的に貼ると、そこだけ浮いて見えます。このため張り替えの範囲は、壁の面で区切った1面単位が基本になります。
複数の箇所が気になっている場合は、まとめて依頼するほうが1箇所あたりの負担は小さくなります。職人の手配や現地への移動には、施工する面積に関係なく一定のコストがかかるためです。
見積もりのときに「掃除では落ちなかった」と伝える
現地調査を依頼するときには、これまでどこまで試したかを伝えておくと話が早くなります。水拭きをしたか、中性洗剤を使ったか、それで落ちたのか落ちなかったのか。
すでに何かを使ってこすってしまった場合は、そのことも伝えてください。表面の状態が変わっていると、張り替えるときの下地の扱いに関係することがあります。隠す必要はありません。
そのうえで、張り替えるとしたらどの範囲になるのか、いくらくらいかかるのかを聞いてみてください。張り替えるかどうかの判断は、その金額を見てからでも遅くありません。
まとめ
重曹のメーカー3社を確認したかぎり、壁紙に使うと書かれていたのは、重曹を染み込ませたシートだけでした。レックは「壁紙の手アカ・皮脂の汚れもふき取ってきれいに」として2種類のシートを挙げていますが、同じブランドのスプレーや粉末には壁紙が出てきません。カネヨ石鹸とシャボン玉石けんの製品も、用途に壁紙を挙げていません。読者が調べることの多い重曹水のスプレーや重曹ペーストについては、メーカーの表示から壁紙用かどうかを確認できない、ということになります。
壁紙メーカー側の案内にも、重曹は出てきません。リリカラ、シンコール、サンゲツの3社が日常の汚れについて案内しているのは、固く絞った布での水拭きと、落ちにくい場合の薄めた中性洗剤です(汚れや壁紙の種類によっては消毒用アルコールも)。ここも正確に受け取ってください。使ってはいけないと書かれているのではなく、書かれていないというだけです。
知っておきたいのは、重曹が洗剤であると同時に研磨剤でもあるということです。シャボン玉石けんは特長のひとつとして「研磨」を挙げ、「やわらかい結晶なのでやさしく研磨して汚れを落とします」としています。「ペースト状にすると結晶の角がとれて」という説明は、粉のままでは角があるということでもあります。カネヨ石鹸は「重曹が白く残る場合は、よく絞った布で拭き取ってください」と書いており、残ることも想定されています。
削ることと白く残ること。この2つは、型押しの凹凸がある壁紙で特に気をつけたい点です。谷に入った粉は拭き取りにくく、布や重曹の粒子は、谷よりも出っ張った山の側に触れやすくなります。凹凸が潰れれば、その部分だけ光の反射が変わります。
重曹とクエン酸のどちらを使うか、という問いについても同じことがいえます。使い分けの考え方は重曹メーカー自身が案内しているものですが、壁紙メーカーはそのどちらも案内していません。液性を選ぶ以前に、重曹もクエン酸も壁紙メーカーのお手入れ案内には含まれていません。
まずは水拭き、それで落ちなければ薄めた中性洗剤まで。ここまでで落ちなかった汚れは、別のものに持ち替えても落ちるとは限らず、強くこすると壁紙の表面を傷める場合があります。そこまで試したら、張り替えるとどの範囲になるのか、いくらかかるのかを確かめてみてください。金額が分かれば、この先どうするかを決めやすくなります。
張り替えが必要な状態なのか、まだ様子を見てよいのか。壁の状態を見たうえでのご案内は無料です。強いものを試してしまう前に、そのままの状態でお気軽にご相談ください。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。 氏名:松田郁幾この記事の執筆者

実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。



