
和室の襖が古びてきて、「いっそ壁紙(クロス)を貼ってしまえないだろうか」と考えたことはありませんか。結論から言うと、襖に壁紙を貼ることはできます。ただし、襖だけをきれいにしたいのであれば、表具店や畳屋に襖紙の張り替えを頼んだほうが安く済むことがほとんどです。襖紙の張り替えは普及品なら1枚5,000円前後が目安なのに対し、壁紙の張り替え業者に頼むと、襖1枚でも最低料金として4万〜6万円程度がかかるためです。
それでも壁紙を選ぶ意味があるのは、壁の張り替えと一緒に、和室の雰囲気ごと変えたい場合です。壁と襖を同じクロスで揃えれば、和室の印象は襖紙を替えるだけの場合とはまったく違うものになります。壁の工事で最低料金を超えていれば、襖だけを頼むときのような割高感も出ません。
ただ、どの襖にも同じように貼れるわけではありません。芯に合板が入った戸襖なら襖紙の面にそのまま貼れますが、押すとポコポコと沈む襖は、下地の紙が破れていないかどうかで話が変わります。そして意外と知られていないのが、貼ったあとの話です。襖の下地紙の上に直接クロスを貼った場合、その下地紙が剥がれてしまうと、クロスごと一緒に剥がれてきます。
この記事を読むと、次のことが分かります。
- 襖に壁紙を貼れる条件と、自宅の襖のタイプの見分け方
- 下地の紙が破れていた場合に、どんな工程が必要になるか
- 貼ったあとに起きること(下地紙とクロスの関係)
- 襖紙の張り替えと壁紙のどちらが安いか
読み終えるころには、自宅の襖をどちらの方法で直すか、どこに相談すればよいかを自分で判断できるようになっているはずです。
自宅の襖にクロスを貼れるかどうかは、下地の状態を見ないと判断できません。和室の壁紙張り替えとあわせて検討されている方は、お電話でご相談いただければ、現地調査のときに襖の状態もまとめて確認できます。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。
襖に壁紙を貼ること自体はできる

まず前提として、襖に壁紙を貼るのは特殊な工事ではありません。実際に、和室の壁紙を張り替える工事にあわせて襖にもクロスを貼る、という依頼は珍しくありませんし、施工そのものは壁に貼るのと大きく変わりません。
ただし、「どの襖でも同じように貼れる」わけではない点は先に押さえておきたいところです。襖は見た目こそ似ていますが、中の構造が種類によってまったく違います。壁紙を貼れるかどうかは、この中の構造、つまり下地が壁紙を支えられるかどうかで決まります。
戸襖は、襖紙が張ってある面ならそのまま貼れる
戸襖(とぶすま)は、芯に合板やベニヤが入っている襖です。和室と洋室の間仕切りによく使われていて、片面が和室側の襖紙、もう片面が洋室側のクロスや化粧板、という組み合わせになっていることが多いタイプです。
このうち襖紙が張ってある面であれば、壁紙を貼るのに支障はありません。芯が板なので面がしっかりしており、下地として十分な強度があります。壁に貼るのと同じ要領で施工できるので、仕上がりも安定します。
一方、洋室側で木目調の化粧板がそのまま出ている面は、少し事情が変わります。化粧板の表面は水分を吸わないため、そのまま壁紙を貼っても、のりが本来の接着力を発揮できません。この面に貼る場合は、シーラー(下地処理剤)を塗ってから施工することになります。同じ理由から下地処理が必要になる壁については、プリント合板の壁紙張り替えは石膏ボードと何が違う?追加費用数千円〜数万円と業者の見分け方を解説で詳しく解説しています。
押すとポコポコする襖は、下地の状態次第
一方、手のひらで押したときにポコポコと沈む襖があります。木の骨組みに紙を何枚も重ね張りして作られた本襖(ほんぶすま)や、芯にダンボールや発泡スチロールを使った軽い襖がこれにあたります。
こうした襖でも壁紙を貼ること自体は可能です。実際の現場では、本襖かダンボール襖かといった種類の区別よりも、「今の下地が壁紙を支えられる状態かどうか」を見て判断しています。表面の紙がしっかりしていれば、その上から壁紙を貼ることができます。逆に、下地が傷んでいる場合は、そのままでは貼れません。この判断については後ほど詳しく説明します。
縁は外さず、手前で切って収める
仕上がりについても触れておきます。襖の周囲には木の縁(ふち)が回っていますが、壁紙はこの縁の手前でカットして収めます。
襖紙を張り替える場合は、縁を外して紙を巻き込む職人もいますが、壁紙の場合は縁を残したまま、その内側に貼るのが基本です。そのため、仕上がりは「木の縁で囲われた中に、壁と同じクロスが張られている」という見え方になります。縁の木の色がそのまま残るので、クロスの色を選ぶときは、この縁の色との組み合わせも見ておくとイメージがずれません。
自宅の襖がどちらかは、押してみれば見当がつく

自宅の襖がどのタイプなのかは、専門的な知識がなくてもおおよその見当をつけられます。業者に相談する前に自分で見ておくと、話が早く進みます。
押して沈むか、しっかりしているか
いちばん分かりやすいのは、襖の中央あたりを手のひらでそっと押してみることです。
指先に抵抗がなく、紙がたわんでポコポコと沈む感触があれば、木の骨組みか軽い芯材でできた襖と考えられます。板を押しているようにしっかりしていて、まったく沈まなければ戸襖の可能性が高いといえます。持ち上げたときの重さも手がかりになります。板が入っている戸襖はずっしりと重く、骨組みの襖や軽い芯材の襖は軽く感じられます。
和室側と洋室側で仕上げが違うこともある
もうひとつの手がかりが、襖の両面を見比べることです。
和室と洋室のあいだに入っている襖は、和室側が襖紙、洋室側がクロスや木目調の板、というように仕上げが表裏で違っていることがあります。こうなっていれば戸襖の可能性が高いといえます。両面とも襖紙が張ってあり、どちらから見ても和室の建具に見えるものは、骨組みの襖である可能性が高くなります。
なお、押入れの襖や天袋(押入れの上の小さな戸)も、考え方は同じです。押してみて沈むかどうかが手がかりになります。
下地の紙が破れていると、そのままでは貼れない
押すとポコポコする襖の場合、壁紙を貼れるかどうかを最終的に決めるのが、今張ってある紙の状態です。
襖の表面は、骨組みの上に下地となる紙が張られ、その上に仕上げの襖紙が張られる、という重ね構造になっています。壁紙はこの上に貼ることになるので、土台になる紙が破れていたり、大きくめくれていたりすると、その上には貼れません。破れた部分に壁紙を貼っても、そこだけ浮いたりへこんだりして、仕上がりが落ち着かないためです。
下地紙を貼り直すか、ベニヤを張るか
下地が傷んでいた場合の対応は、大きく2つに分かれます。
ひとつは、傷んだ部分に下地紙を張り直して、面を整えてから壁紙を貼る方法です。もうひとつは、襖の上からベニヤを張って、板の面を作ってしまう方法です。ベニヤを張れば戸襖に近い状態になるので、紙の下地に直接貼る場合より、安定した下地を作れます。
どちらの方法をとるにしても、壁紙を貼る前にもう一工程が必要になるため、そのぶん費用と作業時間が増えます。現地で襖の状態を見てからでないと、どちらの方法になるか、費用がいくら増えるかは判断できません。見積もりを取るときは、襖の状態も一緒に見てもらうようにしてください。
貼ったあと、下地紙が剥がれるとクロスごと剥がれる
ここが、襖に壁紙を貼るときにいちばん知っておいてほしい点です。
下地紙の上に直接クロスを貼った場合、壁紙は襖の下地紙に支えられている状態になります。クロスと下地紙はのりでくっついていますが、その下地紙が骨組みから浮いたり剥がれたりすれば、クロスも一緒に剥がれてきます。土台になっている紙より強くくっつくことはできない、ということです。
これは、ていねいに施工しても起こりうることです。襖は開け閉めのたびに動き、湿度によって紙が伸び縮みします。長く使ううちに下地紙が部分的に浮いてくることは十分にあり得ます。
なお、前の章で触れたベニヤを張って板の面を作る方法をとった場合は、クロスが紙ではなく板に支えられることになるため、この心配は小さくなります。費用と手間はかかりますが、下地紙の剥がれによる浮きを抑えたい場合は、そのぶんの見返りがある方法だといえます。
壁に貼るのとは条件が違う
壁紙を石膏ボードの壁に貼る場合、クロスは下地のボードに直接くっつきます。ボード自体が動いたり剥がれたりすることは、まずありません。
襖の場合はその土台が紙です。クロスの接着自体がうまくいっていても、その下の紙が持たなければ、上のクロスも一緒に持っていかれます。同じ「壁紙を貼る」という作業でも、仕上がりの寿命を決めている条件がまったく違う、という点は理解しておいてください。
市販のふすま用シールでも事情は同じ
ホームセンターや家具店では、襖に貼るためのシールタイプの内装材が売られています。裏がシールになっていて、自分で貼れるようになっているものです。こうした商品を使う場合も、下地に関する事情は変わりません。
シールであっても、貼る相手は襖の下地紙です。下地が傷んでいればその上に貼っても浮いてきますし、下地紙が剥がれればシートごと剥がれます。手軽に見た目を変えられる選択肢ではありますが、「下地が持つかどうか」という前提は、業者に頼む場合と同じだと考えておくとよいでしょう。
襖だけなら、襖紙の張り替えのほうが安い
ここまで施工の話をしてきましたが、費用の面から見ると、また別の判断が出てきます。襖を新しくしたいというだけなら、壁紙を貼るより襖紙を張り替えたほうが、たいていは安く済みます。
襖紙の張り替えは普及品なら1枚5,000円前後
襖紙の張り替えは、表具店や畳屋が専門にしている仕事です。襖の張り替えを日常的に扱っているため作業に無駄がなく、普及品の襖紙であれば1枚5,000円前後を目安にしている店が多く見られます。紙のグレードを上げる場合や、片面だけでなく両面を張り替える場合は、そのぶん金額が上がります。
襖紙にも無地のものから和柄まで種類があり、白っぽい無地の襖紙を選べば、和室の印象はかなり明るくなります。「今より明るくしたい」「古びた感じを消したい」という程度の目的であれば、襖紙の張り替えで足りることは多いはずです。
壁紙業者に頼むと最低料金がかかる
一方、壁紙の張り替え業者に襖だけを頼むと、話が変わります。
壁紙の張り替えには、職人の手配や現場への移動、段取りなど、施工する面積には表れないコストが必ずかかります。そのため多くの業者が最低金額を4万〜6万円程度に設定しており、襖1枚だけを頼んでも、この金額がかかることになります。襖に使う材料そのものは多くありませんが、請求額は面積では決まらないためです。
同じ「襖をきれいにする」という目的なら、普及品なら1枚5,000円前後で頼める襖紙の張り替えと比べて割高になってしまいます。襖だけが気になっているのであれば、まず表具店や畳屋を探すことをおすすめします。なお、この「面積が小さくても最低料金がかかる」という仕組みは襖に限った話ではなく、クローゼットのような狭い場所を単独で頼む場合にも同じことが起きます。詳しくはクローゼットのクロス(壁紙)張り替え費用|居室とまとめると差額2万円前後、単独だと割高になる仕組みで解説しています。
壁の張り替えと一緒なら話が変わる
逆に、壁紙を貼る意味が出てくるのが、和室の壁もあわせて張り替える場合です。
壁の工事だけですでに最低料金を超えている場合は、襖を加えても、そのぶんが丸ごと最低料金に引き上げられることはありません。追加されるのは襖の分の材料費と手間だけです。そして何より、壁と襖が同じクロスで揃うことで、和室全体の見え方が変わります。襖だけが和柄のまま残っている状態と、壁から襖まで同じ色で連続している状態とでは、部屋の印象はかなり違ってきます。
和室を洋室に近い雰囲気に変えたい、という目的であれば、この選び方には十分な意味があります。なお、和室の壁が砂壁のような塗り壁の場合は、壁のほうにも下地処理が必要になり、対応方法によって費用が変わります。詳しくは砂壁の壁紙張り替えはそのまま貼れる?4つの対応方法の費用とリスク、追加料金が出やすい条件を解説をご覧ください。壁紙の張り替えを検討しているなら、襖の施工可否もあわせて相談できます。
まとめ
襖に壁紙を貼ることはできます。芯に合板が入った戸襖なら、襖紙が張ってある面にそのまま貼れますし、押すとポコポコする襖でも、下地の紙が傷んでいなければ施工できます。下地が破れている場合は、下地紙を張り直すかベニヤを張るかの一工程が加わります。
ただし、貼ったあとのことも知っておいてください。下地紙の上に直接クロスを貼った場合、その紙が剥がれればクロスも一緒に剥がれます。ていねいに施工しても起こりうる、襖という建具の構造による違いです。下地紙の剥がれによる浮きを抑えたい場合は、ベニヤを張って板の面を作ってから貼る方法もあります。
そのうえで費用を比べると、襖だけを新しくしたいなら、表具店や畳屋の襖紙張り替え(普及品で1枚5,000円前後)のほうが、壁紙業者に頼む(最低料金4万〜6万円程度)より安く済みます。壁紙を選ぶ意味があるのは、和室の壁もあわせて張り替えて、部屋全体の雰囲気を変えたい場合です。
まずは自宅の襖を押してみて、どちらのタイプか見当をつけてみてください。そのうえで、襖だけが気になっているなら表具店や畳屋へ、壁の張り替えもあわせて考えているなら壁紙の業者へ相談してみてください。見積もりを依頼するときに「襖も一緒に見てほしい」と伝えておけば、下地の状態も含めてその場で判断してもらえますし、襖を含めた場合と含めない場合の金額も比べられます。
襖だけを新しくしたい場合は、まず表具店や畳屋を探してみてください。和室の壁もあわせて張り替えたいという場合は、襖の下地の状態も含めて、無料の現地調査でまとめてご確認いただけます。
電話が難しい方はメールでもご相談いただけます。 氏名:松田郁幾この記事の執筆者

実績:壁紙張り替えを中心に、これまで多くのお客様・職人と関わってきました。
この記事について:現場で見聞きした実例をもとに、誇張せず、実践的な視点で解説しています。



